北海道芸術文化アーカイヴセンター | Hokkaido Arts and Culture Archives Center

AtoCジャーナル

  • 『少年と犬』映画に

    2025年03月21日

     道新カルチャー面。浦河町出身で馳星周の直木賞受賞作『少年と犬』が映画になり、公開中。瀬々(ぜぜ)敬久監督は「今は一度失敗すると交流サイト(SNS)などでたたかれ、レッテルを貼られてなかなか再起できない。そんな時代の若い人たちに希望を持ってもらいたかった」「別れがあっても、壊れたからそれでおしまいではない。そんな出会いを犬の多聞が連れてきます」と話す。札幌出身の円城塔が第76回読売文学賞を受賞し、贈賞式が開かれた。受賞作は『コード・ブッダ』。研究・翻訳賞はハン・ガンの代表作『別れを告げない』を訳した斎藤真理子。
     47歳で本格的な登山を始め世界7大最高峰登頂を日本人女性で3番目に達成、68歳にして札幌大谷大学油彩科に入学して道展や全道展で活躍。札幌在住の久末真紀子の個展「青の記憶」が大丸藤井セントラルで25日から始まる。さっぽろ10区新聞。
     朝日新聞文化面では、先に決着したJASRACと音楽教室の間の著作権料をめぐる問題を解説している。講師による演奏だけが著作権料の対象で、JASRACは生徒1人当たり750円(中学生以下は100円)の著作権料を徴収する。「痛み分け」と記事は書くが、音楽教室は学校教育とは違うという判断は今後にどう影響するのだろう。

  • hitaruの『ドン・ジョヴァンニ』総括

    2025年03月20日

     道新カルチャー面は、hitaru発のオペラ『ドン・ジョヴァンニ』に大きく紙面を割いた。3月7、9日の2日公演で2,963人の入場があった。事業費7,700万円に対して入場料収入は3,300万円。階段状の舞台やプロジェクトマッピングが注目されるも、映像にトラブルもあったという。八木幸三の《音楽会》では「地獄落ち」の場面にもう一工夫を求めている。亡霊となった騎士団長が、生身の人間と変わらぬ姿で登場した演出(粟國淳)のことを指すのだろう。同感。札響のコンサートマスター田島高宏が、22日の苫小牧公演でモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を演奏する。
     札幌歌人会は「北の短歌パネル展」をかでる2・7で開催。歌人会は1954年12月に、山名康郎、中山周三らの呼びかけで設立された。道新札幌圏版。
     札幌版には、市がまとめた中島公園の「未来への魅力継承プラン」の記事が載っている。目指すべき5つの方向性として掲げた言葉が、あまりに陳腐で驚く。「四季折々のみどりが彩るオアシス空間」「伝統と風格にふさわしいしつらえやおもてなし」「市民や観光客が集う交流・にぎわい空間」「あふれる魅力を効果的に伝える情報発信」「新しい時代の管理運営」。今後取り組むのは、園内樹木の整理、休憩場所の整備やユニバーサルトイレの導入、園内各施設・公園周辺の事業者との連携体制の構築など、と書いてある。これのどこが新しいのかと札幌市のHPを開くと、確かにさほど目新しくはないが、もう少し具体的な内容が載っている。伝え方にも工夫が必要じゃないか。

  • 河﨑秋子が語る山川方夫『夏の葬列』

    2025年03月18日

     道新カルチャー面の不定期連載《戦後80年 わたしがつなぐ物語》は、終戦前日の苦い記憶をモチーフにした山川方夫『夏の葬列』を河﨑秋子が紹介した。各地で戦争・紛争が起きている状況について「20世紀に2回も世界大戦をやった上に今世紀にまた戦争をやるのは、国家の単位で言えば政治の敗北、個人として戦争を支持するのは人間としての品性の敗北。個人としては戦争は良くないという思いを持ち続けることが大事だ」と話す。朝倉かすみの《わたしがちゃんこかったころ》は、老いと体感時間のお話。
     第28回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)の岡本敏子賞に、旭川在住の斎藤玄輔のインスタレーション「語り合う相手としての自然」が選ばれた。東京電力福島第1原発の原子炉建屋外壁の模様に着想を得たという。《音楽会》はクリストフ・バラーティのヴァイオリンリサイタル。評は三浦洋。
     道新学芸面、文化面と受け継がれ、60年以上続いた研究者のコラム《魚眼図》は3月末で終了する。
     新聞三社連合が配信し、北海道新聞などが連載した門井慶喜の小説『札幌誕生』の第1章を抜粋し、道内のセコマ限定で発売する試みが、セコマと河出書房新社の取り組みとして紹介されている。書店よりもきめ細かいセコマの店舗網を使う発想は、なるほどと思う。
     朝日新聞の《月刊沖縄タイムス》に、沖縄タイムス社が32年前に休刊した「新沖縄文学」を96号として発行したとの記事が転載されている。1966年から93年まで発行されていた。新沖縄文学賞の50回を記念して、戦後80年の節目に特別に復刊した。北海道の「北方文芸」に相当する出版物だろう。

  • 北大路公子が新刊『キミコのよろよろ養生記』

    2025年03月15日

     サタデーどうしんの文化・エンタメ面。札幌の作家・北大路公子の新刊エッセイ『キミコのよろよろ養生記』(集英社)を大きく取り上げた。乳がん治療を経験した作家が、化学療法の副作用やリハビリ体験などをゆるゆると綴る。「闘病記と言っても患者ごとに病状も治療も違うので、私がエッセーで切り込むのは違うから、と。治療が終わった後、自分の体力や気力が回復する過程なら書けると思った」。キミコ節が変わらずうれしい。《展覧会》は北翔大学札幌円山キャンパスで開催されている「Work in Progress 12 Beyond Boundaries 境界を超えて」。評・梁井朗。山田航の《札幌零景》は白石停車場通。

  • 歴史的建造物の見直しに貢献した越野武を偲ぶ

    2025年03月14日

     道新札幌圏版。北海道の建築史研究の第一人者だった北大名誉教授・越野武(2024年8月に87歳で没)を追悼する講演会「同時代建築追想〜越野武先生を偲んで」が2日に札幌市資料館で開かれた。北海道建築研究会(山下和良代表)が主催。越野が注目した建築物として、モダニズム建築として知られる札幌逓信局や、坂倉準三の札幌パークホテル(ホテル三愛)などを紹介した。小樽の旧小熊邸の移築保存など、歴史的建築物の価値を見直す活動にも取り組んだ。
     同じ紙面に倍賞千恵子を招いて北海道を舞台とする出演映画について聞くイベントが5月10日に開かれる。映画鑑賞団体や映画関連会社による実行委が主催。
     カルチャー面は、大空町出身の講談師・神田山陽が企画する朗読劇『世界の子どもたちはナニで笑っているんだ? パレスチナ編』を網走と札幌で開く。網走市内の子どもたちが出演する。《ステージ》は北八劇場の主催公演、別役実の不条理劇。アガサ・クリスティ作品が著作権問題で中止に追い込まれたことによる代替上演。記事は、中止に至った経緯の検証も道内演劇の発展に不可欠と結んでいる。
     さっぽろ10区新聞には、ワーカーズコレクティブ(労働者協同組合)で運営するシェア型書店「ぷらっとBOOK」の記事も。南4東3。貸し棚数は129。

  • 竹森巧『桜の下で君と』

    2025年03月13日

     お笑いコンビ・アップダウンの竹森巧(森町出身)が、道内外で取り組んできた特攻をテーマとする音楽劇について書いた『桜の下で君と』(東京ニュース通信社)を刊行した。音楽劇制作のきっかけを紹介し、台本の抜粋も載せた。原爆の記憶を継承する漫才「希望の鐘」の公演も続けているという。道新社会面。
     ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者の目線を追って描いたアート「眼のドローイング、眼のペインティング」が、500m美術館で展示されている。第12回500m美術館賞のグランプリ受賞作。幼少期を札幌で過ごした患者で、マウスペインターでもあるKanoCo(赤川由加)の目の動きを、茨城県在住の美術家・大崎晴也が透明板に描く手法で制作した。こちらは札幌版。
     道新カルチャー面は、国立アイヌ民族博物館館長の佐々木史郎の寄稿。蝦夷錦のサンタン交易(だいぶ前に取材したことがある。山丹交易と書いていた)に関するウポポイの展示にまつわるお話。アイヌ民族にとっては、生活に資するものであると同時に、和人の商人に牛耳られる結果にもなった。これに関連するわけではないものの、北海道や東北のアイヌ民族と和人の争いをモチーフにした大藪春彦賞受賞作『円かなる大地』(武川佑、講談社)の贈呈式が開かれた。両民族の事情を冷静に描かれているとの評。19日の札響hitaruシリーズはチェロの宮田大がソリスト、《奏で人札響》は宮田と東京チェロアンサンブルでも活動する横山桂を紹介している。こちらも組み合わせの妙。《ステージ》はトランペットの松井秀太郎を取り上げた。

  • 北海道戯曲賞決まる

    2025年03月12日

     11回目となる北海道戯曲賞(希望の大地の戯曲賞)は、東京在住の劇作家・私道(しどう)かぴの「かいころく―工女編―」に決まった。道内外から107作が集まった。

  • 東日本大震災から14年

    2025年03月11日

     2011年3月11日の東日本大震災から14年。朝日新聞はトップに記事を置き、行方不明者2520人には含まれないインドネシアから出稼ぎに来ていた若者4人に注目した記事を1、2面で展開した。同じ1面には大船渡の山林火災「鎮圧」の報も。3面「ひと」欄では、津波の犠牲になった妹を持つ若手映画作家を紹介した。
     北海道新聞は1面では「避難なお2万8000人」とデータ主体にとどめ、3面の特集で、東北太平洋側の自治体の津波対策について課題をまとめているが、比較的あっさり。
     朝日新聞惜別欄では、2024年10月14日に亡くなった札幌出身の児童文学作家・中川李枝子を悼んでいる。福音館書店で『ぐりとぐら』を担当した編集者から、いくつかのエピソードを引き出している。

  • 佐川光晴、鳴海章の新刊

    2025年03月09日

     道新読書ナビ面。北大卒で、有島武郎青少年文芸賞の選考委員も務める佐川光晴の新刊『見えなくても王手』(実業之日本社)は、盲学校小学部に通う主人公が将棋に目覚めるお話。《ほっかいどう》では帯広在住の鳴海章による『鬼哭 帝銀事件異説』(小学館)を紹介している。

  • 国松明日香死去、77歳

    2025年03月08日

     札幌在住の彫刻家・国松明日香が6日、77歳で死去した。肺炎。所用で行けなかったが、8日の一般参列にはその人脈の広さを感じさせる多くの弔問客があったそうだ。故人の作品は道内あちこちに残されたが、CINGの一員として手がけた石山緑地のランドアートの業績は大きいと個人的に思う。ご冥福を。
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     サタデーどうしんには、札幌出身の画家・近藤亜樹が水戸芸術館現代美術ギャラリーで開いている個展「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」を取り上げている。札幌大谷高から東北芸術工科大に進んだ。現在は山形県を拠点に活動している。文化・エンタメ面は、GACKTの札幌公演、Juice=Juiceの北海道出身メンバーの記事など。

  • 『泥流地帯』映画化決定

    2025年03月07日

     道新社会面。三浦綾子の小説『泥流地帯』の映画化が決定したと、上富良野町が発表した。柴山健次監督。スーパーバイザーに滝田洋二郎監督。大正泥流発生から100年となる2026年の公開を目指す。これまで2回、映像製作会社と協定を結んだが、解消しており、三度目の正直となる。道新社会面。
     老朽化で2月下旬に閉店した札幌のカフェLakuraで行われていた映画の撮影が終了した。30分ほどの短編になる。店主役はカフェ常連でもある斎藤歩。もとは1919(大正8)年築の質蔵の記録を映像に残そうという試み。鹿追町に道内発の映画を製作する会社を設立した藤嘉行が監督を務めた。舞踊の山海塾が31年ぶりに札幌公演。2022年の公演はコロナ禍で中止になった。道新カルチャー面。

  • 桜木紫乃『人生劇場』

    2025年03月06日

     道新カルチャー面。作家の桜木紫乃が長編小説『人生劇場』(徳間書店)を刊行した。父親がモデル。小説を書くことは「邦楽も何も分からない砂地を歩いて井戸を掘るようなもの」「小説を書くことが好き。歩いては掘り、歩いては掘りを続けていきたい」。佐々木譲の《現場に立つ 時空を超えて》は、オーバーツーリズム問題。スペイン北部のバスク地方で訪ねたレストランの「ヘミングウェイは来たことがありません」のエピソードがふるっていている。小田島本有評の《道内文学 創作・評論》は、喫茶店をモチーフにした小説ほか。札幌出身の映画監督近藤亮太による『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の話題。第2回日本ホラー映画大賞を受賞した。

  • 「対位する9つの星座」展

    2025年03月05日

     北海道立近代美術館で開かれている特別展「星の瞬間」に出展している9人の作家が参加するグループ展「対位する9つの星座」が、CAI03ギャラリーで開かれている。6日まで。出展者でCAIオーナーの端聡が企画した。道新札幌圏版。
     朝日新聞北海道面には、北星学園大の非常勤講師らが「札幌地域労組大学非常勤講師ユニオン」を結成したとの記事。北星学園大の非常勤講師は昨年5月で240人、全教員の67%とのこと。
     作家の曽野綾子が2月28日に93歳で死去。

  • 三宅唱、高橋義彦が芸術選奨新人賞

    2025年03月03日

    芸術選奨新人賞に北海道関係の2人が選ばれた。札幌出身の映画監督・三宅唱は『夜明けのすべて』の功績、北海学園大学法学部准教授の高橋義彦が『ウィーン1938年最後の日々』で受賞。道新社会面。
     2012年から札幌の福津京子が続けてきたインタビュー動画のウェブサイト「札幌人図鑑」が出演者2000人を迎えて更新を終了した。道新札幌圏版。

  • 『犬と戦争』の山田あかね監督トーク

    2025年03月02日

     札幌のシアターキノで、ドキュメンタリー映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』の山田あかね監督がトークを行った。3年にわたってポーランドやウクライナを訪ね、戦場に残された犬や死んだ犬の実態を追った。

  • 音楽教室の著作権問題、徴収額が決着

    2025年03月01日

     2017年にJASRACが音楽教室から著作権料を徴収する方針を掲げたことで、事業者側と長く争ってきた問題は、生徒1人あたり年間750円、中学生以下は100円とすることで決着した。裁判自体は2022年に終わり、講師の演奏のみ対象とし、生徒は対象外とすることになっていた。金額で両者が折り合った。2018年度までさかのぼって徴収するというから、音楽教室側の痛みは小さくないだろう。朝日新聞。
    「江戸絵皿の絵解き」をライフワークとしてきたSTVラジオのパーソナリティ河村通夫が、昨年暮れに『北斎漫画を謎解く江戸絵皿事典』を刊行。独自の研究の成果を世に問うている。「北斎時代の「絵手本」で「絵皿」を解く」のシリーズも3月に第3巻「動物・日本人物の巻」を刊行する。《ステージ》は、あしり座の『大黒屋光太夫ロシア漂流記』。いずれもサタデーどうしんの文化・エンタメ面。

  • SIAF2027は再生、再構築、再起動などテーマに

    2025年02月27日

    SIAF紹介のパンフレットと1、2月のイベントを網羅したガイドブック

     道新カルチャー面。札幌国際芸術祭2027は、前回2024のゲストディレクターだった小川秀明が引き続きクリエイティブディレクターを務め、細川麻沙美、漆崇博、丸田知明の三氏がディレクターチームに加わる。再生、再構築、再起動がテーマになる。現在は「みんなでウパシテ!!」と題して、SIAFと連携する冬のアートプログラムを広く紹介している。
     伊藤氏貴の《文芸時評》は、差別や抑圧、鬱憤を溶かしていく「会食」の力について。3月8〜23日に北八劇場で上演予定だった『そして誰もいなくなった』を中止し、別役実の「いかけしごむ」「眠っちゃいけない子守歌」を上演し、芥川龍之介の短編を朗読する。中止は著作権や上演許諾の問題による。3月20日には北海道日本舞踊公演も。

  • 夕張市石炭博物館の模擬坑道、4月に公開再開

    2025年02月26日

     2019年4月の火災で閉鎖中だった夕張市石炭博物館の模擬坑道が、7年ぶりに4月19日から一般公開される。総延長180m、石炭採掘をしていた坑道を見学できる国内唯一の施設で、国の登録有形文化財にもなっている。北海道の主要産業であった炭鉱の歴史をまるごと記録する施設。時間はかかったものの、復旧できて幸いだった。

  • HTBが連続ドラマ『ススキノ・インターン』制作

    2025年02月25日

     ススキノを舞台にした連続ドラマ『ススキノ・インターン〜マーケ学生ユキナの、スナック立て直し記〜』をHTBが制作し、3月22、23、29、30日の深夜に30分番組として放送する。主演は加藤小夏。寂れたスナック「ゆかり」を、マーケティングの知識を活かして課題を解決していくというお話。舞台のスナックはHTB内にセットを作ったというから、つまり創成スクエアの中だ。撮影後は常設のスナックにして、文化人・芸能人が集まる場にしたら面白いだろうなあ(とノンベの独り言)。

  • 朝日新聞《北のお笑い》を考える

    2025年02月23日

     朝日新聞北海道面で、3回連載の大型読み物。《北のお笑い考》は、お笑いコンビのタカ&トシのサクセスストーリーを軸に、「お笑い不毛の地」だった北海道の業界の成長と進化をたどった。上は吉本興業の初代札幌事務所長だった木山幹雄の「タカトシを世に出せた。それだけで北海道に来た意味があったちゅうもんですわ」の言葉から。すでに「水曜どうでしょう」が全国的な人気になっていたのを横目に、UHBと立ち上げたお笑い番組で発掘したタカトシをじっくり育てた。「大泉さんたちの人気は何か。あれは話芸や。北海道だからダメということはない」。タカトシは2001年の「爆笑オンエアバトル」でオンエア権を勝ち取り、東京へ進出する。中はタカトシの背中を見て育ったトム・ブラウンの布川ひろき、下はタカトシ自身にこれまでを語らせた。なぜタカトシが成功したか。木山の読みは、漫才に向き合って新ネタを作り続けたこと、後輩思いで芸人間の人間関係がよかったこと、北海道を大事にしてきたことの三つ。

  • 立川談春「仕掛け続けて、勝ち越して現状維持」

    2025年02月22日

     サタデーどうしんの文化・エンタメ面。父が泊村出身の立川談春を《会いたい聞きたい》で取り上げた。師匠の談志から「落語好きではなく、世の中に向かって落語をやれ」と指導され、「仕掛け続けて、勝ち越してやっと現状維持」と自分の状態を語る。《ステージ》は、札幌出身の人形劇俳優・平常(たいらじょう)の『ロミオとジュリエット』東京公演。

  • ロケーションジャパン大賞授賞式 「コナン」と函館市

    2025年02月21日

     第15回ロケーションジャパン大賞のグランプリに、映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が選ばれ、20日に東京で授賞式が開かれた。全国から聖地巡礼の観光客が訪れている。道内関係の受賞は、大泉洋主演の映画『探偵はBARにいる3』以来。兄弟受賞。ロケツーリズムアワードは、北海道中央バスが企業大賞に。小樽天狗山ロープウエイがネットフリックスのドラマ『First Love 初恋』のロケ地になったことから。

  • 桜木紫乃が李恢成を悼む

    2025年02月20日

     道新カルチャー面。桜木紫乃の《居酒屋さくらぎ》は、亡くなった李恢成の追悼。北海道新聞文学賞でのドキドキするエピソードを交えて語り、こう結ぶ。「文士の遺したものは、魂ひとつ」
    《音楽会》の第666回札響定期は、広上淳一指揮の武満徹『乱』組曲、伊福部昭『リトミカ・オスティナータ』、シベリウスの交響曲第2番。評者の三浦洋が述べるとおり、シベリウスは格別の演奏だった。個人的には広上特有のリズム感が、北欧の風土との関連が強調されがちなこの曲から、美しい「調べ」を引き出したように思えた。
     ほかに《AIが描くアートの未来》の中。芥川賞受賞の鈴木結生のエッセイ。

  • 「浦河フレンド森のようちえん」がウッドデザイン賞最高賞

    2025年02月19日

     道新社会面に、浦河の認定こども園「浦河フレンド森のようちえん」が、ウッドデザイン賞2024で最優秀賞を受賞したとの記事。外観写真が目を引くが、残念ながら設計者の名前がない。調べてみると札幌の南区北丿沢にある照井康穂建築設計事務所の仕事である。掲載写真は道提供の外観写真だけだが、事務所のHPには、内部構造の写真も満載。道産のカラマツ材を中心に組み上げられた美しい構造体はほれぼれする。いつか行って眺めたいと思わせる。

  • 《AIが描くアートの未来》

    2025年02月18日

    道新カルチャー面は《AIが描くアートの未来》の3回連載がスタート(古川有子)。生成AIを使って作成したイラストなどアート作品の価値を論じる。結論は出そうもないが、この時点での問題提起をさらしておくことは大事。直木賞に決まった伊与原新のエッセイ、PMF修了生が北星学園女子高を訪ねての音楽講座、札響定期にバーメルトが来演することを伝える記事など。

  • 「木原直彦と北海道の文学」展

    2025年02月15日

     北海道立文学館の初代館長で、北海道文学史の研究者である木原直彦の業績を取り上げた特別展「木原直彦と北海道の文学」が、開館30周年を迎える道立文学館で開かれている。木原は、1966年の北海道文学展をきっかけに運動として盛り上がった道立文学館構想の中心にいた。95歳でなお、しっかりとインタビューに答えている。いまや北海道文学史を語る第一人者と言ってよい。北海道立文学館を運営するのが財団法人北海道文学館(創立当初は任意団体)であることが十分に説明されていないので、一般の人には関係がわかりにくいかもしれない。《展覧会》は「北の美大展(仮)」を取り上げた。評・梁井朗。山田航の《札幌零景》には「パラレルワールド、異界都市としての札幌を描いた創作です」という注釈。前からあったっけ? ここまでサタデーどうしんの文化・エンタメ面。
     社会面には、1919(大正8)年築の質蔵を改装した予約制カフェLakura(南4西9)が、23日に閉店し、解体される。このカフェの常連客らが協力して、短編映画が製作されることになったとの記事。常連客の俳優・斎藤歩や磯貝圭子、映画人の藤嘉行、瀬川龍ら。店主はチェロの土田英順と演奏活動をともにしている鳥居はゆき。

  • 森崎博之が語る『はだしのゲン』

    2025年02月13日

     道新カルチャー面では《戦後80年 わたしがつなぐ物語》の随時連載が始まった。初回は俳優の森崎博之が中沢啓治『はだしのゲン』について語った。2018年には、チームナックスとして『PARAMUSHIR(ポロモシル)〜信じ続けた士魂の旗を掲げて』の原作・演出を手掛けている。安田菜津紀の《社会時評》は、パレスチナ自治区をめぐる問題をテーマとする、イスラエル人とパレスチナ人の監督が制作した映画『ノー・アザー・ランド』を取り上げた。芥川賞に決まった安堂ホセのエッセイ。《奏で人札響》はヴァイオリンのベテラン福井岳雄。
     道立近代美術館で開催中の展覧会「星の瞬間」に参加する作家が作品を語る「アーティストサタデー」が8日に開かれた。新千歳空港国際線ターミナルビル内のホテル・ポルトムインターナショナル北海道で能の鑑賞会が開かれた。開業5周年を記念して。それぞれ道新札幌圏・札幌版。

  • 『ラフマニノフ続編』刊行

    2025年02月12日

     江別・野幌中で英語を教える門田純が、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の350通りの演奏を分析した『ラフマニノフ続編』(芸術現代社)を刊行した。四半世紀前の『ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番に見る同曲異演の愉しみ』のまさに続編。
     八雲町の木彫り熊作家、小熊秀雄の作品に石川県の輪島塗の蒔絵師・大森晴香が装飾した共作の披露会が町内で開かれた。
     いずれも道新社会面。

  • 「知る」ことの意味?

