• 芸術文化日録(AtoCジャーナル)

戦後80年、民主主義、台湾有事、地震――2025元日の各紙

2025年01月01日

 2025年元日の新聞4紙をチェック。
 1面の特集は
*北海道新聞《戦禍とアイヌ民族〜記者がたどる戦争 特別編》①で、これまで詳しく触れられることがなかったアイヌ民族の従軍と差別を正面に据えた。一般社会でのアイヌ民族差別と、軍内部での「平等」の間に潜在している歴史の痕跡を追う。続きは社会面に。ちなみに新年号の第4部(8頁)を「戦後80年」特集に充てた。
*毎日新聞《デモクラシーズ〜これまで これから 戦後80年》①は、戦後80年企画の「これまで これから」の一環で民主主義を考える。オンラインプラットフォーム「Liqlid(リクリッド)」で自治体に直接意見を述べるシステムを開発する企業を紹介するとともに、台湾の初代デジタル発展部長を務めたオードリー・タンのインタビューを3面に掲載。
 読売と朝日は1面特集がない。
*読売新聞は「中国 宮古海峡で封鎖演習 台湾有事想定か 政府警戒」の独自ニュース。まるで防衛費増大を後押しするかのように危機をあおる内容だ。2面には元日恒例の「読売信条」。この信条を、読売は終戦翌年の1946年に制定した。昨年12月の渡邊恒雄死去を受けた産経新聞の記事によれば、旧信条には「われらは左右両翼の独裁思想に対して敢然として戦う」との文言があった。ところが1959年1月1日の読売社説で「両翼の偏向思想が、マスコミを侵す危険がないとはいえない。特に警戒すべきは、左翼偏向である。今日の左翼偏向派は、決して自らを『左翼』と称することはしない。平和とか軍縮とか反核といった大衆の耳に快くひびく言葉の中に、それを隠そうとする」と打ち出したのを機に、読売は反左翼(そして反朝日)の姿勢を明確に打ち出す。その急先鋒だったのがナベツネであったと産経記事は解説する。そこからさらに40年。2000年に信条は改訂され、上記の文言も消えた。
*朝日新聞は能登半島地震の「きょう1年」をトップに置き、「復興を目指す被災地から、縮小する日本の将来を考える」とした。大晦日の社会面に「上」を掲載した「あの日から」は、年をまたいで元日に「下」。
 能登半島地震1年は、各紙ともまとめ記事がある。毎日も年またぎで「半歩そっと 能登地震1年」の2回目。読売は特別号外を出し、オンラインで読めるようにした。
 その他の記事では、北海道面で読売が「知床 世界自然遺産20年 序章」の連載、毎日が「なが〜く続く 老舗物語」の連載を始めている。朝日は1面の「折々のことば」(鷲田清一)が谷川俊太郎の詩集『うつむく少年』から、「平和/それは花ではなく/花を育てる土/平和/それは歌ではなく/生きた唇」の一節を引いた。

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