    2025年02月11日

     道新カルチャー面。武田砂鉄の《考えるピント》は最終回。ネットにあふれる土地の情報だけで、その場に行ったつもりになる「通」について。ひと昔前なら「知ったかぶり」と言われたように思うが、筆者は「知る」ことの意味の方を問うている。それにしても北海道に来たことがなかったのか、武田さん。リスト音楽院セミナーが今年も19日から始まる。イシュトバーン・ラントシュの後任となるピアノのガーボル・ファルカシュ、バラージュ・レイティ、ハープのアンドレア・ビーグ、ヴァイオリンのクリストフ・バラーティらが講師となる。Kitara開館以来続き、27回目とは感慨深いが、この伝統が広く知られていないことに、関係者はもどかしさを覚えているのではないか。札幌市こどもの劇場やまびこ座では、音楽劇『雪の女王』が、15、16日に上演される。

  • 拓大ミュージカル 有終のステージへ

    2025年02月08日

    拓殖大学北海道短期大学のHP(https://www.takushoku-hc.ac.jp/news/news-college/143677/#)

     サタデーどうしんに、拓殖大北海道短期大学の学生らにほる「拓大ミュージカル」の記事。2025年度で保育学科の募集を停止するため、2月15、16日の今回公演が最後になる。41年前の1985年に講師として着任した土門裕之(元副学長)らが創設した。当初は課外活動だったが、90年代後半から授業の一環になった。第8回公演まで脚本や舞台制作に関わったアートホール東洲館の渡辺貞之館長(ふかがわ市民劇団)は「今、深川が演劇のマチと言われるんだよね。やっぱり拓大ミュージカルが発祥なんですよ」。
     同じく文化・エンタメ面もミュージカルの話題。いずれも元宝塚歌劇団の旺なつき、今金町出身の阿知波悟美が、ミュージカル『O.G.Ⅱ』でダブル主演する。釧路市を皮切りに8カ所で公演する。《ステージ》はGLAYの30周年アリーナツアーの函館公演。中森明夫の《ロンリーワイドショー》は、中居正広問題をアイドル評論家の立場で論じた。女性問題だけでなく、SMAPというファンにとっての〝夢〟の後始末をする責任もあったと。

  • 『青い落ち葉』刊行記念トーク

    2025年02月07日

     道新カルチャー面。脱北作家キム・ユギョンによる短編集『青い落ち葉』の刊行記念トークイベントが1月25日にMARUZEN&ジュンク堂で開かれた。翻訳者で韓国語講師の松田由紀、芳賀恵、解説を書いた元北星学園大教授の高島淑郎が話した。シアターキノでは、札幌在住の映画監督・藤野知明がアイヌ民族を描いたドキュメンタリー『アイヌプリ埋葬・二〇一九・トエペッコタン』(2021)『カムイチェプ(小さいプ) サケ漁と先住権』(2021)『とりもどす』(2019)の3本。
     道新札幌版には、元全日本スキー連盟会長だった故伊藤義郎の功績を伝える展示が、札幌オリンピックミュージアム内に新設されたとの記事。札幌圏版には、北海道大学合唱団が創立110周年記念の定期演奏会を2月16日にKitaraで開く。稚内大谷高校長の平岡祥孝(よしゆき)が道新に連載していたコラムを集めた『組織と仲間をこわす人、乱す人、活かす人』を出した。

  • 北海道人は不謹慎?

    2025年02月06日

     サタデーどうしんの文化・エンタメ面にあれこれ。円城塔の《西の国から》は「不謹慎」であることを理由に落とされる作品の何割かは北海道の人が書いたもの、という経験を語る。北海道と不謹慎の閾値に関係があると考えたことはないが、不謹慎を理由に広まることなく落とされるのが実際であれば、筆者の言うとおり、北海道的感性がもっと広まればいいのに、と思わぬでもない。
     父の転勤に伴い9歳から旧姓根室商業学校(現根室高)を中退するまで根室で過ごした画家の青山義雄の生誕130年展「青山義雄とその時代」が、茅ヶ崎市美術館で開かれている。横須賀市生まれで、1921(大正10)年にフランスへ渡り、マティスに師事した。米米CLUBの石井竜也が、3月29日にhiraruで札響と共演する。
     桑原憂太郎の《道内文学 短歌》に歌人松川洋子の訃報。「原始林」の元選者で同人誌「太郎と花子」の編集発行人でもあった。「日曜文芸」の選者も長く務め、多くの若手の才能を見出したことも功績に挙げている。
     訃報で言えば『はだしのゲン』や三浦綾子原作の『母 小林多喜二の母の物語』の映画化を担当した映画監督の山田火砂子も1月13日に92歳で死去。PMFに20年余にわたって参加し、芸術主幹を務めた元ウイーン・フィル首席クラリネット奏者のペーター・シュミードルも2月1日に84歳で死去。

  • 秋山和慶を悼む

    2025年02月04日

     道新カルチャー面は、元札響ミュージック・アドヴァイザー兼首席指揮者の秋山和慶を悼む記事。昨年9月の「鉄道コンサート」のひと幕を振り返った。音楽評論家の三浦洋は「古典派とロマン派が主軸だった札響定期に近代音楽を積極に取り入れ、ロシア・スクリャービンの難曲を情熱的に演奏したことが記憶に残る」と話した。人形浄瑠璃を上演する「さっぽろ人形浄瑠璃あしり座」は、30周年記念公演でオリジナル作品『大黒屋光太夫ロシア漂流記』を7〜9日に札幌市教育文化会館で上演する。人形劇師の沢則行が美術を担当した。全5段通しの上演は2001年以来。出版梓会の出版文化賞を受賞した亜璃西社、新聞社学芸文化賞を受賞した寿郎社が東京での贈呈式に出席した。五十嵐秀彦《道内文学 俳句》は、永野照子の新句集『遠いこだま』を論じた。hitaruのオペラプロジェクト『ドン・ジョヴァンニ』のハイライトコンサートが1月19日に開かれた。
     次回の札幌国際芸術祭の概要が発表された。ディレクターを4人のチーム制とし、クリエイティブディレクターは前回2024年に続いて小川秀明、フェスティバルディレクターに細川麻沙美、スクールディレクターに漆崇博、スタジオディレクターは丸田知明。2027年1〜2月に開催予定。

  • サッポロ・パラレル・ミュージアム2025開催中

    2025年02月03日

    サッポロ・パラレル・ミュージアム2025ウェブサイト

     道新札幌圏版。サッポロ・パラレル・ミュージアム2025がチカホ(札幌駅前通地下歩行空間)や大丸札幌店などで開かれている。9日まで。
     頸椎症性筋萎縮症キーガン型という難病により右腕がほぼ動かなくなった赤平市の書家島崎昭洋は、「戦」の文字を書き続ける。約1キロの筆を持った右手を左手で支えて書く。2009年の書究院展では最高賞の道知事賞を受賞した。

  • ゆうばりファンタ破産その後

    2025年02月02日

     破産手続きに入ったNPO法人ゆうばりファンタの上田博和代表理事が取材に応え「不正を止めて、うみを出し切ることが代表理事としての責任だと、苦渋の決断をした」と述べた。一部理事からは独断と批判する声も出ているというが、代表理事が理事会から外され、代表印の不正使用や業者からの水増し請求なども確認されている。道新社会面。
     朝日新聞文化面では、地下鉄サリン事件30年を迎え、オウム真理教に関するドキュメンタリー映画がある森達也監督による《現場思考》。「社会は何か問題が起きると、一つの見方に染まりがちです。戦時中の日本やナチスドイツなど群れることで失敗した例はいくらでもあります。そうならないためには、まず、歴史を知ること。そして、集団で共有される見方を疑い、自分なりの視点を持つことが必要なのでしょう」とSNSにあふれる多数意見に流されがちな「大衆心理」に釘を刺す。

  • 酪農学園大モデルにNHKドラマ『リラの花咲くけものみち』

    2025年01月31日

     道新カルチャー面。江別市の酪農学園大学をモデルとしたNHKドラマ『リラの花咲くけものみち』が2月1日から全3回で放送される。引きこもりから獣医師を目指すようになる主人公に山田杏奈。クラシックの名曲をアレンジし、ダンスと組み合わせた公演「クリエイティブ・アート・ミックス」の第3弾が2月9日にhiraruで開かれる。
     道新社会面。北海道美術協会主催の若手公募展「道展U21」の大賞に、札幌厚別高2年の長瀬朔弥の立体『守る者』が選ばれた。
     朝日新聞北海道面。闘病中の俳優斎藤歩を追ったHTBのドキュメンタリー『生ききる〜俳優と妻の夜想曲』が、2月3日に放送される。HTB報道デスクの沼田博光と斎藤の長い交流から実現した作品。

  • NPO法人ゆうばりファンタが破産

    2025年01月30日

     ゆうばり国際ファンタスティック映画祭を主催していた「NPO法人ゆうばりファンタ」が破産手続きの開始決定を受けた。負債額は9758万円。過去の受賞者への賞金未払いや助成金の問題など不祥事が発覚し、活動を自粛していた。
     道内出身の若手を中心に編成する「プロウインドオーケストラ北海道」が3月22日、札幌市教育文化会館で初の演奏会を行う。代表は札幌大谷大教授で、元東京交響楽団トランペット奏者の大隈雅人。札幌出身のユーフォニアム奏者佐藤悠光(ゆうみ)が楽団長を務める。
    《音楽会》は「キタラのニューイヤー」。指揮者の原田慶太楼、ピアノの清塚信也という人気演奏家の登場でチケットは完売した由。楽章抜粋ながらピアノ協奏曲5曲を演奏するなど、会場を沸かせたという。評は八木幸三。
     札幌の文化施設の話題三つ。1月5日に89歳で死去した作家の李恢成を悼むコーナーが、北海道立文学館に設けられた。道銀文化財団は2月2日に、北海道銀行本店ロビーコンサートに代わる演奏会「キタラシリーズ」を開催する。hitaruは来年2、3月に行うバレエプロジェクトの「くるみ割り人形」の出演者を募集している。
     札幌出身の竹本碩太夫が、京都市の芸術文化特別奨励者に選ばれた。
     いずれも道新カルチャー面から。

  • 植村直己の活動を捉えた未公開写真

    2025年01月29日

     冒険家植村直己がグリーンランドで犬ぞり訓練をしている様子を捉えた未公開写真3枚を含む写真展が、1月28日から札幌市資料館で始まった。2月2日まで。北大の北極研究者日下稜が、2022年に愛知県の野外民族博物館リトルワールド所蔵の資料から発見した。撮影はグリーンランド在住の猟師大嶋育雄。道新札幌圏版。
     香港の俳優トニー・レオンを主演に、香港マフィアの抗争を描くアクション映画が道内を主な舞台に制作される。29日から監督のジョニー・トーらがロケハンで訪れている。道新社会面。

  • 指揮者の秋山和慶が死去

    2025年01月28日

     元札響首席指揮者の秋山和慶が26日、84歳で死去した。自宅で転倒し、指揮者を引退したばかりだが、肺炎で急変した。札響では1986年12月から首席客演指揮者、88年から98年までミュージック・アドヴァイザー兼首席指揮者を務めていた。1997年のKitaraこけら落としは秋山指揮でサン=サーンスの交響曲第3番などを札響が演奏した。
     5月から札幌でも上演されるミュージカル『レ・ミゼラブル』の東京公演が12月20日に帝国劇場で始まった。幼少期を札幌ですごした昆夏美がファンテーヌ役を務める。道新カルチャー面。

  • ライフワークを語る「冬展」

    2025年01月25日

     25日は札幌・円山のギャラリー・レタラスペースで、開催中の「冬展」関連シンポジウムが開かれた。池田緑、柿﨑熙、高橋靖子、藤井忠行といういずれもベテラン作家と、北海道美術ネットの梁井朗が、自らが長年取り組んできた仕事の一端を紹介し、展覧会テーマである「ライフワーク」との出会いや、その後の紆余曲折ぶりを存分に語った。シンポジウムに先立って、当日来場した出品作家がひとりずつ自作を語る趣向があり、さまざまな作品への想いを聞くことができた。
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     サタデーどうしんの文化・エンタメ面には「冬展」を紹介する《展覧会》を掲載。 

  • 道立近代美術館「星の瞬間」

    2025年01月24日

     さっぽろ10区新聞に、道立近代美術館で開かれている展覧会「星の瞬間 アーティストとミュージアムが読み直す、Hokkaido」の大きな紹介記事。端聡×砂澤ビッキ、中村聖司×アイヌ民族のイモンパウクによる手彫りの盆。展覧会のタイトルは伝記作家シュテファン・ツバイクの言葉から。

  • 伊与原新の「星隕つ駅逓」と白滝

    2025年01月23日

     朝日新聞は、直木賞の伊与原新と、『藍を継ぐ海』収録の短編「星隕(お)つ駅逓」で舞台にした遠軽・白滝の農家江面(えづら)陽子とのオンライン対談を掲載している。短編集を通じては「継承」がテーマという。
     札幌の写真家山本和龍美(わたつみ)が、北区北28西4に「写真とアートのギャラリー みどりの日記」を開設する。内装が未完のまま21日にオープンし、完成までの過程を楽しんでもらうという。28日から2人展を開催する。道新札幌圏版。
     同じくカルチャー面には、第172回芥川賞・直木賞の選考を振り返る記事。芥川賞は鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』が票を集め、安堂ホセ『DTOPIA』がそれに次いだ。乗代雄介『二十四五』は「実質3位」。直木賞は伊与原新『藍を継ぐ海』が圧倒的だったという。中島岳志《論壇時評》は中居正広問題。あらためてオールドメディアの体質を批判する。《音楽会》は札響第19回hitaru定期。エヴァ・ゲヴォルギヤンによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲など。25、26日の第666回定期や小樽ニューイヤーでの桐原宗生によるコルンゴルト協奏曲など札響紙面。

  • キム・ユギョン『青い落ち葉』刊行

    2025年01月22日

     脱北作家キム・ユギョンの短編集『青い落ち葉』(北海道新聞社)が24日に刊行される。翻訳は札幌の韓国語講師・松田由紀、芳賀惠。北朝鮮での生きづらさや逃亡生活の苦難を、さまざまな立場の人物に仮託して描いた。「北朝鮮については軍事や独裁に焦点を当てた報道が多いが、そこに住む人々の心の動きは私たちも共感できるものだと知ってほしい」と松田。道新社会面。

  • 3月 hitaruで『ドン・ジョヴァンニ』

    2025年01月21日

     道新カルチャー面。hitaru発のオペラプロジェクト第2弾で3月7日にモーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』が上演される。指揮とフォルテピアノの園田隆一郎、ローマ在住の演出家粟国(あぐに)淳が魅力を語った。《ステージ》は「さっぽろパペットシアタープロジェクト」の「北のおばけ箱」第3弾。札響くらぶは19回目となる楽譜購入支援金50万円を、札響に寄付した。

  • ギリヤーク尼ヶ崎が神戸で舞う

    2025年01月19日

     函館出身の大道芸人ギリヤーク尼ヶ崎が、神戸市長田区の公園で震災30年の節目に捧げる「祈りの踊り」を舞った。震災から20年通い続けたのち、10年ぶりの公演。

  • 恥じらむような顔に在日の孤独感じた――川村湊の李恢成追悼

    2025年01月18日

     サタデーどうしん文化・エンタメ面に、川村湊による李恢成の見事な追悼文。同じ北海道新聞文学賞の選考委員として間近で見た作家の人となり。長く同席した加藤幸子、久間十義との関係性。そして李恢成の作品を「ディアスポラの文学」と規定する。1996年にソウルであった韓民族文学人大会で、当時は朝鮮籍だった李(のちに韓国籍取得)と金石範がビザを取得して入国できたときのエピソードで、その時の「恥じらむような顔」が在日の孤独を感じさせたという鮮やかな締め。山田航の《札幌零景》は4プラにあった雑貨店のこと。12月に開かれた、舞台作品のトリガーアラート(トラウマへの配慮)に関する講座の記事も。
     映画監督のデビッド・リンチ死去。78歳。『乱』や『影武者』『雨あがる』など黒澤明監督の映画で撮影監督を務めた上田正治も16日、87歳で死去。

  • 札幌出身 人形劇俳優・平常の『ロミオとジュリエット』

    2025年01月17日

     札幌出身の人形劇俳優・平常(たいらじょう)が1月31日、新作『ロミオとジュリエット』を東京文化会館小ホールで上演する。敵対するモンタギュー家とキャピュレット家を、青を貴重とするライオンと、赤のウサギになぞらえて表現する。デビュー30周年ツアー中のGLAYは2023年以来の函館公演を24、25日に開催。道新カルチャー面より。
     沖縄戦経験者の証言をもとにした演劇が、22日に札幌で上演される。那覇の会社ナラティブが劇を作った。道新社会面。
     北海道農民管弦楽団が創立30周年となり、2月2日に記念演奏会をKitara大ホールで行う。東北農民管弦楽団との合同演奏。合唱愛好家らによる「ゴーシュ合唱団」や児童合唱団も出演し、カンタータなどを演奏する。さっぽろ10区新聞。
     上記ふたつの記事には、演目が書かれていない。いずれもそこそこの字数を確保しているのに。大多数が聞いてもわからない無名の演目だとしても、タイトルを含めての創作物なので、載せてほしいところ。

  • 芥川賞・直木賞発表

    2025年01月16日

     第172回芥川賞・直木賞が15日に発表された。北海道ゆかりの朝倉かすみ、乗代雄介は受賞を逃した。芥川賞は安堂ホセ『DTOPIA』、鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』、直木賞は伊与原新『藍を継ぐ海』。
     余市町で撮影された映画『美晴に傘を』がサツゲキで24日から公開。納谷真大ら札幌の役者も出演している。アーサー・ビナード《言の葉工務店》は、鹿の話。JRの列車との衝突から、鹿の立場での独白をノートに書きつける。日本での「獣害」「駆除」という表現に難色を示しつつ、発情期を「攻撃的」と呼ばず「雌と結ばれるために危険を顧みず頑張るようになる」と捉える。《音楽会》はチェロ上野通明とピアノのホセ・ガルヤドのリサイタル(12月15日)。《音楽会》が軒並み1ヶ月遅れの掲載なのは気になる。道新カルチャー面。

  • 李恢成死去、89歳。

    2025年01月14日

     作家の李恢成が5日、89歳で死去。『地上生活者』は「群像」に2000年から2020年の第6部まで連載された。
     道新カルチャー面。谷川俊太郎公認の私設記念館「俊カフェ」で昨年12月15日、店主古川奈央による詩の朗読イベントが行われた。谷川との対談集『ららら星のかなた』を刊行した伊藤比呂美による追悼原稿。谷川が「自分は傲慢だ」「他人に無関心だ」と語ったのを受けて「実は誰でもそういうダークな何かを持っている。傲慢さじゃなくてもいい。人が抱え込み、自分では否定したい、あるいは疑いたい何か。それがあるから人は自分を好きになれない。世界や宇宙の存在に対する根本的な疑問かもしれない。谷川さんはそれをすごく薄めた形で、言葉や言葉のすきまにちりばめた。無意識に気がつかなきゃわからないくらいん量だった」1月5日、Kitara大ホールでHBCジュニアオーケストラの創立60周年演奏会が開かれた。リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』、モーツァルトのファゴット協奏曲など。
     朝日新聞北海道面では、直木賞候補となった朝倉かすみの武蔵女子短大時代の落語研究会の同期たちとの、いまも続く交流を伝えた。

  • 笠井嗣夫『横断と流動』

    2025年01月12日

     道新読書ナビ。ほっかいどうの本は、笠井嗣夫『横断と流動』(七月堂)。大岡信、宗左近、支路遺耕治、吉本隆明らを論じ、北海道ゆかりのモダニズム詩人村木雄一や、長光太、和田徹三、松岡繁雄、江原光太にも言及している。

  • 昭和100年と戦後80年

    2025年01月11日

     朝日新聞読書面の《ひもとく》で、保阪正康が「昭和100年/戦後80年」を読み解く五人五書を挙げている。中村隆英『昭和史(上・下)』、加藤周一セレクション5『現代日本の文化と社会』(鷲巣力編)、立花隆『田中角栄研究 全記録』、石牟礼道子『苦界浄土』、大城立裕『カクテル・パーティ』。
     道新カルチャー面。中森明夫の《ロンリーワイドショー》も「昭和99年」がテーマ。昨年の紅白歌合戦が「諦めと開き直り」に尽きたと。

  • 優しいリベラル?

    2025年01月10日

     朝日新聞文化面で、作家の中村文則が「リベラル」について論じている。厳しすぎるリベラルの反動で、かえって社会が保守化しているのではないかと。この仮説はうなずけるが、解決策として「リベラルは丁寧に親切に、優しくなるのはどうだろう」というイメージ戦略は弱くないか。寄稿者自身が首を傾げている。
     小樽とハワイで撮影されたNetflixのドラマ『さよならのつづき』が、ヒットしている。有村架純
    生田斗真、坂口健太郎。事故による別れと臓器移植、死者の記憶などをモチーフとする。《金曜シネマ》は大泉洋主演の『室町無頼』。道新カルチャー面。

  • 原田康子の『挽歌』論再び

    2025年01月09日

     道新カルチャー面。安田菜津紀の《社会時評》は、パレスチナ問題と米政権の動向。《道内文学 創作・評論》は、原田康子文学論の現在を南部鎭『原田康子の挽歌 北海国の終焉』(作品社)に沿って論じる(小田島本有)。《音楽会》は沼尻竜典のオペラ『竹取物語』を洗練された日本語オペラと評す(八木幸三)。
     ピーター・ポール&マリー(PPM)のピーター・ヤーローが7日、86歳で死去。

  • 雪ミク15年、観光やイベントに定着

    2025年01月08日

    「初音ミク」の派生キャラクター「雪ミク」が札幌の観光にひと役買っている話題を、道新札幌圏版で取り上げている。冬の市電のラッピングをはじめ、二次創作風にさまざまなバリエーションでイベントで使われている。観光客や市民にとってのイメージが、ゆるキャラと同じなのか違うのか、気になるところ。元知事の堀達也が『激動の2922日 道政8年の記憶』を自費出版した。市販していない。

  • 桐原宗生がコルンゴルドのVn協奏曲

    2025年01月07日

     道新カルチャー面の《奏で人札響》は首席ヴァイオリン奏者の桐原宗生(そうき)。18日に小樽市民会館で開かれる札響ニューイヤーコンサートで、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を弾く。指揮は下野竜也。札響には2015年から。
     伊藤氏貴の《文芸時評》は、日本文学の季節感が失われつつある状況について。三角みづ紀の《道内文学 詩》は、松岡真弓の詩集『窓の向こう』と詩誌「59」第34号、詩誌「フラジャイル」。

  • 『アイヌ神謡集』中国語訳

    2025年01月06日

     北大大学院の中国人研究員・馬長城(まちょうじょう)が、知里幸恵『アイヌ神謡集』の中国語訳を刊行した。昨年8月に中国の出版社から刊行し、中国の15大学図書館や登別市の「銀のしずく記念館」、ウポポイなどに寄贈した。道新社会面。

  • 元札響事務局長の宮澤敏夫死去

    2025年01月05日

     訃報ふたつ。札幌交響楽団の元事務局長宮澤敏夫が1日にコロナ感染症で死去した。81歳。大阪フィルハーモニー交響楽団事務局長を経て、2004年8月から2014年3月まで札響事務局長。富士山静岡交響楽団専務として活躍中だった。音楽監督だった尾高忠明との名コンビで、札響の経営再建を成し遂げた。札幌ドームなどを設計した建築家・原広司が3日死去。88歳。

  • 中島みゆきがデビュー半世紀

    2025年01月02日

     2日は休刊日なので、きのうの道新新年号の記事から。
     中島みゆきのデビュー半世紀の特集。編曲家・プロデューサーの瀬尾一三のコメントで「出だしの言葉選びがすごい。ずどんと来るし、リズムになっている。メロディーと詞が密着し、他の言葉に置き換えられない」とある。みゆきに「どう作るの?」と尋ねたら、詞とメロディーが「同時」と答えた。「夜会」については現場でさまざまな議論があったが「弱音を吐かない」し、決断を迫られれば一晩考え抜いて答えを出し「一度決めたら揺らがない。優柔不断のかけらもない」という。「中島みゆきという人は格好いいの一言。それはきっと生まれ持ったものなんでしょう」
     

  • 戦後80年、民主主義、台湾有事、地震――2025元日の各紙

    2025年01月01日

     2025年元日の新聞4紙をチェック。
     1面の特集は
    *北海道新聞《戦禍とアイヌ民族〜記者がたどる戦争 特別編》①で、これまで詳しく触れられることがなかったアイヌ民族の従軍と差別を正面に据えた。一般社会でのアイヌ民族差別と、軍内部での「平等」の間に潜在している歴史の痕跡を追う。続きは社会面に。ちなみに新年号の第4部(8頁)を「戦後80年」特集に充てた。
    *毎日新聞《デモクラシーズ〜これまで これから 戦後80年》①は、戦後80年企画の「これまで これから」の一環で民主主義を考える。オンラインプラットフォーム「Liqlid(リクリッド)」で自治体に直接意見を述べるシステムを開発する企業を紹介するとともに、台湾の初代デジタル発展部長を務めたオードリー・タンのインタビューを3面に掲載。
     読売と朝日は1面特集がない。
    *読売新聞は「中国 宮古海峡で封鎖演習 台湾有事想定か 政府警戒」の独自ニュース。まるで防衛費増大を後押しするかのように危機をあおる内容だ。2面には元日恒例の「読売信条」。この信条を、読売は終戦翌年の1946年に制定した。昨年12月の渡邊恒雄死去を受けた産経新聞の記事によれば、旧信条には「われらは左右両翼の独裁思想に対して敢然として戦う」との文言があった。ところが1959年1月1日の読売社説で「両翼の偏向思想が、マスコミを侵す危険がないとはいえない。特に警戒すべきは、左翼偏向である。今日の左翼偏向派は、決して自らを『左翼』と称することはしない。平和とか軍縮とか反核といった大衆の耳に快くひびく言葉の中に、それを隠そうとする」と打ち出したのを機に、読売は反左翼(そして反朝日)の姿勢を明確に打ち出す。その急先鋒だったのがナベツネであったと産経記事は解説する。そこからさらに40年。2000年に信条は改訂され、上記の文言も消えた。
    *朝日新聞は能登半島地震の「きょう1年」をトップに置き、「復興を目指す被災地から、縮小する日本の将来を考える」とした。大晦日の社会面に「上」を掲載した「あの日から」は、年をまたいで元日に「下」。
     能登半島地震1年は、各紙ともまとめ記事がある。毎日も年またぎで「半歩そっと 能登地震1年」の2回目。読売は特別号外を出し、オンラインで読めるようにした。
     その他の記事では、北海道面で読売が「知床 世界自然遺産20年 序章」の連載、毎日が「なが〜く続く 老舗物語」の連載を始めている。朝日は1面の「折々のことば」(鷲田清一)が谷川俊太郎の詩集『うつむく少年』から、「平和/それは花ではなく/花を育てる土/平和/それは歌ではなく/生きた唇」の一節を引いた。

  • 墓碑銘2024

    2024年12月30日

     北海道新聞の墓碑銘2024のうち道内関係者。
     久富淑子、鮫島惇一郎、松原タネ、正司歌江、神谷正男、原子修、差間正樹、森嶋敏行、吉田豪介、田中義克、鳥越忠行、竹内孝一、高野武、明歩谷清、藤田嘉夫、巽昭、加藤幸子、久保俊治、小板アエ、有田均、下斗米ミチ、吉田ルイ子、友田多喜雄、ささやなえこ、佐々木治一、松本暎子、金子隆、正司照江、奥山功、大崎善生、高石ともや、北川健司、宇能鴻一郎、牧口準市、細山俊樹、金原亭馬遊、中川李枝子、村瀬広田康男、太田武雄、内田東一、横山泉、宮田広幸、会沢実、正野勝也、松田隆、間宮芳生、萩原貢、安藤君明、松久武雄。
     朝日新聞一面は、2025年が戦後80年であることから《百年 未来への歴史 デモクラシーと戦争》の連載企画をスタートさせた。

  • 地方史研究家の山本竜也が講演

    2024年12月27日

     朝日新聞北海道面。地方史研究科の山本竜也が6日に北海道科学大で講演した。札幌管区気象台に務めながら、地方史に関する著書は今年刊行した『地方史のつむぎ方 北海道を中心に』で9冊目。知らなかったことを知り、ばらばらに聞いた話がつながるところに謎解きのような面白さがある、という。
     道新カルチャー面は「回顧2024 下」。道内の美術界、劇場の誕生と閉館、札響やロンドン交響楽団、PMFでのマーラー演奏。それに時代劇映画。

  • STV対HTBの放送界など2024年回顧

    2024年12月26日

     道新カルチャー面は年末の「回顧2024 上」。放送は「王者STV対HTB」。ポピュラー音楽はTRIPLANE、森大翔(やまと)、小山雄大ら。女流棋界、大学のハラスメント。1月5日にHBCジュニアオーケストラの創立60周年記念特別演奏会がKitaraで開かれる。阿部博光指揮、西本幸弘コンマスで『シェエラザード』などを演奏する。海外戯曲の翻訳者・作品に贈られる小田島雄志賞に、旭川在住の木村典子らが選ばれた。韓国ミュージカル『ファンレター』を翻訳した。

  • 出版界 トーハンのHONYALに注目

    2024年12月24日

     出版界の一年を振り返る永江朗のインタビュー。経済産業省の書店復興プロジェクトチームが発足したが、課題を整理するにとどまった。トーハンの小規模書店支援サービス「HONYAL(ホンヤル)」に注目。札幌・南区のホテル「定山渓第一寶亭留翠山亭」の「風呂屋書店」の話題も。道内出版界は、キャンプ場ガイド版元のギミック、文芸書などの柏艪舎破産。明るいニュースとして、亜璃西社と寿郎社の出版文化賞、新聞社学芸文化賞受賞があった。中島岳志の《論壇時評》は、1995年の米兵による少女暴行事件、オウム真理教のサリン事件から30年の節目で、アメリカ、天皇、日本政府の三層構造への疑問と、主権の回復を論点とする。道新カルチャー面。
     札幌在住の俳優早乙女宏美が、ノンフィクション『ストリップ劇場のある街、あった街』を寿郎社から刊行した。著者は都内やススキノの道頓堀劇場に出演していた踊り子でもあった。ススキノには1970年代に6つの劇場があったという。道新札幌圏版。

  • 道南で活躍するタレント育成

    2024年12月21日

    《サタデーどうしん》。今年5月、元タレントの服部真由子が函館に設立した芸能事務所「ange promotion」の活動を紹介する。インタビューに〈芸能界を上り詰めるのもいいですが、道南で活躍する地元色が強いアイドルやタレントも育てたい。ファンが函館を訪れるよう将来的には東京・秋葉原のAKB48劇場のような拠点をつくり、観光資源にしたいです)
     俳優・脚本家・演出家の斎藤歩と人形劇師の沢則行による演劇『カフカ経由 シスカ行き』が、1日に幕別町百年記念ホールで再演された。昨年末に札幌で初演された。「物語」をなくした俳優が、稚内市抜海の海辺で人形劇誌と語り合う。ウクライナなどで戦争が続く状況も批判している。山田航の《札幌零景》は、バスターミナルでの幻影。
     道新社会面には、倉本聰作の演劇『富良野警察物語〜もしもあなただったら〜』の上演が20日、富良野演劇工場で始まった。ワークショップの試演会としての上演。
     建築家の谷口吉生が16日、87歳で没した。

  • 南幌に「はれっぱえほん館」

    2024年12月20日

     ガソリンスタンドや書店を経営する帯広のオカモトが20日、南幌町の子ども室内遊戯施設「はれっぱ」内に書店「はれっぱえほん館」をオープン。取次大手トーハンの小規模書店向けサービス「ホンヤル」を活用した。

  • 忠類でナウマンゾウ頭骨 54年ぶり発掘

    2024年12月15日

     1969〜70年にかけて、ナウマンゾウのほぼ全身骨格化石が発掘された幕別町忠類地区の現場で、同じ個体のものと見られる頭骨化石が見つかった。ナウマンゾウに特徴的な「含気骨」と呼ばれる頭骨の一部。発掘当時はその場で死んだとと見られていたが、2000年代後半になって、死後に洪水で発掘地点まで流されたという説が有力になり、広い範囲で発掘を続けていた。
     道新読書ナビ欄の《ほっかいどう》は、文と写真・荒井宏明『北海道建築』(トゥーヴァージンズ)。
     アイヌ民族の研究のあり方を考える集会が、日本人類学会、日本考古学協会、日本文化人類学会の代表を招いて14日に札幌で開かれた。アイヌ団体側は、研究のため発掘したアイヌ民族の遺骨を返還するとともに謝罪を求めたが、学会側は拒否した。

  • 「春画」ポジティブな評価を――三遊亭竜楽がイベント

    2024年12月14日

     浮世絵の春画を落語の語りとともに鑑賞するイベントが6日に開かれた。海外で通訳なしの落語公演を続けてきた三遊亭竜楽が、世界的な春画コレクターから「ポジティブな評価を広めて」と、1万点以上の画像データを提供されたのを機に、北海道を皮切りに発信したいという。会場はシアターZoo。《展覧会》は、鈴木果澄「世界を孕む」展。

  • 河﨑秋子の新刊『森田繁子と腹八分』

    2024年12月12日

     河﨑秋子の新刊『森田繁子と腹八分』(徳間書店)が面白そうだ。連載したのが日本農業新聞だけに、農業コンサルタントが主人公。「縦にも横にも大きな」森繁こと森田繁子が「品川ナンバーの赤いBMW」で現場に現れるという人物造形だけで、惹きつけるものがある。直木賞受賞後の作品の視野の広さが際立つ。安田菜津記の《社会時評》は袴田巌さんの無罪判決を取り上げ、再審制度に物申す。《音楽会》は札響第665回定期。エリアス・グランディのマーラー交響曲第1番とヒンデミットの『白鳥を焼く男』。サウンドの清新さに言及がある(評・八木幸三)。12月21日に公演するシークレット歌劇團の紹介も。いずれも道新カルチャー面。
     ここから道新社会面。
     芥川賞・直木賞候補が発表され、芥川に江別出身の乗代雄介『二十四五』、直木に小樽出身の朝倉かすみ『よむよむかたる』が選ばれた。
     白糠でアイヌ民族の伝統漁法を継承する青年と家族の姿を描いたドキュメンタリー映画『アイヌプリ』が完成し、14日から東京と道内で公開される。伊達出身の福永壮志監督作品。白糠アイヌ協会の天内重樹会長にスポットを当てる。北海道博物館が保管しているアイヌ民族の遺骨7体のうち、網走で発見された1体を来年度、網走市内の団体に返還される。
     朝日新聞は北海道面に、札幌市がマンガを核とするポップカルチャーを活用したまちづくりを官民連携で進め、一般社団法人を立ち上げる方針を市議会で明かしたとの記事。「札幌マンガ・図書等活用まちづくり機構(仮称)」の名称はいかにも行政だが、マンガライブラリーの実証実験、企画展、ワークショプなどを5年間にわたって試行する。常設展示は考えていないとのこと。

  • ノーベル平和賞演説「想像してみてください」――田中熙巳・被団協代表委員

    2024年12月11日

     日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中熙巳によるノーベル平和賞受賞演説から。
    〈想像してみてください。直ちに発射できる核弾頭が4千発もあるということを。広島や長崎で起こったことの数百倍、数千倍の被害が直ちに現出することがあるということです。みなさんがいつ被害者になってもおかしくないし、加害者になるかもしれない。ですから、核兵器をなくしていくためにどうしたらいいか、世界中のみなさんで共に話し合い、求めていただきたいと思うのです〉

  • ハン・ガン講演 暴力的な世界と美しい世界

    2024年12月10日

     朝日新聞文化面に、ノーベル文学賞を受賞した韓国の作家ハン・ガンの受賞記念講演の記事。〈世界はどうしてこんなに暴力的で苦しいのか〉〈同時に、世界はどうしてこんなに美しいのか〉。自身を執筆に駆り立ててきた「動力」は「この二つの問いの間の緊張と内的な闘争」だったと述べた。1980年の光州事件にまつわる経験をもとに書いた『少年が来る』は「人間に対する根源的な信頼を失ったが、どうしたら世界を抱きしめることができるのか。その不可解な謎に向き合わなければ前に進めない」として書き始めた。〈人間の残酷性と尊厳が極限の状態で同時に存在していた時空間を光州と呼ぶとき、光州はもはや一都市を示す固有名詞ではなく、普通名詞になる〉

  • 田村実咲編著『開講!木彫り熊概論』

    2024年12月08日

     北海道の木彫り熊の資料収集と分析、聞き取り調査を経て書かれた『開講!木彫り熊概論』が刊行された。国立アイヌ民族博物館のアソシエイトフェロー田村実咲編著。北大大学院では木彫り熊の「サイン」を研究した。朝日新聞北海道面。
     北海道新聞社主催の第62回有島青少年文芸賞の表彰式が7日に行われた。選考委員長の佐川光晴は「小説はその時しか書けないものがある。書けると思えば書けばいい。誰のものでもない、最初のワンフレーズができた喜びを知る強さを持ち続けてください」と話した。道新社会面。
     本郷新彫刻賞を受賞した藤原千也(かずや)の記念展「生まれようとした時の光をみたい」が、本郷新記念札幌彫刻美術館で開かれている。受賞作の『太陽のふね』をはじめ、『生まれようとした時の光』など24点を展示している。さっぽろ10区新聞。

  • 荻田泰永『なぜ君は北極を歩かないのか』

    2024年12月07日

     鷹栖町出身の北極冒険家・荻田泰永が、若者12人と北極圏を歩いた「冒険ウォーク」の記録を『君はなぜ北極を歩かないのか』を刊行した。2019年4月に、北極圏のカナダ北部バフィン島のパングニタングを出発し、そりで荷物を引いて29日間歩き、島内のクライドリバーまで約600キロを歩いた。「100年後に読んだ人が、100年前の極地探検がどんなものだったか分かるように記録したい」という信念のもと編んだという。ミュージカル『フランケンシュタイン』の製作記者会見が都内で行われ、道産子男子ユニット「NORD(ノール)」のメンバーでもある深川出身の島太星ら出演者が抱負を語った。いずれも《サタデーどうしん》文化・エンタメ面。
     ノーベル文学賞に決まった環kぽくの作家ハン・ガンが、ストックホルムで6日に会見した。韓国の尹錫悦大統領が「非常戒厳」を一時宣言した混乱について、「母国で起きたことを目にし、大変ショックを受けている」と話した。道新社会面。朝日新聞社会面には「今回の状況が(以前と)違うのは、すべてが生中継され、皆が見守ることができた点だ」「武力や強圧で言論を阻むやり方で統制する過去の状況に戻らないことを切に願っている」とも。
     小樽ロケで撮影された映画『ラブレター』の主演も務めた俳優の中山美穂が6日に54歳で死去。

  • 谷川俊太郎の遺作 「新潮」に

    2024年12月05日

     谷川俊太郎の遺作が「新潮」1月号に掲載されるという。覚和歌子との対詩で、10行以内の短い詩を12編ずつ送り合った。92歳まで詩人でありつづけた彼の最後の作品が、最大の盟友だった大岡信が推し進めてきた対詩であったことに、静かな感動を覚える。道新社会面。

  • 「太陽の塔」アートか建造物か

    2024年12月04日

     1970年の大阪万博で岡本太郎がデザインを担当した「太陽の塔」を国の重要文化財に指定すべく、大阪府が動いている。アートでもあり建造物でもある塔を、美術工芸品と建造物のどちらに分類するかの論議がある。最も新しい重文指定作品は、美術工芸品だと1940〜41年の安田靫彦の日本画、建造物は1973年の瀬戸内海歴史民俗資料館という。朝日新聞文化面。

  • 第62回有島青少年文芸賞は優秀賞4編

    2024年12月03日

     北海道新聞社主催の有島青少年文芸賞は62回目。最優秀賞はなく、優秀賞は▽立命館慶祥高3年の熊田拓也『猫になった日』▽立命館慶祥高2年の佐々木希『いつか誰かの夢をかなえて』▽札幌開成中等教育学校2年の山本知宙(ちひろ)『秋に咲くタンポポ』▽札幌開成中等教育学校4年の中村紗綾『テーミスの暴走』の4作。伊藤氏貴の《文芸時評》は「気になる時代遅れのテーマ」の見出し。「恋もせず独身をつづける女性が未だ珍しいもののように描かれているのが気になる月だった」と書く。桑原憂太郎の《道内文学・短歌》は55周年の区切りを迎えた札幌の歌誌「北土」の終刊を惜しむ。いずれも道新カルチャー面。

  • 京都の對龍山荘庭園、今秋から一般公開

    2024年12月02日

     朝日新聞北海道面に、今秋に公開したニトリホールディングス会長の似鳥明雄が購入した京都の「對龍山荘庭園」についての記事。1896(明治29)年に、鹿鳴館建設にも関わった薩摩藩士が建てた庭園。名称は「瑞龍山」の山号を持つ南禅寺の向かいにあるためという。似鳥は取引先に紹介され、2010年に数十億円で手に入れた。年間の維持管理費は数千万円かかる。南禅寺の近くは庭園を持つ別荘が多いが、公開しているのは京都市が所有する無鄰菴(むりんあん)ぐらいという。建築物も来春から公開予定という。

  • STVなど日テレ系4社が経営統合へ

    2024年11月30日

     朝日新聞社会面に、日本テレビ系の4社が来春経営統合するとの記事。読売テレビ、中京テレビ、札幌テレビ、福岡放送で、それぞれ日テレHD傘下の読売中京FSホールディングス(FYCS)の傘下となる。FSは福岡、札幌なのか?
     道新カルチャー面。10月に文藝春秋から刊行された北海道新聞朝刊の連載小説『ひとでなし』について、著者の星野智幸が語っている。主人公が小学5年から、中高年までの半生を綴る。「選択やタイミングが異なれば、悪い方向を避けて踏みとどまれる感覚を物語を通じて持ってもらえたら」と話す。
    《展覧会》は本郷新記念札幌彫刻美術館で開かれている藤原千也(かずや)展。評は美術ライター梁井朗。道産子男子ユニット「NORD(ノール)」のライブが12月15日にZepp Sapporoで開かれる。

  • 角幡唯介が新刊『地図なき山』

    2024年11月29日

     探検家で作家の角幡唯介(芦別出身)が、日高山脈地図なし登山に挑んだノンフィクション『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』を新潮社から刊行した。地図なしで歩きながら、目印となる場所に「太郎河原」「太郎山」などと命名して独自の地図を作ったという。なんと無茶な、とも思う半面、うらやましい。道新社会面。

  • 札響次期常任指揮者グランディ会見

    2024年11月24日

     2025年4月に札幌交響楽団の次期常任指揮者に就任するエリアス・グランディの会見が、Kitaraで開かれた。専務理事、事務局長、2人のコンサートマスターが並び、放送メディアも複数参加して、期待度の高さがうかがえた。
     グランディのスピーチで印象的だったのは、音楽や演奏を人生の「旅」にたとえたくだり。「人生」や「旅」という言葉は先行するインタビューなどでも使われていて、象徴的である。演奏家と聴衆が「一緒に旅をする」「笑って楽しむ。泣くことも一緒に」という言葉から、オーケストラに君臨するのではなく、オーケストラとともに音楽を作り、育てていくという意思が伝わってきた。
     その意思に答えるかのようにコンサートマスターの田島高宏が、札響としてグランディとともに目指したい柱として「ワーグナーをやりたい」「海外ツアーに行きたい」のほか、北海道二期会との『こうもり』にフロッシュ役で出演した小橋亜樹や、クリエイティブオフィスキューとのタイアップを例に「みんなで札幌の文化を盛り上げたい」と宣言していたのが印象的だった。
     もうひとりのコンサートマスター会田莉凡の言葉「札響はリハ初日のクオリティが高いと言われるが、そこから一歩踏み出すことが足りない。それを(グランディは)引き出してくれる。そこまでやっていいんだ、と勝負をかけてくる」もまた、グランディとオーケストラの関係性を象徴していた。
     会見の翌日から始まったリハーサルを経て臨んだ第665回定期演奏会(11月30日、12月1日)のマーラー交響曲第1番は、会田の言葉を裏付けるように、ときに粗野だが圧倒的な熱量で「巨人」を体現した。まるでオーケストラ自体が若返ったような演奏だった。
       □   □   □   
     朝日新聞文化面。詩人の吉増剛造が谷川俊太郎を語っている。〈「ひとりぼっち性」とも呼ぶべきものが谷川さんの詩には、いつもあった。それは「孤独」とも少し違う。原始的で、無邪気で、純粋な魂がそのまま表に出ているような。そんな幼心のようなものが、いつも詩の中心にあったと思います〉。吉増は谷川の「ひとりぼっち性」という点で影響を受けたとも言う。〈その詩からは、「骨の声」が聞こえます〉

  • さっぽろテレビ塔が国有形文化財に

    2024年11月23日

    2021年、古家撮影

     さっぽろテレビ塔が国の有形文化財になる。22日に、国の文化審議会が建造物の登録有形文化財として登録するよう文科相に答申した。テレビ塔は、東京タワーも手がけた耐震構造学者の内藤多仲が設計し、1957年建造。高さ144メートル。1925年建設の釧路・本行寺本堂と旧納骨堂も。道新社会面・札幌圏版。
     Kitaraとびわ湖ホール、山形、大分のホールと連携したオペラ『竹取物語』が12月7日に上演される。沼尻竜典作曲で2014年初演。砂川涼子がかぐや姫を演じ、混成合唱団Baum、HBC少年少女合唱団の石毛博也(白楊小6年)がボーイソプラノで出演する。指揮は阪哲郎、演奏は札幌交響楽団。オペラ団体「Andiamo, Amici!」によるチマローザ『秘密の結婚』が、12月8日にザ・ルーテルホールで上演される。ジョブキタ北八劇場では、12月6〜15日に演劇人育成公演『エンギデモナイ』が上演される。《サタデーどうしん》の文化・エンタメ面。

  • 倉本聰脚本の映画『海の沈黙』

    2024年11月22日

     倉本聰が脚本を書いた『海の沈黙』が22日から全国公開される。映画脚本は『海へ〜See You』以来36年ぶりという。モチーフは65年前の絵画贋作事件「永仁の壺事件」。「鑑定家が美術品として与える価値で美が評価されることは本当にいいのか」との疑問から、長年構想を温めてきたという。若松節朗監督。主なキャストは本木雅弘、小泉今日子、石坂浩二、中井貴一。道新カルチャー面。
     食と映画の祭典「北海道フードフィルムフェスティバル」が22日に開幕。24日まで。ドキュメンタリー映画『北の食景』が24日に東1丁目劇場施設で公開される。クリエイティブオフィスキューと北海道新聞社が製作し、監督は上杉哲也。道新社会面。
     札幌・中央区のト・オン・カフェで本田征爾の絵画・オブジェの個展、西区のMOAアートホールでアイヌ民族の早坂賀道(よしみち)のサケ木彫りの個展が開かれている。道新札幌圏版。

  • 札響の新シーズンプログラム

    2024年11月21日

     道新カルチャー面。札幌交響楽団の2025年度演奏会のプログラム。首席指揮者となるエリアス・グランディは、今年11月定期でマーラーの交響曲第1番『巨人』を披露、就任直後の来年4月は第2番『復活』を取り上げる。題して「マーラープロジェクト」。再来年1月・2月は『さすらう若人の歌』とR・シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』、来年6月定期でR・シュトラウスの交響詩『ドン・キホーテ』を取り上げるのにも注目したい。
    《奏で人・札響》はヴィオラの仁木彩子。桜木紫乃の《居酒屋さくらぎ》は、創作に当たっての心構え。〈紛れもない「小説」が一本仕上がったとき、作者がどんな泥にまみれてたっていいじゃないかと思う。そのときは、全身がバネのように自在に動いている。虚構の舞台で存分に踊ることができる――あとは踊ればいいのだ。〉

  • さよなら、谷川俊太郎

    2024年11月20日

     詩人谷川俊太郎が逝った。11月13日、92歳。多くの人たちが教科書で彼の柔らかな詩に触れ、スヌーピーやチャーリー・ブラウンが活躍するC・M・シュルツ『Peanuts』の邦訳では英語を日本語に橋渡しする技に驚き、(私たち世代はとくに)『鉄腕アトム』の歌詞に胸を躍らせた。私個人も彼のたくさんの詩集を手に入れ、エアチェックしたラジオドラマを繰り返し再生した。仕事でも何度かお会いした。モエレファンクラブ主催のイベント「モエレからうたがうまれる(谷川俊太郎さんを迎えて)」や、穂別(現むかわ町)で行われた「北の詩・森のステージ」の夜。道立近代美術館で開かれた「パウル・クレー展」のために、原稿依頼に世田谷の自宅を訪ねた日のこと。黄色い箱入りの詩集『生きる』を思い出し、小室等が歌う『いま生きているということ』を深夜に聴く。喪失感は大きい。けれども、私たちのもとには彼が遺した膨大な詩がある。詩集がある。言葉がある。それらを読み続ける行為こそ、彼を最大限に悼むことにつながると前向きに考えたい。
       □   □   □
     20日の各紙は、いずれも1面に訃報を掲載した。気になって入手した5紙の扱い。過分な情報ではあるけれど。
     北海道新聞 1面腹)谷川俊太郎さん死去 92歳 詩人「二十億光年の孤独」
           社会面)ジャンル超えた異端児 谷川さん死去 あらゆる題材 詩に
               道内関係者 悼む声 穂村弘さん「覚悟していたが喪失感」
               公認カフェ店主「悲しみ押し寄せ涙」
     朝日新聞  1面トップ)谷川俊太郎さん死去 92歳 戦後現代詩を代表
           文化面)谷川俊太郎さんを悼む 佐々木幹郎寄稿
                蘇る「おとし物」待ち望んだ芝生のステージ
           社会面)軽やかに 詩を飛び越え 谷川さん 生と死 愛と幸せ やさしく表現(評伝)
               言葉疑い続けた 心の匂いと風景紡ぐ 歌人や歌手ら悼む声
               100超の校歌「子どもの道しるべ」
           北海道面)谷川さんの校歌「宝物」 札幌開成高出身の古川さん
                 詩への思い守る「俊カフェ」
     毎日新聞  1面左肩)谷川俊太郎さん死去 92歳 「二十億光年の孤独」
           社会面)谷川さん死去 純度の高い魂の光 詩人仲間「稀有な人」
               現代詩 一級の創作(評伝)
     読売新聞  1面腹)谷川俊太郎さん死去 92歳 「二十億光年の孤独」
           文化面)谷川俊太郎さんを悼む
               平田俊子 国を越え 子どもにも大人にも愛されて
               池澤夏樹 高揚した時も 戸惑った時も ぼくたちは 彼を読んだ
           社会面)詩を書くということ 70年 谷川俊太郎さん 人間、宇宙、愛 リズムよく
               素直な思い 日本語に込め(評伝)
     日本経済新聞 1面腹)谷川俊太郎さん死去 92歳 詩人「二十億光年の孤独」
            社会面)平易な言葉で深遠な世界 谷川俊太郎さん死去 「俗は大事」貫く(評伝)

  • 作家加藤幸子のお別れ会

    2024年11月19日

     道新カルチャー面。3月30日に亡くなった札幌出身の芥川賞作家・加藤幸子のお別れ会が、東京都内で開かれた。道新文学賞選考委員を共に務めた文芸評論家の川村湊、作家の河﨑秋子らが別れを惜しんだ。加藤は1983年に『夢の壁』で芥川賞を受賞。第61回文芸賞(河出書房新社)は、札幌在住の待川匙『光のそこで白くねむる』と松田いりの『ハイパーたいくつ』。

  • 原田康子『挽歌』論

    2024年11月17日

    道新《読書ナビ》の「ほっかいどう」は、韓国出身の日本近現代文学研究者・南富鎭(ナン・フジン)による『原田康子の挽歌』(作品社)。原田文学を「喪失と成熟」という視点で捉え直した。『挽歌』の意義や原田文学研究は軽視されてきたと見る。重要な指摘。
      □  □  □
     朝日新聞文化面の谷川俊太郎《どこからか言葉が》の作品題は『感謝』であった。このタイトルと詩句にドキリとした。〈目が覚める/窓の紅葉が見える/昨日を思い出す/まだ生きてるんだ//今日は昨日のつづき/だけでいいと思う/何かをする気はない//どこも痛くない/痒くもないのに感謝/いったい誰に?//神に?/世界に? 宇宙に?/分からないが/感謝の念だけは残る〉

  • 森大翔が2ndアルバム『Let It Grow』

    2024年11月16日

     羅臼出身のギタリストでシンガー・ソングライターの森大翔(やまと)が、2枚目のアルバム『Let It Grow』をリリース。札幌厚別高1年のときヤング・ギタリスト・オブ・ザ・イヤーで優勝した。デビュー曲『日々』は、谷川俊太郎の詩集『二十億光年の孤独』にインスピレーションを得て作詞したという。「デビュー前はギターしか弾けなかったので、粘り強くはいつくばって毎日歌や曲作りなどにトライしてきたことが少しずつ形になってきた」。《ステージ》は、イプセンを原作とし、斎藤歩が脚本・演出・音楽を担当した『民衆の敵』。民主主義とはなにかを考えさせる内容。主役の医師ストックマンは泉陽二。山田航の《札幌零景》は刑務所裏の記憶。サタデーどうしん《文化・エンタメ》。

  • ディマシオの絵画がギネスに

    2024年11月15日

     新冠町の旧太陽小校舎を活用した「太陽の森 ディマシオ美術館」に展示されているジェラール・ディマシオの巨大な絵が、単一画家による世界最大の油彩画としてギネスブック認定された。1995〜98年作で、幅27メートル、高さ9メートル(243平方メートル)。同館の運営は大阪のミタカ。道新社会面、朝日新聞北海道面にも。
     道新カルチャー面。劇作家・演出家の平田オリザが2日に札幌で講演。他者を理解する大切さについて語った。〈これからを生きる若者たちに必要なのは相手への好奇心と、自分の国の文化を押し付けない謙虚さ〉。シンパシー(同情)からエンパシー(平田「同意できなくても理解に努めること」)へ、とも。

  • 小樽芸術村 将来10館体制に

    2024年11月14日

     似鳥文化財団が運営する小樽芸術村について、似鳥明雄ニトリホールディングス会長が、将来的に10館体制にする方針を明らかにした。5館目は来年5月に浮世絵を展示する施設として開館するという。道新社会面。
     道新カルチャー面。知内出身の北島三郎が、5日に東京で開かれた歌謡祭「令和・歌の祭典2024」で1年4ヶ月ぶりに観客の前で生歌唱した。10月に米寿を迎えた。札幌の劇団「弦巻楽団」が、アーロン・ソーキンの『ファーンズワース』を国内初演する。さっぽろアートステージは20周年を迎えて、記念イベントをチカホで開いた。

  • 標茶で消防の「竜吐水」復元

    2024年11月13日

     標茶町で明治期に使用されていたポンプ器具「竜吐水」を復元した。放水可能な竜吐水は珍しいという。12月から標茶町博物館「ニタイ・ト」で展示される。道新社会面。

  • 北海道博物館で「北海道のお葬式」展

    2024年11月12日

     北海道博物館で道内の葬儀をテーマにした「北海道のお葬式」展が開かれている。アイヌ民族と本州からの移住者の、葬儀にまつわる同館収蔵資料を展示している。《中村和恵の考えるピント》は石北線への愛を語る。《音楽会》は、古希を迎えたフルート奏者阿部博光のフルート協奏曲の夕べ。評は八木幸三。道新カルチャー面。

  • 平野啓一郎が語るハン・ガン

    2024年11月10日

     今年のノーベル文学賞を受賞した韓国作家ハン・ガンについて、平野啓一郎が朝日新聞文化面で語っている。2016年にブッカー賞を受賞した『菜食主義者』は「短編連作のような手法が採用され、周囲の人間との関わりが、多視点的に、多層的に描かれている」。『少年が来る』は光州事件を主題とした長編。「傷ついた人間の痛みを、宛ら言葉に移し替えてゆく繊細な文体は、静かでありながら、決して屈することなく、最後まで語り抜こうとする意志に支えられている」

  • 第11回新千歳空港国際アニメーション映画祭

    2024年11月09日

     11回目となる新千歳空港国際アニメーション映画祭が1〜5日に開かれた。長編のグランプリは、フランスのボリス・ラベ監督の『Glass House』、長編の審査員特別賞は押山清高監督『ルックバック』。短編はポーランドの『Zima』。道新カルチャー面。
     シベリア抑留文化賞に室蘭出身の石村博子が選ばれた。NPO法人日本サハリン協会の会員で、『脱露 シベリア民間人抑留、凍土からの帰還』(KADOKAWA)を書いた。道新社会面。

  • 瑞泉鍛刀所に15年ぶり新弟子

    2024年11月08日

     国内唯一の企業内鍛刀所の日本製鋼所M&E室蘭製作所「瑞泉鍛刀所」に、15年ぶりで新弟子が入った。室蘭工大大学院を修了した笹本祥汰が入社し、刀匠になるための修業を始めた。
    『札幌解体新書 世界一やさしい札幌の教科書』(えぞ財団)が刊行された。2021〜22年に行ったトークイベントから選び、街歩き研究家和田哲が編集した。都市計画・まちづくりから、文化・芸術、行政まで5テーマで紹介している。いずれも道新社会面。
     道新カルチャー面は、AIが発達した時代に、現実と仮想空間の境界があいまいになる中で、社会の格差や差別など多様な問題を描く。映画『本心』の主演池松壮亮と原作者平野啓一郎の対談。平野〈今の世の中、自分じゃない人を優しく見守るというところが欠けている気がして。苦境にある人は助けたいと思う、そこに社会の希望があるのではと〉

  • マオリで民族のことを考える――円城塔

    2024年11月07日

     道新カルチャー面。円城塔の《西の国から》は、マオリで民族のことに思いを巡らせている。〈異なる文化集団が衝突したとき、なにがどうなっていくのかに定まった行方などはない。理不尽がまかりとおることも多いが、少しずつでも過ちが認識されていくこともある。/南極からの嵐を窓の外に見ながら、こうした主題で、北海道を舞台とした小説を書けるのではないか、とふと思った〉。三角みづ紀の《道内文学 詩》は、フォレッツェル、澄川智史、阿部嘉昭の詩集を取り上げた。川瀬賢太郎=札響のローマ三部作、元札響の大森潤子による北星学園大チャペルでのバッハのヴァイオリンソナタ3番とパルティータ3番の記事など。
     朝日新聞北海道面は、白い恋人パーク別館コレクションハウスで開催中の「SAPPORO MANGA PARK」を紹介。北海道にゆかりの『ゴールデンカムイ』『プリンシパル』『銀の匙 Silver Spoon』『うしおととら』などから、アレクシエーヴィッチの『戦争は女の顔をしていない』をコミック化した作品まで展示している。

  • 旭川ゆかりの安部公房生誕100年

    2024年11月06日

     旭川(東鷹栖町)をルーツのひとつとする生誕100年の安部公房の特別展「安部公房展―21世紀文学の基軸」が神奈川近代文学館で開かれている。展覧会の編集委員を務めた評論家の三浦雅士は「世の中が変わると、人間の意識の流れはどうなるかといったことに向き合い、常に時代を先取りするような、新しい発想と先見性を持っていた」と安部を評す。政治学者の苅部直は「彼が描く匿名性には、自由と危険性の両方が含まれていた。SNSの普及によって、私たちはそうした両面の可能性を、現実のものとして、いま目の当たりにしている」という。「日本の作家の多くは、故郷や原風景を持ちながら書く。すると、読者との共感が生まれやすい。だが、共感は時代の価値観とともに移ろいやすい。(満洲国での体験で故郷の)原風景を失った安部の作品は、同時代にのみ通用する共感には依存しないがゆえに、普遍性を持ち得たとも言える」とも述べている。朝日新聞文化面。

  • 「場所」をテーマにした表現

    2024年11月04日

     CG作品などを手がける3人によるトークイベント「クリエイターが紡ぎ出す場所」が、札幌市民交流プラザで3日に開かれた。学生CGコンテストの受賞者・菅野歩美、平川紀道、佐藤壮馬が参加した。「場所」をテーマとする表現などについて語り合った。道新札幌圏版。
     日本画家の上村淳之が1日死去した。

  • 別海高校野球部モチーフに『白球フロンティア』

    2024年11月03日

     別海高校野球部の歩みをたどる『白球フロンティア』(エイチエス)を、東京在住のスポーツライター田口元義が刊行した。部員不足で廃部寸前だった部が、復活して昨年全道大会で4強に入り、今春の選抜に出場するまでを「開拓史」としてまとめた。死刑囚の作品を展示する「死刑囚表現展」が2日から東京で始まった。展覧会は、大道寺将司元死刑囚の母で、死刑廃止を訴えた幸子(故人)が提供した資金などによる基金で運営している。民族問題研究者・編集者の太田昌国(釧路出身)、川村湊、香山リカらが審査に関わっている。道新社会面。

  • 札幌は「人はいないが街をつくる」の発想で生まれた――門井慶喜

    2024年11月02日

     北海道新聞に小説『札幌誕生』を連載した門井慶喜がエッセイを寄せている。札幌という街は、「人が住んで街になる」ではなく「人はいないが街をつくる」。〈こんな自然の理に反する、頭でっかちな発想を持ち込んで、いったいぜんたい、(どうなるんだろう)〉との疑問が『札幌誕生』を書かせた、と振り返る。小樽出身のジャズピアニスト野瀬栄進が26日に Kitaraでコンサート。道新カルチャー面。

  • 出版梓賞に亜璃西社、寿郎社

    2024年11月01日

     出版梓会は1日付で、優れた出版活動が認められた出版社に贈る出版文化賞に亜璃西社、新聞社学芸文化賞に寿郎社を選んだ。同じ年に道内出版社ふたつが同時受賞するのは初めて。道新社会面。
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     北海道新聞社が1日、大通西3から大通東4に移転した。

  • 北海道短歌賞『榾の火』、俳句賞『木賊抄』

    2024年10月31日

    第39回北海道新聞短歌賞は本賞が三上糸志=東京=の『榾(ほだ)の火』、佳作は井口可奈=旭川=の『わるく思わないで』。俳句賞は本賞が中西亮太さん=東京=の『木賊抄(とくさしょう)』、佳作は籬朱子(まがきしゅこ)=本名非公表、札幌=の『未完』を選んだ。
     道新カルチャー面は、本郷新記念札幌彫刻美術館が主催したアイヌ民族の彫刻家・藤戸竹喜の作品と魅力について学芸員が語る講座を紹介。藤戸のどんな言葉が学芸員らに響いたかがうかがえる。道立旭川美術館で開催中の「生誕90周年記念 藤戸竹喜の世界展」を監修した五十嵐聡美、札幌芸術の森美術館の佐藤弥生、旭川美術館の津田しおりが、吉崎元章館長が話した。《音楽季評》は今回で終了。三浦洋が、反田恭平率いるJNPのKitara公演、文屋治実、澤和樹らの弦楽六重奏曲コンサート、小林道夫のゴルトベルク変奏曲チェンバロ演奏会を取り上げた。
     伊藤氏貴の《文芸時評》は、新人賞受賞作に着目した。ハン・ガンのノーベル文学賞受賞を、直木賞作家の一穂ミチが論じている。見出しは「痛みの中の、か細い希望」。ギャラリー創で開かれている中島洋個展「水の声 土の記憶」が紹介された。
     

  • 北海道新聞文学賞 詩部門は『そらまでのすべての名前』

    2024年10月30日

     第58回北海道新聞文学賞が30日の紙面で発表された。創作・評論部門は佳作2点。伊達生まれの大平しふる『かなしみ』と、札幌生まれの齊藤ゆずか『さよなら、ライトブルー』。詩部門は、張文經(ちょう・ぶんけい)『そらまでのすべての名前』が本賞、清水博司『せせらぎさがし」が佳作受賞となった。

  • 公人は反対者とともに統治する――内田樹

    2024年10月28日

     衆院選明けの紙面は当然ながら選挙一色。道新や朝日新聞を読む限り、自公政権が大敗を喫したことを国民からの強い批判の表れとし、与野党ともに改めるべしという論調だが、自民党政治の金権体質という「文化」が一掃されることなく、むしろ温存されたことを見逃したくない。
     あえてストレイトニュースではない記事を選ぶと、朝日新聞の鷲田清一《折々のことば》。思想家・武道家の内田樹のXへの投稿〈公人は「敵とともに生きる。反対者とともに統治する」のが仕事です。〉を掲げた。自分に投票しなかった人を含めた有権者を代表しなければならない当選者の不満。一番マシと思われる人に入れるしかない有権者の不満。それらが一対になって民主政は成り立つとの趣旨。

  • 斎藤歩に北海道新聞文化賞

    2024年10月27日

     北海道の演劇界を長年引っ張ってきた斎藤歩が、北海道新聞文化賞(社会部門)を受賞した。役者、演出家、プロデューサー、北海道演劇財団理事長と重責と期待を担ってきた。まだまだ現役でいてほしい。学術部門は北大のヒグマ研究者・坪田敏男、経済部門は上川大雪酒造株式会社。
     来日40年、日本とスロバキアの友交親善に力を尽くしてきた橋本ダナが、在スロバキア日本大使館から在外公館長表彰を受けた。北大名誉教授の橋本聡との結婚を機に来日し、現在は北大でハンガリー語を教えている。11月12日にKitaraで開かれる演奏会形式のオペラ公演『ラ・ボエーム』ではナレーションを担当する。道新ひと2024。

  • 九州大に吉岡斉の科学技術史アーカイヴ

    2024年10月26日

     科学史家で脱原発運動を先導した吉岡斉(1953〜2018)が残した膨大な資料が、遺族から九州大学に寄贈され、大学文書館で一般公開されている。「政策決定は合理的かつ公正であるべきだ」と説き、「原発の劣った特性は無視し、優れた特性のみを列挙」「原発はクリーンだという言説はブラックジョーク」などの鋭い言葉を残した。目録が完成した書籍約1万2000冊については「吉岡斉科学技術史文庫」として公開された。道新科学面。
     平取町で24日、景観保護に取り組む全国自治体などによる大会が開かれた。参加者は「工芸品などの伝承活動そのものも文化的景観を構成する重要な要素」と述べた。道新社会面。
     新千歳空港国際アニメーション映画祭が11月1日から開かれる。来年5、6月に札幌でも公演がある東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』の制作発表が東京で。道新カルチャー面。

  • 法邑美智子が自叙伝を刊行

    2024年10月25日

     毎日新聞北海道面。ACAシンポジウム「北海道の芸術文化を 掘る・残す・活かす」開催の記事掲載。
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     ギャラリー茶廊法邑のオーナー法邑美智子が自叙伝『美智子おばさんの ひとりごと』を自費出版した。俳優・アーティストの柴田智之が自作・演出の『ジロトマッテル』を25日からカタリナスタジオで上演する。さっぽろ10区新聞。
     黒板アート甲子園の黒板の部で、帯広南商業高美術部院の作品が優秀賞を受賞した。作品は5頭の輓馬がニンジンを食べる姿をとらえた『かわいいお顔が台無しよ!』。
     日本を代表する美術評論家・高階秀爾が17日、92歳で死去した。

  • 大平まゆみが絵本『きりんのうた』を刊行

    2024年10月24日

     筋萎縮性側索硬化症(ALS)で闘病中の大平まゆみが、絵本『きりんのうた』(北海道新聞社)を刊行する。元札響コンマスの大平は、2019年にALSを発症して退団して闘病中。音声合成ソフトボイスターで、AIR-G’のラジオ番組に出演している。動物園の園長が、戦地から逃れたキリンを迎えるに当たって、バイオリンの音が役割を果たし、キリンの歌が生まれるという物語。絵本作家ひだのかな代が絵を担当。音楽は大平の指示で、札幌出身の東京芸大大学院生山本真幸が編曲した。大平は「すべての子どもたちに平和と命の大切さを伝えたい」という。10月26日発売。道新社会面。

  • ゆうばり国際映画祭が24日開幕

    2024年10月23日

     ゆうばり国際ファンタスティック映画祭が24日から27日まで、夕張市と栗山町で開かれる。34回目。過去の受賞者への賞金未払いなどがあり、開催が危ぶまれたが、状況を知った映画人らが有志の会を作って支えたという。朝日新聞北海道面。
     元ホクレン職員の富田義昭が『北の大地の開拓・農業・農業団体の原点を探る』を自費出版した。農業の視点から、開拓や農業団体の歴史をまとめたもの。道新経済面。
     PMF修了生らが22日、札幌市立光陽小で木管五重奏の演奏を披露した。札幌市の事業「学校DEカルチャー」の一環。道新札幌版。
     富良野演劇工場の工場長を20年以上務めた太田竜介が独立し、活動の幅を広げている。倉本聰がかつて主宰した富良野塾の10期生。脚本・演出などを手掛けるアールズリンクを富良野で設立した。道新社会面。

  • 響文社廃業に続き柏艪舎破産

    2024年10月22日

     札幌の出版社・柏艪舎の破産を受けて、元北海道読書新聞社編集長の中舘寛隆が札幌の出版界を展望している。昨年の響文社、そして今回と、いずれも文芸書を柱に掲げ、そして力尽きたと分析した。一方で、亜璃西社、寿郎社、北海道出版企画センター、北大出版会などの個性的な出版活動にも触れている。第98回道展が開催中。最高賞は札幌の橋詰博『レクイエム』。大山のぶ代追悼は声優の野村道子。
    《まんが最前線》の筆者は阿部幸弘。斎藤歩脚本・演出の『民衆の敵』が11月8〜14日に上演される。いずれも道新カルチャー面。
     朝日新聞文化面。作家の上田岳弘が、安倍晋三暗殺を受けた日本社会の混乱や言論を論じている。近づく衆院選に向けた寄稿と読める。キーワードは「影響力」。国と国家予算の決定権を持つ「小集団」が、日本社会に大きな影響を与えることになる「古びた」政治システムを批判していると読める。

  • 前田和男『炭鉱の唄たち』

    2024年10月21日

     北海道新聞読書ナビ。《ほっかいどう》は前田和男『炭鉱の唄たち』(ポット出版プラス)。炭坑節、常磐炭坑節、北海盆唄など炭鉱唄のルーツに迫ったノンフィクション。炭鉱に捧げる挽歌として吉田拓郎『落陽』が取り上げられているのもユニーク。

  • 越後妻有トリエンナーレに深澤孝史参加

    2024年10月19日

     道新・サタデーどうしんは「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」がメイン。25回目となる今回は、山の神信仰などの文化がある津南町秋山郷でインスタレーションなどによる作品『アケヤマ―秋山郷立大赤沢小学校−』に、札幌の深澤孝史が監修でかかわった。
     文化・エンタメでは、札幌在住のミュージアムグッズ愛好家・大澤夏美を取り上げた。足寄町生まれ、札幌市立大でデザインを学んだ後、北大大学院博士課程で博物館経営論を学んでいる。《展覧会》は、森本めぐみ「土器と付着物」。山田航《札幌零景》は幻の街中華。

  • 『ぐりとぐら』の中川李枝子死去

    2024年10月18日

     東日本大震災後の福島県の農家を描いた映画『心平、』が道内でも公開された。原発事故により離農を余儀なくされた父、知的障害がある息子、その妹の物語。主演の心平は、苫小牧出身の奥野瑛太。伊達出身の演歌歌手・伊達悠太は新曲『サバイバル・レイディー」を発表。道新カルチャー面。
     画家だった妹の山脇百合子と『ぐりとぐら』を共作した札幌出身の児童文学者・中川李枝子が14日に死去、89歳だった。
     俳優の西田敏行が17日に死去、76歳。

  • 池澤夏樹「アーカイブは忘却との闘い」――ACAシンポジウム記事

    2024年10月17日

     北海道芸術文化アーカイヴセンター(ACA)のシンポジウム「北海道の芸術文化を 掘る・残す・活かす」開催の記事が、北海道新聞カルチャー面に掲載された。池澤夏樹の基調講演をクローズアップして「アーカイブとは忘却との闘い」の見出しがついた。
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     道東在住の作家、久栖博季が初の単行本『ウミガメを砕く』(新潮社)を刊行。新潮新人賞受賞に次いで、三島由紀夫賞候補にもなった新鋭。表題作は先住民族のアイヌ民族、「彫刻の感想」はウイルタをモチーフにした。道新カルチャー面。飯沢耕太郎の細江英公追悼、スロバキア国立歌劇場『ラ・ボエーム』の告知。《奏で人 札響》は、クラリネットの新入団員原田侑來。

  • 倉本聰原作・脚本 映画『海の沈黙』

    2024年10月14日

     倉本聰(89)が原作・脚本を手がけた新作映画『海の沈黙』の完成会見が札幌で開かれた。構想60年という。絵画の贋作問題に、作品の美的価値をからめた物語。11月22日公開。朝日新聞北海道面。

  • 「詩的散文」ハン・ガンの文学

    2024年10月13日

     韓国作家ハン・ガンのノーベル文学賞受賞を受けて、翻訳家・鴻巣友季子と柳原孝敏・東大教授が朝日新聞文化面で対談している。アジア人女性で初、韓国人で初、1970年代生まれで初。「詩的散文」と呼ばれる作風が評価された。鴻巣「大きな真実を書くときには詩の言葉が必要なんだと思います。散文では書けないものもある」柳原「今年文庫化され話題になったガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』も、かなり死を意識しているようなところがあります」
     

  • 富良野出身、山本小春がパリ・オペラ座バレエで活躍

    2024年10月12日

     パリ・オペラ座バレエ団に所属する富良野出身の山本小春が、主要な役に抜擢されている。主に群舞を担当する「カドリーユ」ながら、3〜4月公演の『ドン・キホーテ』で主要な役キューピッドのひとりに選ばれた。6〜7月にはピナ・バウシュのコンテンポラリー作品『青ひげ』で主役ユーディットを務めた。道新カルチャー面。

  • 燃料費、物価高…部活動の遠征費を直撃

    2024年10月11日

     燃料高や物価高で、子どもの部活動など文化活動の遠征費に重い負担がのしかかっている。全国大会に出演するため、クラウドファンディングで寄付を募るケースも目立つ。フェリーの燃料代が上がっているとのこと。道新札幌版。
     道新カルチャー面。宝塚歌劇団の娘役で、月組副組長も務める札幌出身の白雪さち花が、札幌公演に初参加した。《ステージ》は白雪が出演した宝塚の『琥珀色の雨にぬれて』。
     ノーベル文学賞は韓国人、アジア人女性で初の受賞、ハン・ガン(韓江)。受賞理由は「歴史的トラウマに立ち向かい、人間の命のはかなさをあらわにした強烈な詩的散文」。小説「菜食主義者」が代表作。2005年に韓国で最も権威がある李箱文学賞を受賞した。

  • 夕張市、国際映画祭を後援せず

    2024年10月10日

     日程変更や賞金未払い問題などで揺れる「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」への名義後援を、夕張市が断ったことが明らかになった。さまざまな運営問題が表面化して基準に合わなくなったといい、今後の助成金申請にも差し支える可能性がある。市民有志主導の映画祭はいよいよ窮地に立つ。道新社会面。

  • マンガミュージアムのモデル施設 白い恋人パークに期間限定開設

    2024年10月09日

     札幌市は12日、マンガミュージアムのモデル施設「サッポロ・マンガ・パーク」を、西区宮野沢の白い恋人パーク「コレクションハウス」内に開設する。2ヶ月間設置し、文化振興や観光客誘致などの効果を検証する。ミュージアムは北海道ゆかりの漫画家の作品を集める構想。道新札幌版。
     札幌国際短編映画祭が11〜14日に開かれる。招待作やコンペ参加作など90本以上を上映する。道新札幌圏版。
     朝日新聞北海道版は、第10回児童ペン賞で大賞に選ばれた有島希音『北緯44度 浩太の夏――ぼくらは戦争を知らなかった』を紹介している。

  • ACAシンポジウム報告(概要版)

    2024年10月09日

    ACAシンポジウムのパネル討論(写真:仮屋志郎)

    開催:2024年10月6日 北翔大学札幌円山キャンパス

     北海道芸術文化アーカイヴセンター(ACA)は10月6日、シンポジウム「北海道の芸術文化を 掘る・残す・活かす」を、北翔大学札幌円山キャンパスで開催しました。同大学北方圏学術情報センタープロジェクト研究美術グループとの共同主催です。114人の参加を得て、アーカイヴ(記録・保存)とは何か、地域の歴史や文化を記録にとどめていく意義と可能性を、沖縄、長野、宮城(仙台)でそれぞれ市民や公的機関が取り組むアーカイヴの先例に学びながら話し合いました。同じ会場のギャラリーAで開催した「北海道のアーカイヴ事例ポスター展」も好評を得ました。
     ここでは「シンポジウム速報」として、登壇者の発言の要点のみを報告します。全記録は2025年1月に刊行を予定する《ACAライブラリ01》に掲載します。(文責・古家)

     この日登壇したのは、池澤夏樹さん(作家、NPO法人あまくま琉球理事)、甲斐賢治さん(せんだいメディアテーク アーティスティックディレクター=オンライン参加)、森いづみさん(県立長野図書館長)、吉崎元章さん(本郷新記念札幌彫刻美術館長)。コーディネーターはACA代表の古家昌伸が務めました。

    ■ACAの自己紹介〜データベースのデモンストレーション 古家

    — 2024年6月19日に設立。それまでの経緯と理念
    — 活動の柱は芸術・文化に関する事象(イベント)や資料・書籍を記録していくこと
    — いずれは芸術・文化クロニクル(年表)やさまざまなプロジェクトも
    — データベースのデモンストレーション
    — ACAの活動を維持するため「三つのエール(応援)」のお願い

    ■基調講演 地域のアーカイヴ〜沖縄と北海道 池澤夏樹さん

    — アーカイヴとはなにか。「忘却との戦い」である
    — 沖縄はアメリカと日本のやりとり(=公文書)の実物を確保して歴史を記録する
    — 英国の歴史学者E・H・カーの言葉「歴史とは過去との対話である」
    — アーカイヴは「歴史と語り合う・対話する」ことを支える
    — 沖縄のアーカイヴ「あまくま琉球」は、過去を知って未来に進む姿勢の表現と言える

    ■事例紹介 信州の地域文化資源をつなぐ知の広場「信州ナレッジスクエア」 森いづみさん

    — 図書館は市民が社会で積極的な役割を果たすための地域の情報センターである
    — 県立の歴史館、美術館、県と大学の図書館が協力する「信州知の連携フォーラム」
    — デジタルアーカイヴ「信州ナレッジスクエア」のシステム基盤は県立長野図書館に
    — 各館が所蔵するコンテンツのほか、地元出身ジャーナリストの日記公開や区誌編さんで発掘された地域資料も収録
    — 公的機関と地域をつなぐ役「文化資源コーディネーター」が必要

    ■事例紹介 市民と震災を考える「わすれン!」の活動 甲斐賢治さん[オンライン]

    — 生涯学習施設の役割として、震災に伴うさまざまな「隔たり」を行き来する
    — プロジェクトよりプラットホーム〜3.11をわすれないためにセンター誕生
    — 市民が震災の経験を語り、録音する。著作権の処理・管理も重要
    — アーカイヴイングの状況を検討する「哲学カフェ」
    — コミュニティが管理する草の根的アーカイヴ、動的な存在

    ■パネル討論 地域の芸術・文化アーカイヴ その意義と可能性  — 池澤さん、森さん、甲斐さん、吉崎さん、古家

    登壇者の発言から抜粋
    — アーカイヴは「将来への責任」でもある
    — 地域の記録を自分たちが残していくべきだ、という意志や使命感が必要
    — 自分たちの歴史を未来につなぐ気持ちがあれば、公的機関はお手伝いできる
    — ACAが(市民が記録していく活動の)入り口の機能を果たせるかどうか
    — 市民が共通して使えるシステム(プラットホーム)を「使ってください」ではなく、自ら使いたくなる工夫が必要
    — どんなものを残すのか、価値判断の是非はどうあるべきか
    — アーカイヴの存在について社会のコンセンサスはまだ不十分ではないか
    — アーカイヴに蓄積された「文化資源」を、どう利活用するかが難しい

  • 芸術拠点・創成イーストの成り立ち

    2024年10月07日

     道新札幌圏版《ディープに歩こう》第13部は創成イースト未来編。「⑦アートのるつぼ」として、500m美術館の成り立ちをまとめた。現代アーティスト端聡が、前札幌市長の上田文雄から地下通路活用のアイディアを求められ、創成イーストが芸術拠点となっていったとしている。
     道新カルチャー面。《武田砂鉄の考えるピント》は、社会での小さいけれど見逃せない事象を放置してしまう心情について。安田菜津記の《社会時評》は、進展なき長崎被曝体験者訴訟。《あにけん!》は「アニメータースキル検定」。五十嵐秀彦の《道内文学 俳句》は辻脇系一追悼。

  • ACAシンポジウム「北海道の芸術文化を 掘る・残す・活かす」開催

    2024年10月06日

     われわれ北海道芸術文化アーカイヴセンター(ACA)が企画した初の対外的な事業、ACAシンポジウム「北海道の芸術文化を 掘る・残す・活かす」が、6日に北翔大学札幌円山キャンパスで無事終了しました。登壇者の池澤夏樹さん、甲斐賢治さん(せんだいメディアテーク アーティスティック・ディレクター)、森いづみさん(県立長野図書館長)、吉崎元章さん(本郷新記念札幌彫刻美術館長)、ありがとうございました。北翔大学の林亨教授ほか、協力いただいた関係者のみなさん、お疲れさまでした。シンポジウムの成果は、近くACAのウェブサイト(https://ac-archives-h.site/)で速報するほか、来年1月にも刊行予定の《ACAライブラリ01》で全記録を公開します。
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     札幌を拠点に活動するジャズシンガー黒岩静枝が、歌手生活60年目を迎えた。ススキノで歌ううち、東京のバンドマスターから声がかかってベトナムの米軍キャンプなどで歌った。帰国後、ススキノの「コンコルド93」の専属歌手となり、36歳からジャズバー「DAY BY DAY」を経営しながら歌ってきた。道新社会面。
     朝日新聞北海道面には、樺太アイヌ民族の希少な装飾品「ホホチリ」が、所有していたドイツ・ケルンの博物からウポポイへ寄託された。世界で数点、国内では北海道博物館に次ぐ2例目という。子どもたちが髪につけたとされる。

  • 男声合唱団ススキーノ20周年

    2024年10月05日

     札幌の男声合唱団ススキーノが結成20周年記念コンサートを、11月24日に札幌文化芸術劇場hitaruで開催する。池辺晋一郎に委嘱した新曲『昼夜、想う中也――中也の5つの詩』を演奏する。ススキーノの創設を報じたのはAtoCジャーナル子であった。20年前の最初の練習を取材に行き、指導者の長内勲に「あなたも歌いなさい」と発声練習させられたのをよく覚えている。
     札幌の劇団Words of heartsは17〜20日にコンカリーニョでオリジナル劇『博士と過ごした無駄な毎日』を上演する。太平洋戦争末期に江別で木製戦闘機「キ106」が作られていた史実に基づく。《穂村弘の迷子手帳』は「或る夜の喧嘩」。いずれも道新カルチャー面。

  • 釧路出身・加藤迪が劇団四季公演で主役

    2024年10月04日

     劇団四季が10日から道内4カ所でミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター[エルサレム・バージョン]』を上演する。主役のジーザスを釧路出身の劇団四季団員、加藤迪(すすむ)が演じる。高校3年のとき、四季の釧路公演を見て「この世界に飛び込もう」と決意した。《金曜シネマ》は『HAPPYEND』。

  • 近美の新築見送り?!

    2024年10月03日

     道新1面トップに「近代美術館 新築見送り」というショッキングな記事。鈴木直道知事が、道議会予算特別委員会で表明した。改修を前提に整備方法を検討するという。現美術館の建物の歴史的価値を重視した、という説明だが複雑だ。確かに現在の近美は、日本建築学会の北海道建築賞を受賞している(太田実設計)。しかし、50年近く経って老朽化が目立つ建物を直し直し使う堅実さと、北海道にこれまでなかった斬新な美術館を待望する気持ちを天秤にかけると、個人的には首をかしげてしまう。近美のリニューアル話が出てからこのかた、議論が低調だったのは確かだ。後者のような期待を抱く層が「待ってました」とばかりに、新美術館への夢を語り合う――そんな場面は、ほぼなかったのではないか。とはいえ前者のような、歴史的建築物としての近美の価値を強く訴え「取り壊しに反対する」美術関係者にも出会ったことはない。議論が低調なのを見越して、道が一番安上がりな整備案を誘導したようにも見えてしまうのは、うがちすぎだろうか。何年後かに改修されて再オープンする近美に向き合って、果たしてどれだけの人がワクワクするのか。いち個人としては、残念でならない。道新札幌版に、札幌市図書・情報館で「建築のお仕事」を紹介する催しが開かれているのが、ちょっと皮肉にも見える。建築のお仕事って何?
     北大アイヌ・先住民研究センターの石原真衣准教授と大阪大大学院人間科学研究科の村上靖彦教授が『アイヌがまなざす 痛みの声を聴くとき』(岩波書店)を刊行した。アイヌ民族にルーツを持つ人へのインタビューで、日本社会を分析した。石原准教授は「研究者やマスコミは(自分の意図することを語ってくれる)お気に入りのアイヌを選び、多数派の(和人)に都合のいい形で消費しており、多数派はアイヌの困難に気づけないままになっている」。道新社会面。

  • 唐沢俊一が死去

    2024年10月02日

     札幌出身のコラムニストで、サブカルチャー評論家の唐沢俊一が9月24日、66歳で死去した。

  • 教文リニューアルオープン

    2024年10月01日

     札幌市教育文化会館が10月1日にリニューアルオープン。大ホールの1100席をすべて更新し、エレベーターを設置しバリアフリー化した。道新社会面。

  • 札幌演劇シーズン2024が閉幕、7000人来場

    2024年09月13日

     札幌演劇シーズン2024が8月31日で閉幕。9演目、74ステージに約7000人が来場した。《金曜シネマ》は『ぼくのお日さま』。道内の田舎町が舞台で、赤井川村など7カ所でロケが行われた。

  • 札幌市文化芸術基本計画 アーツカウンシルの設置を検討

    2024年09月12日

     札幌市が文化芸術基本計画を改定した(2024〜28年度)。第三者機関「アーツカウンシル」の設置検討や、課題整理に向けた実証実験に取り組むことを盛り込んだ。教育や福祉など芸術以外の分野の課題解決に芸術を役立てることを目指す。実証実験として、ダンスを障害者福祉施設や保育所で行う団体や、展覧会で廃棄される資材を他のイベントに提供する団体など6団体に補助金を出す。札幌市はこれまで「アーツカウンシルは失敗している事例も少なくない」として積極的ではなかったが、やっと基本計画に位置付けた形。とはいえ設置の「検討」。先は長い。道新札幌版。
     道新カルチャー面。上野の森美術館で開かれている現代美術家5人の企画展「大地に耳をすます 気配と手ざわり」に、斜里町に移住した写真家・美術家の川村喜一がインスタレーションを、根室にもアトリエを構える榎本裕一が油彩を出品している。《展覧会》はイコロの森ミーツ・アート2024。《奏で人札響》はホルン奏者の島方晴康。ノースジャム・ピクニック・セッション開催の記事も。
     札幌10区新聞。作家の見延典子は、清田区在住の長沼好博との共著『私たちのルーツ 能登から北海道へ 1950年(天正18)からの悠久』を刊行した。

  • 北野少年少女合唱団が浜松訪問へ

    2024年09月11日

     札幌の北野少年少女合唱団が、9月15日の浜松ジュニア・コーラス・フェスティバルに特別出演する。札幌と浜松の音楽文化都市交流宣言の一環。
     札幌出身の作家宇能鴻一郎が8月28日死去、90歳。

  • 北大のパイプオルガン研究会30周年

    2024年09月10日

     北大パイプオルガン研究会が、創立30周年の記念コンサートを28日にクラーク会館講堂で開く。オルガンは設置から60年近くを経て老朽化。入場料の一部を修繕費用に充てる。

  • 河﨑秋子『銀色のステイヤー』

    2024年09月08日

     道新読書ナビの《鳥の目 虫の目》では、浜本茂が河﨑秋子『銀色のステイヤー』に言及。サラブレッドのシルバーファーンを取り巻く人間ドラマの描き方を絶賛する。《ほっかいどう》は、今野保『アラシ』(ヤマケイ文庫)。著者は1917年、安平村生まれ。長く絶版になっており、二十数年ぶりの復刊という。

  • 94歳 ギリヤーク尼ヶ崎が函館、札幌公演

    2024年09月06日

     大道芸人のギリヤーク尼ヶ崎が14日に函館、16日に札幌で公演する。1968年から踊り始めて昨年が55周年。今年は輪島、福島など震災の被災地でも踊った。94歳。《金曜シネマ》は『シサム(小さいム)』。主演の松前藩士・孝二郎は寛一郎。道新カルチャー面。
     30年以上の「まち歩き」の集大成として杉浦真人『さっぽろ発見』(北海道新聞社)が刊行された。日本写真家協会(JPS)の公募写真展で文部科学大臣賞を得た下川町の日野昭雄、金賞のセオノリエ、銀賞の岩永雅弘の受賞作が18日から茶廊法邑で開かれる。道新10区新聞。

  • 英国のアイヌ民族遺骨 1体は釧路へ

    2024年09月05日

     英エジンバラ大が保管するアイヌ民族遺骨のうち、釧路地域で発見された1体を、釧路アイヌ協会が返還するよう内閣府に申請した。えりも町、浦河町のそれぞれ1体はウポポイの慰霊施設に納めることになった。道新社会面。
     道新カルチャー面。佐々木譲の《現場に立つ 時空を超えて》は歴史的な事件との「ニアミス」について。《音楽会》は札響hitaruシリーズ、下野竜也指揮のスメタナ『わが祖国』全曲(評・八木幸三)。三角みづ紀の《道内文学 詩》は、岩木誠一郎『声の影』と『小樽詩話会 第653号』、詩誌『指名手配 第9号』。

  • 「西洋の写本」展 札幌芸術の森美術館で

    2024年09月03日

     道新カルチャー面。西洋の写本を集めた展覧会が7日から、札幌芸術の森美術館で始まる。札幌医大元助教授の内藤裕史・茨城県立医療大名誉教授が集めた写本から140点を公開する。収集した写本の一部は2017年に国立西洋美術館に寄贈した。さらに同美術館が購入した26点は、50年来の友人である「きのとや」会長の長沼昭夫が西洋美術振興財団へ多額の寄付で賄われた。
     小田島本有の《道内文学 創作・評論》は、戦争に関わる作品に注目した。尾高忠明指揮の札響9月定期(第663回)の事前告知も。

  • 北海道国際映画祭 短編部門金ふくろう賞『ミヌとりえ』

    2024年09月02日

     初開催の北海道国際映画祭は1日、森町で開いた国際コンペティションの短編部門で韓国チョン・ジニュン監督の『ミヌとりえ』を金ふくろう賞に選んだ。65カ国から602本の応募があった。チョン監督は在日3世。道新社会面。
     Kitaraで開催されていた北海道吹奏楽コンクールは1日が最終日。全日本吹奏楽コンクールへは大学の部で道教大函館、北海学園、職場・一般の部で上磯吹奏楽団、札幌ブラスバンド。東日本学校吹奏楽大会へは、遠軽東小、札幌新琴似北ブラスバンドが出場する。朝日新聞北海道面。

  • 「私たちの政治」とは

    2024年08月22日

     道新カルチャー面は、対談「私たちの政治を考える」上。映画『○月○日、区長になる女。』を監督した劇作家ペヤンヌマキ、シンクタンク代表理事で社会起業家の石山アンジュ。芥川賞を受賞した朝比奈秋のエッセイ。将来、多くの人たちが小説を書く時代がやってくるのではと述べる。〈他者からの承認ではなく、自己から自己への承認。そこからさらに進んで、自己治癒や自己救済として小説を書きはじめるのではないか、ということだ〉
     《音楽会》はPMFガラコンサートを3週間遅れで掲載(評・三浦洋)。
     訃報も相次ぐ。作家・評論家の石川好が19日に77歳で死去。編集工学を提唱した松岡正剛は12日に80歳で死去。

  • 左手のフルートとベースニンジャ共演

    2024年08月21日

    「左手のフルート奏者」と「ベースニンジャ」が24日に西区発寒の「途上の家」で演奏する。建築家の畠中秀幸、ベーシストの今沢カゲロウは札幌北高吹奏楽部の先輩後輩の間柄。今沢は四国大特認教授で、昆虫画家、昆虫食開発者でもある。途上の家は畠中の自宅件事務所。道新札幌圏版。
     詩人の新川和江が10日、95歳で死去。ポップアートの田名網敬一は9日に88歳で死去。
     朝日新聞文化面は《大阪・流》のタイトルで連載企画。大阪の流儀や価値の源流をたどる。

  • 大学教員に女性枠増える

    2024年08月20日

     道新カルチャー面は、ジェンダーバランスを正常化するため、教員採用に女性枠を設ける大学が増えてきているとの話題。国立大学協会は2025年までに女性教員比率24%を目指すが、23年5月時点で19.3%。安田菜津紀の《社会時評》は「そもそも平和とは何か」を考える。9月17日のオルソップ=ウィーン放送響の告知と、8月12日のHBCジュニアオーケストラ60周年記念サマーコンサートの開催記事。根室で毎夏開かれているアートプロジェクト「落石計画」も紹介している。
     雨竜町出身のフォーク歌手、高石ともやが17日、82歳で死去。アラン・ドロンは18日に88歳で死去した。
     朝日新聞文化面では、村上隆が京都で開催中の「村上隆 もののけ 京都」展で、ふるさと納税の制度を活用して資金を集めて話題になっている。〈日本政府が漫画やアニメを使った立国を本気で考えるんだったら、2、3年でも作り手のための(寄付に対して大きな控除がある)特別税制を作ればいい。そうすれば世界一の文化大国になるような気がします〉

  • ジュニアジャズスクールのワークショップ

    2024年08月17日

     札幌ジュニアジャズスクールのワークショプが1日に開かれ、小曽根真の指導で『テイクファイブ』などを演奏した。ジャズのリズムの取り方を中心に指導。前日の演奏会では、ジャズスクール卒業生でバークリー音楽大学在学中のアルトサックス奏者佐々木梨子も参加した。2022年度の北海道戯曲賞を受賞した『チェーホフも鳥の名前』が、24、25日に札幌、29日に大空町で上演される。山田航《札幌零景》は、雁来町のお話。道新カルチャー面。
     朝日新聞北海道面には、稚内の「九人の乙女」の悲劇の継承が難しくなってきているとの記事。

  • 札幌でこどもアール・ブリュット展

    2024年08月16日

     道内の小中学校や特別支援学校の子たちの作品が並ぶ「こどもアール・ブリュット作品展」が15日からSCARTSで始まった。北海道文化団体協議会主催。17日まで。道新札幌圏版。
     道新カルチャー面は、25日から札幌芸術の森野外ステージで始まる「ノース・ジャム・ピクニック・セッション」の紹介。札幌ジュニアジャズスクールを卒業したアルトサックス松原慎之介のカルテット、室蘭生まれ千歳育ちのトランペット奏者佐瀬悠輔など4組が参加する。《ステージ》は新国立劇場バレエ『アラジン』。

  • 映画『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図』

    2024年08月15日

    《沖縄戦の図40年》の「下」は、ドキュメンタリー映画『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』を制作した河邑厚徳監督のインタビュー。佐喜真美術館で『沖縄戦の図』を観て「目の前には作品に描かれた戦争で亡くなった人たち、後ろには戦争体験者(亡くなった住民の写真)。両方から自分が見つめられているような不思議な感覚でした」
    《音楽会》はPMFホストシティオーケストラのウィルソン・ウン=札響の演奏。細川俊夫のホルン協奏曲『開花の時』のアンドリュー・ペインを高く評価する一方、『悲愴』には不満が残るとした(評・中村隆夫)。桜木紫乃《居酒屋さくらぎ》は、FMくしろのパーソナリティーをHARUMIXとして『釧路川音頭』で「スター誕生」させるまでのお話。いずれも道新カルチャー面。
     朝日新聞北海道面には、旧国鉄士幌線の「タウシュベツ川橋梁」を20年近くにわたって撮り続けてきた写真家・岩崎量示が、7月末に写真集『続 タウシュベツ河橋梁』(北海道新聞社)を発刊した話題。

  • 炭鉄港の歴史 江別・室蘭・安平・三笠・小樽

    2024年08月14日

     道新広域面で、北海道の近代化を支えた「炭鉄港」を特集した。江別の米沢煉瓦工場、室蘭の旧三菱合資会社室蘭出張所、安平の石炭貨車けん引のSL、三笠の住友奔別炭鉱の立て坑やぐらとホッパー、小樽の旧手宮鉄道施設・手宮線跡および付属施設。

  • 『沖縄戦の図』から40年

    2024年08月13日

    『原爆の図』で知られる丸木俊、丸木位里夫妻の『沖縄戦の図』は、今年で完成から40年。道新カルチャー面で《沖縄戦の図40年》を大展開。「上」では宜野湾市の佐喜真美術館の佐喜真道夫館長が「『命どぅ宝』という沖縄の根幹にある概念を可視化している」と話した。古谷経衡の《考えるピント》は「批判精神鈍らせる五輪狂騒」。
     クラリネットとピアノの演奏活動を続けてきた札幌の二田浩衣。13年ほど前に、指などが動かなくなる難病フォーカルジストニアにかかったが、2020年から演奏を再開している。道新社会面。

  • 伊福部昭の生誕110年祝う

    2024年08月12日

     伊福部昭の生誕110年を祝う演奏会が、11日に音更町で開かれた。今年で3回目という。伊福部の長女玲も出席した。道新社会面。

  • 戦争に関する書籍2冊

    2024年08月11日

     本の話題ふたつ。道新読書ナビの《ほっかいどう》は『リシュコフ大将の日本亡命』(彩図社)。著者の上杉一紀は元HTB記者。ソ連の秘密警察を率いていたリシュコフは、スターリンの大粛清を実行しながらも反発し、日本陸軍に協力して亡命したという。その半生を取材した。札幌圏版には、沖縄戦をテーマにした元北海タイムス記者・清水幸一の『ああ沖縄』について、妻藤子(とうこ)が書籍化の経緯などを報告したとの記事。月形歴史研究会が主催し、10日にかでるで行われた。

  • PMFは21,000人動員

    2024年08月09日

     パリ五輪の膨大なニュースのあおりで、文化関係の記事は少々枯れ気味。
     7月10日から3週間にわたって開かれた国際教育音楽祭PMFは、30公演を開催して来場者21,000人(関連事業含む)を集めた。オープンリハーサルへの関心も高かったとのこと。《金曜シネマ》は『ブルーピリオド』。道新のカルチャー面。

  • 作家の大崎善生が死去

    2024年08月06日

    『聖(さとし)の青春』『将棋の子』などで知られる作家の大崎善生が3日、66歳で死去した。札幌出身。2年前に下咽頭がんを患って闘病中だった。道新社会面。
     札幌の能楽愛好者団体「保親(やすちか)浦声会」が31日に、謡曲と仕舞いの会「初秋の会」をANAクラウンプラザホテル札幌で開く。観世流能楽師シテ方の浦田保親に指導を受けているグループで、人間国宝の大槻文蔵も出演する。道新札幌圏版。
     鹿児島を拠点とする劇団「どくんご」が、この夏で解散する。40年近く活動してきた。看板訳者の五月うかは釧路出身。五月は、地縁や血縁が薄い北海道の風土が「旅するテント劇団と親和性が高い」と話した。五十嵐秀彦の《道内文学 俳句》は俳句甲子園の話題。《音楽会》はエリアス・グランディ指揮のPMFオーケストラ公演(評は八木幸三)。恵庭出身、札幌在住のシンガー・ソングライター田高健太郎は21日にゼップサッポロで弾き語りライブを開く。いずれも道新カルチャー面。
       ■  ■  ■
     北海道教育大岩見沢校のi-Hallで音楽会「立体音響による音の杜」を開催。アクースモニウム」という電子音響の演奏法を駆使して、リアルタイムの楽器の音や、あらかじめ録音した音を18個のスピーカーに割り当てる。学生が作曲した小品も多数。楽器を扱うようにフェーダーを操作する姿が新鮮だった。北爪裕道主宰のINTEG’LABが企画した。

  • 函館に芸能事務所

    2024年08月05日

     道新《ひと2024》。函館に芸能事務所を開いた元タレントの服部真由子を紹介。結婚を機にタレント業に区切りをつけたが、娘の進学で住み始めた函館で、アイドルやモデルを育てている。北海道にいても夢を目指せる環境をつくる仕事は大事。
     作曲家の湯浅譲二が7日に死去。94歳。武満徹らの実験工房のメンバーでもあった。

  • 石村博子『脱露』刊行

    2024年08月04日

     室蘭出身の石村博子がノンフィクション『脱露』(KADOKAWA)を刊行した。シベリア民間人抑留者の悲劇を丹念に取材した。

  • 『西線11条のアリア』振り返り

    2024年08月02日

     道新カルチャー面は、斎藤歩が作・演出を手がけた『西線11条のアリア』の札幌・北八劇場での公演を振り返った。札幌演劇シーズンの一環で、斎藤自身も出演して喝采を浴びた。斎藤の戯曲集の新版も好評だった。

  • 札響hitaru定期 『わが祖国』と早坂文雄

    2024年08月01日

     札幌交響楽団のhitaru定期演奏会。4月から友情客演指揮者となった下野竜也の指揮で、スメタナ『わが祖国』全曲と、札幌にも縁がある早坂文雄『二つの讃歌への前奏曲』。早坂は伊福部昭、三浦淳史とともに新音楽連盟を結成し、1934年に国際現代音楽祭を催して、自らサティのピアノ曲を日本初演している。『二つの讃歌への前奏曲』の音づくりは、親交があったという清瀬保二と共通しているように感じた。

  • 「想像の翼を広げて飛べる土地」大和和紀

    2024年07月31日

     道新社会面は文化関係の記事が盛りだくさん。
     札幌出身の漫画家大和和紀が北海道政経懇話会で講演し、札幌への漫画ミュージアム開設を訴えた。道内ゆかりの漫画家が多い理由を「自分が楽しめるものを自分で生み出すしかない環境の影響もあるのでは。広い空へ、想像の翼を広げて飛べる土地」との述べた。
     英国エジンバラ大学からアイヌ民族の遺骨3体が返還されることが決まった。えりも町、浦河町、釧路地域で発見され、1913年に英国人医師がエジンバラ大へ寄贈した。3地域のアイヌ民族団体が返還を申請すれば団体に返し、申請がなければウポポイの慰霊施設に収める。
     ウクライナ国立オデッサ歌劇場首席客演指揮者の吉田裕史(常呂町出身)が、劇場オケの北見公演を実現しようとクラウドファンディングで資金を募っている。来年3月の横浜公演までは決まったが、国内巡演も希望している。
     北大大学院理学研究院の角井敬知(けいいち)講師らの研究グループが、名古屋の水族館で発見した甲殻類「タイナス」を新種と確認した。雌雄同体であることから「らんま1/2」にちなんで「ランマアプセウデス」と命名した。
     中野北溟記念北の書みらい賞の受賞者展が、30日から道新本社のDO-BOXで始まった。4回目の大賞は幕別町の小室聡美の『舞』。
     平成期に人気だったご当地キャラクター「まりもっこり」は、札幌の土産卸業「キョーワ」が発売して、来年で20年だそう。朝日新聞北海道面。

  • ハンセン病患者の合同詩集『いのちの芽』

    2024年07月30日

     国が強制隔離政策をとったことで差別を受け続けたハンセン病患者73人が参加した合同詩集『いのちの芽』が8月9日に復刊される。71年ぶりとのこと。礼文島生まれとされる白浜浩(ペンネーム)の作品も掲載されている。北海道博物館では、鉄道の歴史を振り返る「みんなの鉄道 がんばれ!地域の公共交通」が開かれている。伊藤氏貴の《文芸時評》は、芸術家の自意識に目を向ける。道新カルチャー面。

  • ゆうばり映画祭 開催地「未定」に

    2024年07月29日

     道新社会面は、連日のゆうばり国際ファンタスティック映画祭報道。公式HPで会場が「未定」と発表された。夕張開催では、上映施設や映写機材などに1,000万円前後かかるのに対し、上映環境が整っている東京の方が開催経費は大幅に抑えられるとのこと。地域にこだわって開催してきたイベントを根底から揺さぶる事情と捉えることができる。
     他に世界遺産登録決定の佐渡金山で、戦時中に朝鮮人が過酷な労働環境で働いていたとする展示が、佐渡市の相川郷土博物館で始まったとの記事も。政府は「戦時の徴用は国際法上の強制労働には当たらない」との見解というが……。
     朝日新聞文化面。『ツミデミック』で直木賞を受賞した一穂ミチが、エッセーで「覆面作家」への「どうして顔を出さないのですか」という質問が「ちょっと困る」と書いている。声高にではなく「顔出し」が普通で「覆面」がイレギュラーであることへの違和感を表明した。

  • 兵庫県美で安彦良和展

    2024年07月27日

     道新カルチャー面。兵庫県立美術館で開催されている特別展「描く人、安彦良和」を紹介。遠軽町出身の漫画家で、ガンダムのキャラクターデザインやアニメの作画監督のほか、『虹色のトロツキー』など漫画の傑作も多い。資料1400点を展示している。島根、青森にも巡回する。《展覧会》は文芸同人誌『がいこつ亭』を主宰する三神恵爾のコラージュとアクリル画の展覧会を紹介した。
     道新社会面。愛別町や鹿追町から見つかっている「北海道石」の発見物語が、子供向け科学誌「たくさんのふしぎ」8月号に掲載された。発見・命名者の田中陵二が文と写真を担当した。北海道石は、世界初の天然有機鉱物として国際鉱物学連合が認定している。元道職員の坂東忠明が1960〜80年代に道内の鉄道や暮らしを撮影した写真集『北海道 昭和の鉄道風景 懐かしの汽車旅』が、北海道新聞社から発売される。

  • 北陸銀行の山内壮夫『鶴の舞』は豊平支店へ

    2024年07月26日

     北洋銀行豊平支店の敷地に、かつて旧札幌支店の屋上にあった山内壮夫の代表作『鶴の舞』が設置された。1965年に札幌支店のビルが建設された際に「街行く人が建物を仰ぎ見たときに、青空をバックに鶴が映える」として設置されたもの。ビルの取り壊しで札幌彫刻美術館友の会がその行方を案じていた。電子楽器のテルミンの演奏体験会が6月27日に札幌・時計台ホールで開かれた。札幌と小樽の愛好家による「札幌テルミン愛好家サークル バブーシュカ」が主催。いずれも札幌10区新聞。

  • ゆうばり映画祭 賞金未払い

    2024年07月25日

     ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のグランプリ賞金などが、未払いになっていることがわかった。少なくとも5人の60万円。制作支援金の未払いは8年前にさかのぼるとの情報もある。資金不足が原因らしく、会期の問題以上に深刻かもしれない。道新社会面。
     ジャーナリスト・作家の故外岡秀俊を悼む音楽朗読劇が、8月4日にかでるアスビックホールで開かれる。朝日新聞北海道面。

  • 日本遺産候補の「小樽」 点数評価プロセスへ

    2024年07月24日

     文化庁は23日、2021年度に日本遺産候補となった小樽市の「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽」が点数評価プロセスに進むと発表した。小樽運河や旧手宮鉄道施設など26の文化財で構成される。2018年度に認定された「カムイと共に生きる上川アイヌ」は認定6年後にして「再審査」となった。理由は非公表。
     1980年代の人気ファミコンゲーム『オホーツクに消ゆ』のリメーク版が9月12日に発売される。前作は網走や札幌などを舞台としていたが、リメーク版は『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ〜追憶の流氷・涙のニポポ人形〜」。ジー・モードが販売し、ニンテンドースイッチかパソコンでプレイできる。いずれも道新社会面。「のび太」の初代や『未来少年コナン』のコナン役の声優・小原乃梨子が12日に死去した。88歳。

  • 『西線11条のアリア』が描く北海道

    2024年07月22日

     俳優・脚本家・演出家の斎藤歩の傑作『西線11条のアリア』を北八劇場で鑑賞。札幌演劇シーズンの一環で、斎藤自身も出演した。市電の西線11条停留所で繰り広げられる、生と死の間を描いた人情劇である。気候、食、経済情勢、市電そのものの特徴もよく捉えていて、北海道の自画像的な作品と言えるだろう。斎藤も熟練の出演者も集中力をもって演じ切り、観衆に深い感銘を与えた。22日夜の公演。

  • PMF2024 ウィルソン・ウン=札響

    2024年07月21日

     PMF2024ホストシティオーケストラ(札響)公演は、ウィルソン・ウン指揮、ロサンゼルスフィル首席のアンドリュー・ベインのホルン独奏。プログラムは細川俊夫:ホルン協奏曲『開花の時』、チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調『悲愴』。ウィルソン・ウンは香港生まれ、30代半ば。ハンギョン・アルテ・フィルハーモニックの首席客演指揮者に就任したばかりの売り出し中。いずれもオーソドックスながら、自信にあふれた指揮ぶり。細川のホルン協奏曲は、蓮の開花をイメージした恐ろしく緻密な作品。ベルリン・フィルの創立100周年記念作曲コンクールで優勝した褒賞として委嘱された作品が、初演は「諸事情により」中止されたとのこと、なぜだったのか知りたいところ。

  • PMFクラシックLABO♪初開催

    2024年07月20日

     PMF関連の子ども向けミュージック・ワークショップ「PMFクラシックLABO♪」が13日、Kitaraで開かれた。「動物たんてい」「カラダ・オト・ウタウ」の2プログラムは、ポルトガルの音楽施設と提携する東京文化会館が企画し、PMFが初めて日程に取り入れた。山田航の《札幌零景》は「切り捨てられた石段で」。道新カルチャー面。
    北海盆唄発祥の地とされる三笠を舞台とするドラマ『三笠のキングと、あと数人』を、HBCが制作する。出演は高杉真宙、柄本時生。全6回で来年春に放送予定。道新社会面。
     ロシアの大学の日本校として唯一、文科省から外国大学日本校の指定を受けている函館の「ロシア極東連邦総合大学函館校」が、来年度の学生募集を停止することを決めた。学生は現在14人で、本年度の新規入学は3人にとどまっている。朝日新聞北海道面。

  • 乱拍子が12月にチュニジア公演

    2024年07月19日

     札幌の芸能団体「乱拍子」は12月で結成25周年を迎え、チュニジアでの公演を予定している。円安による渡航費用の高騰をクラウドファンディングで補う考え。道新札幌圏版。
     本郷新記念札幌彫刻美術館で、現代作家と本郷新の〝コラボ〟する展覧会「共振−本郷新+北海道の現代アーティスト」が開かれている。参加しているのは、美術家の艾沢詳子、鈴木涼子、井越有紀、歌人の山田航。札幌10区新聞。

  • 渡部雄吉の道内60年代写真

    2024年07月18日

     道新カルチャー面。《展覧会》は、ルポルタージュ写真家の渡部雄吉(1024〜93)による道内撮影のモノクロ写真の展覧会が、東京・JCIIフォトサロンで開かれている。1960年代に撮影した作品。雌阿寒岳の硫黄採掘場の坑夫を追った「ヤマの男たち」、根釧パイロットファームに目を向けた「二つの開拓地」、厳寒のオホーツクの漁師を捉えた「流氷の街」の3テーマで構成した。《音楽会》は尾高忠明指揮、ヴァイオリン独奏金川真弓による札響第662回定期(評・中村隆夫)。
     札幌市中央図書館は、全国の放送局が制作した優れた番組を視聴できるサービス「番組アーカイブ・ネットワーク」を導入した。日本新聞協会は、検索連動型生成AIサービスが著作権侵害に当たる可能性が高いとする声明を発表した。ニュースコンテンツに「ただ乗り」することを防ぐため著作権法などの見直しに訴えた。誤情報を生みかねないサービスであるとの指摘も。第171回芥川賞は朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』、松永K三蔵『バリ山行』。直木賞は一穂ミチ『ツミデミック』。いずれも道新社会面。

  • 近美リニューアル構想で〝討論〟

    2024年07月17日

     道新《水曜討論》。リニューアルが検討されている北海道立近代美術館について、元学芸副館長の佐藤友哉と金沢21世紀美術館長の長谷川祐子がそれぞれ論じた。佐藤は「美術館活動の基本は調査、研究、作品の収集と保管、展覧会や教育」とした上で、公立館の役割は「地域文化のためのユニバーサルな運営が期待される」「美術館活動の基本が担保されることが条件」「使命感とともに企画能力を持った学芸員の配置や育成も重要」と述べた。長谷川は21世紀美術館について「新たな出会いや発見がある場所にしたいという思いがあった」と述べる。レアンドロ・エルリッヒの『スイミング・プール』は「来場者が毎回違う体験ができる」という魅力を体現している。無料ゾーンには、自由に過ごせる心地よい場所がたくさんある。〈現代アートは未来に向けて新しい視点を示したり、方法を試みたり、未知のものを生み出してく表現活動です〉〈札幌を含めどこの地域の美術館も、来場者の満足度を体験のデザインという形で意識していくべきだと思います〉
     北海道陶芸展・シニア陶芸展が16日から札幌市民ギャラリーで始まった。陶芸展の最高賞は砂川の田中和夫、シニア展は山下洋子が受賞した。道新社会面。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭は、コンペ審査の遅れのため9月開催を10月開催に変更した。

     

  • グランディ=PMFオーケストラ

    2024年07月14日

     PMF2024の会期も半ば。エリアス・グランディ指揮のPMFオーケストラがKitaraで公演した。ヴァイオリン独奏にクララ=ジュミ・カンを迎え、プログラムはR.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』、プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)と盛りだくさん。

  • ウポポイ4周年 100万人来場は非現実的?

    2024年07月13日

     開業4周年を迎えたウポポイの年間来場者数が伸び悩んでいる。旅行の個人化など理由はあるものの、そもそもの政府目標の100万人達成は非現実との声も出ている。道新社会面。

  • 近美の取り壊しに反対意見?

    2024年07月12日

     道教委は北海道立近代美術館のリニューアルを議論する専門家会議をオンラインで開催。現在の建物が文化財として認められる可能性があるため、取り壊しに反対する意見が複数出たという。第43回書究院展の道知事賞に山田紫雲が選ばれた。道新社会面。

  • 札幌演劇シーズン 1ヶ月半に

    2024年07月11日

      札幌演劇シーズンが13日から札幌で始まる。今年は8月31日までの1ヶ月半に拡大。9団体が6劇場で74ステージを行う。プログラムディレクターの斎藤歩が選んだ、演劇企画制作集団「おきなわ芸術文化の箱」の「9人の迷える沖縄人(うちなーんちゅ)」も上演する。ディレクターは2025年から小島達子に引き継ぐ。HBCジュニアオーケストラが11月で創立60周年となる。8月12日にKitaraで記念のサマーコンサートを行う。卒団生で関西フィルハーモニー管弦楽団特別契約首席奏者の向井航を迎え、サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番などを演奏する。《奏で人札響》は、チューバの玉木亮一。道新カルチャー面。
     国際教育音楽祭PMFが10日に開幕した。

  • 英国に6体のアイヌ民族遺骨

    2024年07月10日

     アイヌ民族の遺骨6体を、英国エジンバラ大とロンドンの自然史博物館が保管しており、日本政府が返還を請求していることがわかった。エジンバラ大は、えりも町、湧別町、釧路地域で発見され、マンロー医師が寄贈した。ウポポイの慰霊施設に収められているアイヌ民族遺骨19体は、小樽市の団体「インカルシぺの会」に返還される。道新社会面。
     国宝『鳥獣戯画』を公開する「国宝『鳥獣戯画』京都 高山寺展」が9日に北海道立近代美術館で開幕した。9月1日まで。

  • ニュウハクシミの防除法研究で受賞

    2024年07月09日

     北海道博物館の高橋佳久学芸員が、日本科学協会の2023年度笹川科学研究奨励賞を受賞した。書籍や古文書を食害する「ニュウハクシミ」の物理的防除方法を開発した。ニュウハクシミの脚の構造上、フッ素樹脂テープを貼って、底にペットボトルの脚をつけることで侵入を防げるという。道新カルチャー面。《中村和恵の考えるピント》は、生成AIの問題点。
     2003年から続く札幌市内の公共・民間施設の無料開放(カルチャーナイト)が、今年も19日に行われる。道新札幌圏版。

  • 36回目の函館野外劇

    2024年07月08日

     第36回市民創作函館野外劇が7日に五稜郭公園で開かれた。市民有志ら120人ほどが箱館戦争などの場面を再現した。7月は28日までの毎週日曜に上演し、8月10、11日には函館市芸術ホールでも公演する。道新社会面。

  • 8月から道内9市町で北海道国際映画祭

    2024年07月07日

    「北海道国際映画祭」が、8月から10月にかけて江差町、森町、倶知安町、名寄市、別海町、紋別市、大樹町の8市町で開かれる。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のスタッフを中心とする実行委が企画した。道新社会面。
    ジャーナリスト・作家の故外岡秀俊のオーラルヒストリー『外岡秀俊という新聞記者がいた』が田畑書店から刊行された。聞き手は、法政大学非常勤講師の及川智洋。2017年の私家版に未刊小説などを収録した。朝日新聞北海道面。

  • 道新ホールの演劇史 『天国への階段』で幕

    2024年07月06日

     道新ホールが6月末で閉館。最後の演劇公演となったのは、6月22〜23日に上演された『天国への階段 北海道re-mix』。特殊清掃員の群像劇という異色の設定だが、舞台上の抽象的なセットを出演者が片付けていき、すべてなくなった時、特殊清掃会社の社長が「覚えている人がいる限り、その人は生きている」と言う。鈴井貴之の作・演出。道新カルチャー面《ステージ》で紹介。《穂村弘の迷子手帳》はバーチャルの花火。
     江差町で380年前から続く「姥神大神宮渡御祭」の名称を神宮が商標登録した問題で、町内の税理士が町と神宮の間で契約を結んだ。町や団体が名称を使うときは、事前承諾により無償で使えることになった。北大総合博物館では企画展「北大の探究心2024」が5日から始まった。道新社会面。
    『幸福の黄色いハンカチ』『男はつらいよ 知床慕情』などに出演した俳優・赤塚真人が4日、73歳で死去した。

  • 『太陽のふね』お披露目

    2024年07月05日

     札幌芸術の森美術館中庭で、藤原千也(かずや)が制作した大作『太陽のふね』が6月29日から公開されている。本郷新記念札幌彫刻賞の2023年度受賞作。藤原は北海道工業高(元道科学大高)から大阪芸大、和歌山県森林組合を経て北海道教育大大学院へ進学した異色の経歴を持つ。作品について「もうとっくに倒れているかもしれない現代という名の樹木。それでも日々を生きなければいけない私たちは何を信じて、何を見たら良いのだろう。本当の光を見たい。巨大な生命の光を見たい」と述べている。道新札幌10区新聞。
      ■  ■  ■
     数々の現代ピアノ音楽の初演に取り組んできた高橋アキが、5日に札幌で、6日に東川町でリサイタルを開いた(6日は「ライブ」と表記)。札幌ではサティ『ジムノペディⅠ』やケージ『ア・ルーム』、武満徹『閉じた眼 瀧口修造の追憶に』など主要なレパートリーを惜しげもなく披露した。会場のSCARTSコートには、オールドファンも若者も集まり、高橋の人気が健在であることを感じさせた。濃密な時間! 主催したのは酒井広司が主宰する「札幌の現代音楽プロジェクト」。NMAが調律やプリペアドピアノの扱いなどで協力した。

  • 北海道平和美術展、原爆展に札幌南高定時制生

    2024年07月04日

     道新札幌圏版。31日から札幌市民ギャラリーで、北海道平和美術展が開かれる。札幌南高定時制の生徒による長崎平和記念像のモザイク画なども展示される。平和美術展は、ベトナム戦争中の1974年、本郷新、本田明二、高橋北修らの呼びかけで始まった。来年解散する北海道被爆者協会が主催する「原爆展」は、10回目の今回が最後となる。こちらにも札幌南高定時制の生徒が朗読劇で参加する。同じく社会面。
     国際教育音楽祭PMFは10日に開幕し、首席指揮者マンフレート・ホーネックらの指導で30日まで30公演を開催する。85人のアカデミー生が参加する。

  • 『フラジャイル』20号

    2024年07月02日

     道新カルチャー面。《道内文学 詩》は、SNS上に発表された詩を収めた詩集のほか、20号に至った旭川の詩誌『フラジャイル』を紹介した。《音楽会》は、プラハ・チェロ・リパブリック2024(評・八木幸三)。

  • 『明治期北海道の兵士たち』

    2024年06月30日

     道新読書ナビの《ほっかいどう》は、相庭達也『明治期北海道の兵士たち』(北大出版会)。屯田兵や陸軍第七師団がどのように軍隊が形成され、戦地へ派遣されたかを「兵士を集団ではなく個としてとらえ」て解き明かした。
     作家の梁石日が29日、87歳で死去した。
     

  • 札幌のポップカルチャーどうする? 産学官で意見交換

    2024年06月29日

     札幌市が検討している「マンガミュージアム」やポップカルチャーについて、産学官の意見交換会が28日に開催された。北大、札幌観光協会、CCC、JTBなどが参加した。大和和紀や山岸涼子によるマンガミュージアム構想とも連携していく。道新札幌版。
     新型コロナウイルス禍の記憶を後世へ伝える取り組みが、大学や博物館で行われているとの記事。道新カルチャー面。浦幌町立博物館では、コロナ禍の社会現象を記録する「モノ」のほか、声も収集。日本学術会議もデジタルデータベースの構築を提言したという。アーカイヴの必要性を論じる好機。他に、札幌の演歌歌手・小山雄大による全国行脚の話題も。
     白老のウポポイでは29日から「生誕90年記念 藤戸竹喜の世界展」が始まった。8月25日まで。道新社会面。

  • オーボエ、ピアノのフランスプログラム

    2024年06月28日

    〈パリで出会った道産子ふたりのコンサート〉札幌・ふきのとうホール
     釧路出身でフィンランドの古都トゥルクのオーケストラで首席を務めるオーボエの高島拓哉、函館出身でパリ国立高等音楽院などで学んだピアノの岡田奏の共演。ラヴェルのソナチネ、デュティユー、サン=サーンス、プーランクそれぞれのソナタという、価値あるフランスプログラムだった。低音域から高音までムラなく、芯のあるオーボエの音色に浸り、「ソロも室内楽もコンチェルトも同じように取り組んでいきたい」と自ら語るピアニストの表現の幅の広さに感嘆した。主催はヤマハミュージックジャパン。
    特別展〈SEVEN DADA’S BABY再考〉市立小樽美術館
     1982年に札幌のギャラリーユリイカで開かれた「SEVEN DADA’ BABY」を、当時企画を担当した柴橋伴夫自身が振り返る。阿部典英、荒井善則、岡倉佐由美、佐渡富士夫、千葉豪、楢原武正、一原有徳を取り上げた。40年前の熱気をそのまま伝える作品群が展示空間をみっちりと埋め、息苦しささえ感じる。当時と現代を結ぶものが何かを考察する手がかりはどこか。会期終了間際に観覧。
     ■  ■  ■
     ドイツ・ロストック音楽演劇大学に留学中の小野寺拓真(札幌開成中等教育学校卒)が、5月にハンガリーのブダペスト・スプリング・フェスティバルに出演。コダーイやバラキレフを演奏した。Kitaraのリスト音楽院セミナーで最優秀受講者に選ばれ、機会を得た。3月に亡くなった元札響チェロ奏者、小島盛史の追悼コンサートが開かれた。NHK放送管弦楽団から1968年に札響へ移った。札幌10区新聞から。
     札幌・北区の画家鈴木博詞が、肖像画を対象とする第70回全日肖展で内閣総理大臣賞を初めて受賞した。受賞作は『松本先生』。道新札幌圏版。

  • 河﨑秋子『愚か者の石』

    2024年06月27日

     直木賞作家の河﨑秋子の受賞第一作『愚か者の石』(小学館)について、作家が語っている。樺戸集治監を舞台に、囚人と看守の関係を題材にした。《音楽会》は「波多野睦美リサイタル」(評・三浦洋)。伊藤氏貴の《文芸時評》は。文学の「家族」について。

  • 札幌市が第4期文化芸術基本計画を発表

    2024年06月26日

     札幌市が新しい(第4期)文化芸術基本計画を発表した。札幌市のホームページで公開されている。 https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunka/kihonkeikaku/index.html
     ■  ■  ■
     札幌などの工芸作家集団による「サッポロ クラフト タグ」が37年間の活動を締めくくる展覧会を、ギャラリー茶廊法邑郎で開いている。30日まで。1987年に木彫作家の岩間隆と金属造形作家の沢田正文らが結成した。

  • 桜木紫乃が描くアイヌ女性

    2024年06月24日

     桜木紫乃がアイヌ文様のデザイナー・貝澤珠美をモデルに小説『谷から来た女』(文藝春秋)を刊行した。札幌や二風谷などを舞台とする6編の物語。貝澤の祖父・正は二風谷ダムの建設に反対し、訴訟の前面に立った。「デビューしたころからずっと書きたかったテーマ。小説家として原点回帰の作品」と桜木は話す。中島岳志の《論壇時評》は中選挙区連記制について。《魚眼図》の二通諭は、自ら編集を担当した札幌映画サークル創立60周年記念誌について触れている。栗山町在住の詩人友田多喜雄が5月31日、93歳で死去した。東京出身だが、戦後士別に入植し、札幌を経て栗山町に住んだ。
     文化や芸術の現場では、他の職場に比べてハラスメント被害の経験率が高いという調査結果が発表された。表現の現場調査団調べ。「キス・抱きつく・性的行為を求められた」「セクシュアリティーの告白を強要された」「密室に誘われた」などの7項目すべてで、表現者の方が、表現の経験のない人たちの群を上回ったという。収入の男女差や、収入の高い女性表現者がハラスメント被害に遭いがちな傾向もあると。朝日新聞社会面。

  • 琴似屯田兵村の歴史書復刻

    2024年06月22日

    『開拓使最初の屯田兵 琴似兵村』の復刻版が、北海道屯田倶楽部(西区)の手で発刊された。原著は、琴似兵村で幼少期を過ごした屯田兵2世の山田勝伴(よしとも)が執筆し、1944(昭和19)年に刊行された。文化庁は日本遺産の「炭鉄港」の構成文化財として江別のれんがや鉄道に関する4件を追加することを決めた。空知の炭鉱、室蘭の鉄鋼、小樽の港湾と鉄道などをテーマに2019年に認定された。道新社会面。

  • 波多野睦美リサイタル

    2024年06月21日

     6月21日のACA設立を機に、AtoCジャーナル子が鑑賞/観賞した音楽会や展覧会その他の話題も、ぼちぼちと。
     ■  ■  ■
    〈波多野睦美リサイタル サイレント・ヌーン〉札幌・ふきのとうホール
     19世紀末のロンドン。王立音楽大学で作曲を教えていたスタンフォードにまつわる時代と作曲家の楽曲を、メゾソプラノの波多野睦美が歌う。ブラームス、ヴォーン・ウィリアムズ、クィルター、ガーニーなどスタンフォードに連なる作曲家を紹介した。波多野の声の美しさと音域に応じた確かなコントロールが光った。最後に取り上げたブリテン編曲のイギリス民謡3曲のうち、『木々は高く育ち』が圧巻だった。ピアノは影山裕子。ソロで演奏したブラームス『間奏曲』、ガーニー『ノクターン』も秀逸だった。プログラムの訳詩、解説は本堂知彦。

  • まだ名づけられてない人、もの、こと

    2024年06月20日

     若手対象のバレエのコンクール「ユース・アメリカ・グランプリ」クラシック部門で女性1位になった札幌市立中1年の山田優七が札幌市役所を訪問し、秋元克広市長から記念の盾を受け取った。9月からモナコのバレエ学校に留学する。札幌のイラストレーター藤倉英幸の作品展が札幌三越本館の三越ギャラリーで開かれている。30年以上にわたり、JR北海道の車内誌の表紙絵を手がけてきた。24日まで。それぞれ札幌版、札幌圏版。
     カルチャー面では、北海道立文学館で25日から始まる絵画展「嗚呼、メレヨン島」を紹介。太平洋戦争でミクロネシアのメレヨン島に派遣され、九死に一生を得た柿本胤二(2022年死去)の遺作16点を展示する。トヨタカローラ札幌の創業者でもあった。札幌彫刻美術館の企画展「共振」は、本郷新の彫刻との「対話」をテーマとし、立体、写真、アニメーション、短歌などの作家をフューチャーした。《音楽会》は、井上道義の引退公演となった札響5月定期(評・八木幸三)。〈言いたいのは、現に在るのに、まだ名づけられていない人、もの、こと、が今でもたくさんあるのでは、ってことだ〉は、朝倉かすみの《わたしがちゃんこかったころ》より。
     道新社会面には、剣淵町が年度内に「絵本の里条例」を制定する方針であることが報じられた。絵本に関するまちづくりの条例制定は全国でも例がないという。
     詩人の白石かずこが14日に死去、93歳。

  • 北海道芸術文化アーカイヴセンター設立

    2024年06月19日

     われらがことで恐縮ながら、北海道芸術文化アーカイヴセンター(ACA)が19日の設立運営会議をもって正式に発足した。現在は、運営メンバーが手元の資料やイベントの情報を手作業でデータベース(DB)に入力している。秋にはDB公開とともに、設立記念のシンポジウムも開催する計画である。芸術・文化の活動に携わる人たちが「私のアーカイヴ」を後世に伝えていけるよう、大きな大きな器を設けておく。息の長い活動になりそうである。どうぞさまざまな形でご支援を。

  • 牛来昌 携帯基地局計画に物申す

    2024年06月18日

     牛来昌(さかえ)元斜里町長が、知床で進む携帯基地局計画へ意見を述べている。〈知床ってのは「不便さこそ宝」なんだ。不便だからこそ豊かな自然の恵みを受けて羅臼の人も、斜里の人もみんな今日まで頑張って生きてきた〉〈一番残念なのは環境省だよ。いったい知床の価値をどう考えているのか〉〈確かに携帯電話がつながれば便利さ。便利だけど、みんな不便な知床に誇りや理想を持ってやってきたんじゃないのか〉。朝日新聞北海道面。
     札幌を拠点とする俳優・タレントの金田一仁志は、腹話術師としても活躍している。キャリア5年ながら、F-1腹話術グランプリで2年連続の2位、4月に神戸で行われた2024年大会は3位となった。『タマゴマンは中学生』の著者坂本勤と、かつて『さわこのじてん』を刊行した室蘭の主婦今美幸が往復書簡集『坂本先生とさわこの母』(北海道新聞社)を刊行した。「さわこ(佐和子)」は今の娘で、脳性麻痺による肢体不自由と知的・聴覚障がいがある。《展覧会》は、東京都現代美術館で開かれているグループ展「翻訳できない わたしの言葉」。札幌在住のアーティスト、マユンキキらが出品している。道新カルチャー面。

  • 帯広に「平原通り小劇場」

    2024年06月16日

     帯広市西2南9に民間の「平原通り小劇場」が15日にオープンした。商業ビルの地下1階にあり、舞台の広さは48平方メートル、客席は80席。民間の小劇場は十勝管内では唯一という。札幌座の公演『亀、もしくは…。』を上演した。道新社会面。

  • 「怒髪天」が結成40周年

    2024年06月15日

     6月末で閉館する道新ホールでは、札幌で結成され、結成40周年を迎えた「怒髪天」がライブを開く。ベッシーホール、滝野すずらん丘陵公園でも。国内初の人事専門図書館「人事図書館」が4月に都内にオープンした。発起人で館長は、札幌出身の吉田洋介。有料会員制で、来館者同士で交流もできる。山田航の《札幌零景》は「綿毛の垣根のある家」。道新文化・エンタメ面。
     道新ホールでは、熊川哲也の講演会も開かれた。「ありがとう道新ホール」企画の一環。札響専務理事は、鳥居和比徒から荒木太郎に代わった。原田康子原作の映画『挽歌』で主演した久我美子が9日に死去した。93歳。道新社会面。

  • 及川光悦に札幌市が感謝状

    2024年06月14日

     道新札幌版。新得町出身の指揮者・及川光悦に、札幌市が感謝状を贈った。日本音楽文化交流協会の代表として、札幌では1994年から障がいのある子や児童施設の子を招待してきた。6月13日で通算30回となる。
     札幌圏版。能楽の愛好団体「札幌能楽会」は23日、旭川の上川神社に能楽を奉納する。仕舞『融』『田村』と舞囃子『鞍馬天狗』。15日は北海道神宮にも奉納する。
     社会面。株式会社さっぽろテレビ塔は、さっぽろテレビ塔を国の登録有形文化財に申請した。2023年度には44万2千人が来場している。
     カルチャー面。《金曜シネマ》は、大泉洋主演の『ディア・ファミリー』。
     朝日新聞北海道面。オランダ在住のジャズピアニスト小橋敦子のコンサートが、23日に幕別町百年記念ホールで開かれる。日本での演奏を希望して幕別町にメールを送ったところ、受け取った町職員岡本祐也が応えた。

  • 岩井圭也『われは熊楠』

    2024年06月13日

     道新カルチャー面。全道展開幕。『われは熊楠』(文藝春秋)直木賞候補になった岩井圭也(北大大学院修了)のインタビュー。同じ日の社会面には、岩井が直木賞候補に選ばれたとの記事も。
     オペラ『桜の森の満開の下』公演の記事。《奏で人札響》はヴァイオリン副首席の飯村真理。
     道新社会面には、北方領土の歯舞群島・志発島で終戦後に日露の住民が混住した時代のことを題材にしたロシア人脚本家の小説の邦訳『船 北方領土で起きた日本人とロシア人の物語』(皓星社)が7月に刊行される。

  • 9月に富良野で野外音楽イベント

    2024年06月12日

     9月6日からの3日間、富良野で野外音楽イベントが開催される。地元の若手経営者が実行委を作り、2万人の集客を目指すという。道新社会面。
     プリツカー賞受賞の建築家の槇文彦が6日に死去。95歳。
     朝日新聞北海道面。釧路市立美術館で「博物館浴」の実証実験が行われた。九州産業大の緒方泉特任教授が提唱し、血圧が下がったり、活力を示す数値が高まった調査結果があるという。釧路北陽の生徒が参加した。

  • 写真のJPS公募展で道内勢活躍

    2024年06月11日

     道新カルチャー面。日本写真家協会(JPS)の公募展で、下川町の日野昭雄が文部科学大臣賞、札幌のセオノリエが金賞(3席)、札幌の岩永雅弘が銀賞となり、道内勢が上位を占めた。札幌座の人気作品『亀もしくは…。』が道内を巡演中。
     道新社会面。元札響首席チェリストの土田英順が、プロデビュー65周年のコンサートを9日に開いた。

  • 桜木紫乃×河﨑秋子対談

    2024年06月09日

     道新の特集で、直木賞作家の桜木紫乃と河﨑秋子が対談。直木賞のこと、北海道のこと、道東のことを語っている。
     桜木〈私たちは道東という「辺境」から出た作家だけど、自分たちの「ど真ん中」で書いているからね〉
     河﨑〈道東はどれだけ知恵をつけようが、死ぬ時は死ぬみたいな、人間はたかが人間なのだと感じさせられる場所〉
     

  • 道新ホールが30日閉館

    2024年06月08日

    「ポップスの登竜門」「地元劇団の目標」などとして親しまれてきた「道新ホール」が6月30日をもって閉館する。61年の歴史。1600席の札幌市民会館ぐらいしかなかったため、期待は大きかったが開館当初は貸出条件が厳しかったため、地元文化団体が反発したという真偽不明の話もある。ワンフロアのため、ホールの一体感があるのもメリットだった。一般客が5人(関係者8人)しかいなかったという1974年1月のオフコースのエピソードは、小田和正の特集番組で自身がライブ会場で「道新ホール」の名前を出して振り返っていたのも記憶に新しい。サタデーどうしん。
     カルチャー面では、同じ道新ホールの地元劇団の最終公演となる「OOPARTS」の公演(6月21〜23日)について、主宰の鈴井貴之が語っている。チケットはすでに完売。

  • 1982年「SEVEN DADA’S BABY」展を振り返る

    2024年06月07日

     道新カルチャー面。《展覧会》は「SEVEN DAFDA’S BABY再考 7人のアヴァンギャルド」展。1982年のグループ展を振り返ることで、ダダをあらためて考えることがテーマ。第9回斎藤茂太賞に、ノンフィクション作家(元道新論説委員)の小坂洋右の『アイヌの時空を旅する』が選ばれた。
     第78回全道展の最高賞に、函館の大野海玖の絵画『静寂な眠りの中で』が選ばれた。23歳以下が対象の北海道美術館協力会賞とのダブル受賞。しかも2年連続という。室蘭出身の写真家・吉田ルイ子が5月31日に死去。89歳だった。道新社会面。
     札幌10区新聞には、北海道博物館で開催中の企画展「北海道樹木万華鏡−スキャンアートと標本で見る木々のかたち」の記事。南区在住のスキャナグラファー孫田聡による。

  • 19年目の「君の椅子」

    2024年06月06日

     朝日新聞北海道面は、19年目を迎えた「君の椅子プロジェクト」を大きく紹介。元副知事の磯田憲一が発案し、2006年に東川町が最初の参加自治体となった。君の椅子を扱いたいと伊勢丹が申し出たが、議論の末に断ったというエピソードは初耳だった。
     道新カルチャー面。佐々木譲の《現場に立つ 時空を超えて》は、初めて世に送り出して新人賞を受賞した『鉄騎兵、跳んだ』のエピソード。《音楽会》は、按田佳央理のフルートリサイタル。評は中村隆夫。桑原憂太郎の《道内文学 短歌》。
     若手作家8人による「未完の大器 特別展」が5日から、札幌・東区のギャラリー法邑で始まった。アーティスト創生プランター協会が主催。10日まで。道新札幌圏版。

  • 天神山アートスタジオ10年

    2024年06月05日

     さっぽろ天神山アートスタジオが開設10年を迎えた。これまで延べ3000人近くが滞在した。2014年の札幌国際芸術祭をきっかけに、閉鎖されていた施設を改修した。現在は一般社団法人AISプランニングが運営する。滞在するアーティストと地元の人たちの交流も良い刺激になっている。

  • 穂村弘の《迷子手帳》

    2024年06月04日

     道新カルチャー面《会いたい聞きたい》は、道新連載のエッセイをまとめた『迷子手帳』(講談社)を刊行した穂村弘。「短歌はエッセーをだるま落とししたようなもの。スコン、スコンって。だから、短歌の方が(表現が)鋭い角度になるかな」
     同じ紙面。戦争体験者のインタビュー集『7人の戦争アーカイブ』(梨の木舎)が38年ぶりに再刊された。歴史学者で恵泉女学院大名誉教授の内海愛子の著書。近年ドキュメンタリー映画を制作したHBC、UHB、HTBの監督がイベント「ドキュメンタリーが面白い!」でそろい、制作の経緯やテレビ局の姿勢についても議論した。五十嵐秀彦の《道内文学 俳句》は、デジタル化で印刷が簡易になったため、俳誌に新しい風が吹いていると指摘する。

  • 近美リニューアルの議論

    2024年06月03日

     道新・学びeyeが、北海道立近代美術館のリニューアルを取り上げている。5月に公表された3案(現地改修、現地新築、移転新築)の詳細説明を中心に、「建設費の議論ばかりが注目されている」(これは取り上げ方の問題)こと、自然環境を残すべしとのアンケートで多かった声、現在の建物と新築部分のハイブリッド案などを紹介した。倉敷市の美術館運営コンサルティング会社「イデア」の大月代表のコメント。〈近美の議論を見ていると、道が積極的に「やりたいこと」が何なのか、薄ぼんやりとしていて見えず、「消去法」で議論をしている印象を受けます〉。指摘のとおり。

  • 見逃すこと、見逃さないこと

    2024年06月02日

     朝日新聞文化面の《動標》は三宅唱の「みのがす」。公開されているすべての映画を見ることはできないことを挙げ、「すべて」のあり得なさから、「見逃す」ことと「見逃さない」ことに視線を向けている。
     道新読書ナビ。大型書評で、千早茜『グリフィスの傷』(集英社)、及川智洋『外岡秀俊という新聞記者がいた』(田畑書店)を紹介している。《ほっかいどう》は塚田英晴『野生動物学者が教える キツネのせかい』(緑書房)。
     東川町は「写真の町」宣言から40年目。写真展「東川×写真×私」を開催中。斜里では知床国立公園指定から60周年の記念式典で、河﨑秋子が講演した。「知床らしさから考える人と自然の距離」をテーマにシンポジウムも。道新社会面。

  • 『あっちこっち佐藤さん』ロングラン中

    2024年06月01日

     道新文化・エンタメ面。《ステージ》は北八劇場の柿落としロングラン『あっちこっち佐藤さん』。初演2007年で再演4度目というから、人気演目である。記事では性的少数者への不適切な表現もあるそう。最終盤のチケットが取れているので、吟味してみたい。ハロー!プロジェクトの道内出身2人を紹介している。アンジュルムの伊勢鈴蘭とハロプロを卒業した元Juice=Juiceの稲葉愛香。アンジュルムの新曲は、札幌出身の山崎あおいが作詞している。《穂村弘の迷子手帳》は猫の瞳のお話。連載は単行本になった由。

  • 東京で6月に草森紳一展

    2024年05月31日

     道新カルチャー面。音更町出身の随筆・評論家の草森紳一の足跡をたどる「雑力の人 草森紳一 元祖サブカル評論家展」が東京・台東区寿の書店Readin’Writin’ BOOK STORE」で6月に開催される。《金曜シネマ》は韓国映画『成功したオタク』。

  • 洞爺湖町出身の陶芸家 道川省三

    2024年05月30日

     道新カルチャー面。洞爺湖町出身の陶芸家・道川省三が活動の幅を広げている。愛知県瀬戸市と静岡県島田市川根町にアトリエを構えつつ、国内外の個展やワークショップ、講演もこなしている。道内での活動も視野に入れているという。
     伊藤氏貴の《文芸時評》は、朗読など「声」に着目。《音楽会》は、鈴木大介のギターリサイタル(評・三浦洋)。《ステージ》は劇団四季の最新ミュージカル。旭川出身の漫画家・藤田和日郎の『黒博物館 ゴーストアンドレディ』が原作。

  • 8月に石山緑地で薪能

    2024年05月29日

     札幌市南区の石山緑地で、8月10日に薪能が行われる。札幌市芸術文化財団と札幌市の共催事業。演目は『安達原』。総合演出は、京都の能楽師松野浩行。プロジェクションマッピングなども活用する。石山緑地での薪能開催は23年ぶり。道新社会面。

  • 三浦綾子の単行本未収録短歌

    2024年05月28日

     三浦綾子の単行本未収録の短歌13首が新たに見つかった。函館市中央図書館が所蔵する短歌誌「あかだも」掲載の11首と、三浦綾子記念文学館が所蔵する「旭川アララギ会報」に掲載された2首。三浦文学館長の田中綾らが確認した。旧姓の「堀田綾子」名義。

  • 商家資料館の夢

    2024年05月24日

     道新10区新聞。1910(明治43)年に豊平町に開業し、1992年に閉店した雑貨・食料品の「池上商店」の歴史を振り返った『池上商店 夢の商家館』(北海道新聞社)が刊行された。池上商店3代目、池上学園創始者の故・池上公介が目指した「商家資料館」を紙上にまとめた一冊。
     道新カルチャー面。《金曜シネマ》はアウシュヴィッツの強制収容所長を主役にしたポーランド映画『関心領域』。函館を舞台とした映画『おいしい給食』(市原隼人主演)も道内で順次公開。

  • チェロの土田英順 デビュー65周年

    2024年05月23日

     元札響首席チェロ奏者の土田英順が、デビュー65周年リサイタルを6月9日にザ・ルーテルホールで開く。日本フィルハーモニー交響楽団の首席を経て、1974年から1997年まで札響で活動した。《音楽会》は広上淳一指揮の札響hitaru定期。評は三浦洋。道新カルチャー面。

  • 『ヤジと公安警察』寿郎社が刊行

    2024年05月22日

     2019年夏の参院選で起きた当時の安倍晋三首相をめぐる「ヤジ排除」事件を題材に、寿郎社が冊子『ヤジと公安警察』を刊行した。編集者で排除された男女2人を支援する「ヤジポイの会」メンバーの下郷沙季が企画した。「つばさの党」の選挙演説妨害と、ヤジを同列視する一部の風潮にもクギを刺している。朝日新聞北海道面。
     オール名寄ロケで昨年撮影された短編映画『運命屋』に主演したミッキー・カーチスが、ニューヨークの国際映画祭「ニューヨーク・インディペンデント・シネマアワード」で最優秀俳優賞を受賞した。ミッキーは2022年から名寄在住。映画は年内公開予定。道新社会面。

  • 斜里のYAコミュ

    2024年05月21日

     斜里町立図書館にある、中高生だけが書き込める原則匿名の掲示板「YAコミュ」が話題になっている。プライベートのコミュニケーションと公共を結ぶ、小さな地域ならではの取り組み。図書館長が岐阜市の取り組みを参考にしたという。

  • 塩狩駅100年

    2024年05月18日

     三浦綾子の小説『塩狩峠』の舞台でもあるJR宗谷線の塩狩駅が、11月で開業100年を迎える。三浦綾子の旧宅を復元した塩狩峠記念館は、2023年の来館者が2295人。うち1040人が道外。サタデーどうしん。
     同じく文化・エンタメ面は、北海道博物館で開催中の特別展「北海道樹木万華鏡」を紹介した。山田航の《札幌零度》はショートショートのような「北24条のニセ廃墟」。
     北見の福村書店の元社長、下斗米ミチが17日、100歳で死去。1947年に夫と書店を開業した。2011年に閉店している。

  • むかわ竜の館 官民協働で建設探る

    2024年05月17日

     むかわ竜(カムイサウルス・ジャポニクス)で知られるむかわ町で、老朽化した町立博物館を官民が力を合わせて新築する計画が進んでいる。現在の博物館では、むかわ竜の骨格標本のレプリカも全身を展示するスペースがないという。建設計画は、2018年の胆振東部地震の復興を優先したため遅れたほか、2022年には町の計画案が「薄っぺらい」と住民の反対により棚上げになった。住民や業者を交えた「穂別博物館未来会議」が計画案を練っている。むかわ竜は、2019年の恐竜博でも人気で、87日間で68万人近い人が訪れた。朝日新聞北海道面。
     浪花のモーツァルトの異名がある作曲家、キダタローが14日、93歳で死去。

  • オペラ『桜の樹の満開の下』日本初演

    2024年05月16日

     坂口安吾『桜の樹の満開の下』を原作としてスロヴァキア国立歌劇場が制作したオペラが、5月31日に札幌のふきのとうホールで上演される。2008年に同国で初演、今回が日本初演となる。バスの大塚博章が山賊役、ソプラノの倉岡陽都美が女性役を演じる。18人のオーケストラと6人の男性合唱による演奏会形式。八木幸三が編曲を監修した。
     石狩市出身の中学生ドラマーYOYOKAが留学中の米国から一時帰国し、5月31日と6月1日に札幌でドラムクリニック、イベント、報告会などを行う。
     桜木紫乃の《居酒屋さくらぎ》は父をモデルとして書かれた(おそらく)『家族じまい』を脱稿したときを振り返っての話。《音楽会》は第660回札響定期(評・中村隆夫)。いずれも道新カルチャー面。

  • コンビニ50年を短歌はどう詠ったか

    2024年05月15日

     コンビニのセブン−イレブンが東京に1号店を開いて50年を機に、山田航が短歌に詠まれたコンビニについて朝日新聞文化面に寄稿。1987年の『サラダ記念日』ではまだコンビニは詠まれていない。88年の小池光〈抒情せよセブン・イレブン こんなにも機能してゐるわたくしのため〉が初期の一首という。自作の〈たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく〉も紹介した。時代とともに都市生活、労働者、日常風景へと描き方が移ろうという指摘は興味深い。
     三浦綾子の小説『泥流地帯』『続泥流地帯』の朗読会が12日、渡辺淳一文学館で開かれた。上浦の町民が制作した紙芝居も上演された。道新札幌圏版。
     

  • 高浜虚子・年尾の北海道

    2024年05月14日

     高浜虚子、高浜年尾の親子と北海道のつながりに着目した特別展「虚子・年尾と北海道」が北海道立文学館で開かれている。年尾は小樽高等商業高校(現小樽商科大)に進学した。虚子は1897年に創刊された「ほとゝぎす」を引き継ぎ、1901年に「ホトトギス」に変更した。企画に携わった五十嵐秀彦は「ホトトギスの歴史とともに、年尾を通じてできた北海道との深い縁を知ってもらいたい」。6月9日まで。道新カルチャー面。
     小樽、苫小牧、赤井川などでロケした映画『ぼくのお日さま』が、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品される。監督は奥山大史。道新社会面。

  • 木彫り熊の「聖地」八雲

    2024年05月11日

     サタデーどうしん。木彫り熊の発祥の地のひとつとされる八雲で、第1号の作品が発表されて今年100年になる。歴史や魅力を見つめ直す機運が高まっているという。
    八雲の木彫り熊の仕掛け人は、尾張徳川家の当主徳川義親。1923(大正12)年に旅行先のスイスから木彫り熊を持ち帰った。八雲の酪農家、伊藤政雄が第1号を100年前の3月26日に品評会に出品した。
     道新カルチャー面では、フジコ・ヘミングの札響との共演のエピソードを紹介。
     札幌駅北口の北八劇場が11日に開業する。道新社会面。
     朝日新聞北海道面は、サハリンの植物を長年研究した北大名誉教授の高橋英樹が刊行した『サハリン島の植物』(北海道大学出版会)を大きく取り上げた。698ページの大作。

  • 4コマ漫画『ねえ、ぴよちゃん』2500回

    2024年05月10日

     函館出身の漫画家青沼貴子による新聞4コマ漫画『ねえ、ぴよちゃん』が、4月で連載2500回を迎えた。全国11紙で連載されている。《金曜シネマ》は吉田修一原作の『湖の女たち』。道新カルチャー面。

  • シェア型書店、拡大なるか

    2024年05月09日

     直木賞作家の今村翔吾たちが、東京の神保町でシェア型書店「ほんまる」をオープンした。書店がない自治体が4割を占める北海道でも、可能な取り組みかと。結成20周年を迎えた札幌のミュージカル劇団「もえぎ色」が、8月に札幌ドームでミュージカルや遊具を楽しむイベント「もえぎ色ワンダーランド」を行う。いわゆる新モードでの開催。《道内文学 創作・評論》は小田島本有。《奏で人札響》は、ティンパニ・打楽器首席奏者の入川奨。道新カルチャー面。
     北海道立近代美術館の整備構想は、道が年内にも基本構想を策定する考えを道議会文教委員会で示した。改修、現地新築、移転新築の3案はそのままで、50年間の維持費・大規模改修費を含めると335〜520億円という試算が新たに出てきたが、近美のあり方をどう考えるかの議論はとんと聞かない。このまま基本構想でいいのだろうか。中野北溟記念北のみらい書展は、大賞に幕別町の小室聡美による前衛作品『舞』が選ばれた。恒例の春の院展も始まった。道新社会面。
     朝日新聞文化面に載った嵐山光三郎による唐十郎追悼は痛快。「シチュエーションの会」「状況劇場」のネーミングを体現するかの型破りな行動を、間近で眺め、加担してきた人の文章だ。

  • 『帷子耀習作抄』刊行

    2024年05月07日

     詩集『帷子耀(かたびら・あき)習作抄』(阿吽塾)が刊行された。1968年に甲府市で生まれ、高一にして現代詩手帖賞を受賞。1973年に詩作を中断した。北見の詩人金石稔が編集し、阿吽文庫第1弾としての出版。道銀文化財団のらいらっく・ぎゃらりいは、大通2の「ほくほく札幌ビル」に移転し、15日に開館する。《道内文学 詩》は三角みづ紀。道新カルチャー面。

  • 紅テントの唐十郎が死去

    2024年05月06日

     道新社会面はこの日も書籍、書店の話題。夕張出身の鉄道愛好家奥山道紀が、旧夕張鉄道の歴史をまとめた『夕張鉄道 路線・沿革編』『夕張鉄道 車両編』(RMライブラリー)を刊行した。出版文化産業振興財団の調べによると、今年3月時点で書店がない道内市町村は42.5%に上った。
     劇作家の唐十郎が4日、死去した。84歳。

  • 北海道の野生動物、考古学の書籍刊行

    2024年05月05日

     帯広畜産大の柳川久名誉教授が『北の大地に輝く命 野生動物とともに』(東京大学出版会)を刊行した。ロードキル問題や野生のヒグマについても研究してきた。道新社会面。
     東京大学文学部常呂実習施設と考古学研究室が編集した『オホーツクの古代文化』(新泉社)が刊行された。北海道文化研究常呂実習施設が正式設置されて50年を記念して、専門家が執筆した。道新読書ナビ《ほっかいどう》。

  • ピアソン邸110年

    2024年05月04日

     北見市のピアソン記念館が建設から110年の節目を迎えた。野付牛を拠点にキリスト教の布教や奉仕活動に尽くしたピアソン夫妻が住んでいた。邸宅は2001年に北海道遺産に認定。NPO法人ピアソン会は、春先に道路や邸宅の周りを掃除する「冬あか一掃運動」を続けている。サタデーどうしん。
     同じく文化・エンタメ面は、道内出身の同学年のアーティスト山崎あおいとsnowy(佐々木萌)が、北海道を舞台にした楽曲「White」を配信リリースした。MVは下川町で撮影した。小樽出身のシンガー・ソングライターFurui Rihoがセカンドアルバム『Love One Another』をリリースした。

  • 北八劇場からラジオドラマ

    2024年05月03日

     5月11日の開館を控えた札幌のジョブキタ北八劇場から、演劇関係者によるラジオドラマ「全て上手くはいかなくても〜嘉久治と音二郎の物語〜」が、4月28日にSTVラジオを通じて生放送された。札幌出身の演歌歌手・本間愛音(あかね)のシングル『北の海節」が発売された。キングレコード移籍第1弾。青森で看護師を務めながら歌ってきたという。道新カルチャー面。《金曜シネマ》は、濱口竜介監督の『悪は存在しない』。
     日本芸術文化振興会(芸文振)が、映画や舞台芸術などへの助成金を取り消す要件を厳格化した。「公益が害される具体的な危険があり、かつ公益が重要なものであると認められた場合に限る」と要件を絞った。道新社会面。
     フジコ・ヘミングが4月21日に92歳で死去した。
     札幌10区新聞。北大工学部4年の細野仁は、独学で制作したデジタルアート作品が評価された。学生たちの作品を集めた「未完の大器」展(ギャラリーエッセ、茶廊法邑)で紹介される。本郷新の家政婦だった志村律子、孫の本郷弦による講演会「家政婦が見た本郷新」が6月1日にSCARTSコートで開かれる。

  • 宮の森のゴリラ展

    2024年05月02日

     札幌の木彫作家・小笠原み蔵の個展「宮の森の中のゴリラ展」が、宮の森のギャラリースペースZEROで始まった。これまでに700点以上を制作してきた。道新札幌圏版。
     道新カルチャー面。《展覧会》は、今年3月に89歳で亡くなった旭川の画家・神田一明回顧展(カフェ北都館ギャラリー)。《音楽会》は古楽のムジカ・アンティカ・サッポロによるイタリアンバロック特集の演奏会を取り上げた。評は八木幸三。伊藤氏貴の《文芸時評》。円城塔の《西の国から》。
    米国の作家ポール・オースターが4月30日に、77歳で没した。

  • 東川賞特別作家賞に「北海道101」

    2024年05月01日

     写真の東川賞は今年が40回目。国内作家賞は沖縄の石川真生、特別作家賞は「北海道101集団撮影行動」に贈られた。1968〜1977年に全国の大学生ら延べ600人が参加した。8月3日から受賞作家の作品展が開かれる。北海道書道展が開幕した。いずれも道新社会面。
     詩画作家の星野富弘が4月28日に78歳で、ブライダルデザイナーの桂由美が26日に94歳で死去した。

  • 札幌国際芸術祭ほか季評

    2024年04月30日

     道新カルチャー面。《美術季評》は、札幌国際芸術祭SIAF2024の一連の展覧会をはじめ、旭川、釧路で行われた意欲的な企画展を取り上げた。評は札幌芸術の森美術館学芸員の橋本柚香。北海道文化財団が、希望の大地戯曲賞、アート選奨K基金賞の贈呈式を行った。戯曲賞大賞は神戸市の七坂稲、優秀賞は東京の鈴木アツト、K基金賞は亜璃西社。中島岳志《論壇時評》は小池都知事の学歴詐称疑惑について。

  • 『左手のフルーティスト』刊行

    2024年04月29日

     札幌のフルート奏者で建築家の畠中秀幸が自伝『左手のフルーティスト』(音楽之友社)を刊行した。舘野泉との対談も収録している。自身が設計した西区のクリークホールを皮切りに、8月までのツアーも始まった。道新社会面。

  • 虚子とホトトギス

    2024年04月28日

     北海道立文学館で開かれている特別展「虚子・年尾と北海道」に関連し、俳人の五十嵐秀彦が虚子が長く主宰を務めた「ホトトギス」について講演した。

  • 文書館の仕事

    2024年04月27日

     朝日新聞読書面《著者に会いたい》。『文書館のしごと アーキビストと史料保存』を著した認証アーキビスト新井浩文を紹介している。〈いつの時代にも残すべき記録を残そうと考えた人たちがいて、我々はその恩恵を受けているわけです。現在は過去の積み重ねで、文書が残されていなければ検証できず、そこから学ぶこともできません〉
     STVラジオのパーソナリティ河村通夫が『北斎時代の「絵手本」で「絵皿」を解く 花・七福神の巻』(淡交社)を刊行した。絵皿のデザイン集とも言える絵手本を調べ、絵皿の絵柄に込められた意図などを読み解いた。昨年末から相次いでドキュメンタリー映画を公開したHBC、UHB、HTBの製作者が集まるトークイベントが5月26日、かでる2・6で開かれる。《展覧会》は北海道立近代美術館で開催中の「琳派×アニメ」展。道新カルチャー面。

  • 花見ジンギスカンどうよ?

    2024年04月25日

     道新札幌圏版の《みなぶん特報班》は、札幌・円山公園の花見ジンギスカンが禁止になったことへの賛否を調査した。6割近くが禁止に賛成。花見ジンギスカンの経験者としては、ノスタルジックな擁護の気持ちはあるし、肉の匂いより桜の香りという説に、そこまで繊細じゃないしとも思う。ただ、これは文化であるから残すべきだと真っ向から主張するのもいかがなものか。意見が割れて当然かもしれない。

  • 河﨑秋子が講演

    2024年04月24日

     道新社会面。北海道政経懇話会で直木賞受賞の河﨑秋子が「大地から芽吹く物語」と題して講演した。生い立ちから北海学園大の文芸サークルでの執筆、羊飼い時代、道新文学賞への挑戦などを語り、「北海道に人が生きて自然がある限り、私は物を書き続けるし、掘り続ける物語の種は多い」。
     文芸評論家の粟津則雄が19日に死去、96歳。
     道新札幌圏版《ディープに歩こう》琴似編は、コンカリーニョを取り上げた。1995年に開館。NPO法人が運営してきたが、JR琴似駅北口の再開発で立ち退かざるを得なくなった。寄付を募ったところ、1600万円が集まり、2006年に現在地で再開した。

  • 舟越桂追悼

    2024年04月23日

     道新カルチャー面にも、舟越桂追悼。4月14日に掲載した朝日新聞と同じ酒井忠康の談話体で、おそらく共同通信社稿だろう。「彫刻の詩人」であり、話題の尽きない人と把握することは一緒。具象彫刻にこだわり続けたことの分析が面白い。〈時代の表情を敏感に捉えるのではなく、ゆっくりゆっくり時代の空気を吸っていた。だから彼の仕事はいつになっても安心して見ていられるんだ〉
    《村雨ケンジのこのコマを見よ》は、弘兼憲史『黄昏流星群』。《音楽会》は、藤原道山の尺八とSINSKEのマリンバ演奏会。評・三浦洋。
     道新社会面の短信に、手塚治虫文化賞のマンガ大賞に、ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウス』。
     札幌圏版には、渡辺淳一の没後10年を記念する追悼朗読会を、札幌の渡辺淳一文学館で4月27日に開くとの記事。ドラマチックリーディンググループ「蔵」が朗読する。

  • 札幌の中1 バレエコンクール1位

    2024年04月22日

     道新社会面。札幌の中学1年生・山田優七(ゆな)がバレエコンクール「ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)」の9〜11歳のクラシック部門で1位になった。朝日新聞北海道面には、高校野球に特化した雑誌「北の球児たち」が50号に達したとの記事。高校野球ライター・長壁明がひとりで取材、撮影、執筆、編集を担当してきた。13年間の粘り強い仕事。

  • 日ロ文化交流に賛否

    2024年04月21日

     ロシアとの文化交流に賛否の声がある。日本政府は対ロシア制裁とウクライナ支援を続けているが、文化交流は一部再開する。22日から東京でロシア文化フェスティバル。道新社会面。北海道立帯広美術館では故星野道夫の写真展が11年ぶりに単独開催されている。6月30日まで。

  • 5月に始動 北八劇場

    2024年04月20日

     道新カルチャー面。札幌駅北の新劇場「ジョブキタ北八劇場」が、5月11日に開館する。226席。芸術監督を務める俳優・演出家・劇作家の納谷真大(まさとも)は、キーワードは「多様性」と「創る劇場」であると。ダンスやライブにも適した劇場機能と駅直結、車いす対応などの条件から、「誰に対してもウエルカムな、開かれた空間を目指す」。演劇人育成のワークショップなども手掛ける。山田航の《札幌零景》。

  • アイヌ民族のサケ漁権認めず

    2024年04月19日

     浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」が国と道に対して、サケ漁を行う権利の確認を求めた行政訴訟は、18日に札幌地裁がアイヌ民族の請求を棄却した。〈原告にサケ漁捕獲権があるとは認められない〉。道新一面。
     アンドレイ・タルコフスキーの映画『ノスタルジア』が、1983年の作品完成から40年を経て4K修復された。シアターキノで5月4日から10日まで上映される。札大教授の谷本和久(ロシア文学)が作品の背景などについて、道新カルチャー面に寄稿した。〈映画のタイトルのノスタルジアは故郷ロシアに対するものであると同時に、失われてしまった美に対するものでもある。教会の廃墟が繰り返し現れるのは、私たちの世界が「損なわれた」ものであることを伝えるためだろう。《金曜シネマ》は『プリシラ』。
     道新10区新聞では、札幌を舞台とする小説『サイレント・ヴォイス 想いをのこして跡をたどる』(ことのは文庫)を書いた松田詩依が紹介された。札幌の「999人の第九」の会は、第1回の演奏会から今年で40周年。
     朝日新聞文化面は、文化庁が取り組む漫画のアーカイヴ事業について。原画やネーム、セル画などの資料を保存するための実証実験で、ちばてつやの協力を得て2023年度から調査が始まった。昨年は出版社や美術館などでつくる民間組織「マンガアーカイヴ機構」も発足したが、国の関与が必要との声が上がっている。

  • 暮らしと仕事

    2024年04月17日

     道新カルチャー面。1月に始まった西條奈加エッセイ《ヤドカリ日記》は、帯広でヤドカリ暮らしをしていた当時から、東京の専門学校に通って翻訳家を目指した当時のこと。看護師を勤めながら撮影を続けている旭川出身の写真家・半田菜摘の写真集『カムイ』(日経ナショナルジオグラフィック)が刊行された。世代は異なるも、暮らしと仕事の両立を目指して打ち込む人たちがいる。

  • 馳星周『フェスタ』

    2024年04月16日

     道新カルチャー面。浦河町出身の直木賞作家、馳星周の競馬小説『フェスタ』(集英社)を刊行した。主人公は浦河で競走馬の育成牧場を営む親子。凱旋門賞レースをテーマとしている。《社会時評》は安田菜津紀。《音楽会》は「未来へつなぐコンサート 特別公演」。評は八木幸三。
     道新社会面。旭川の小熊秀雄賞は、京都の姜湖宙(カン・ホジュ)の『湖へ』(書肆ブン)に決まった。白糠アイヌミュージアム・ポコロが、14日にオープンした。町が旧アイヌ文化拠点施設「ポコロモシリ・チセ」を改修した。高床式食料庫「プ」、熊檻「エペレセツ」やチセなどを整備した。
     第71回写真道展の入賞作の特集紙面も掲載された。

  • 北海道書道展特集

    2024年04月15日

     道新には、第65回北海道書道展の特集紙面。大賞の土井伸盈(のぶみち)の作品は詩文書「回帰の鮭 波ひゞきを背にうけて」。旭川の詩人新井章夫による言葉。

  • 『はじめての虫さがし』

    2024年04月13日

    北海道博物館の堀繁久学芸員が、子ども向けの昆虫採集ガイド『ほっかいどう はじめての虫さがし』(北海道新聞社)を刊行した。ダンゴムシ、カタツムリ、バッタについて解説している。道新社会面。
     新国立劇場は、ポーランドのクシシュトフ・キェシロフスキ監督の映画『デカローグ』を4月から7月まで上演する。旧約聖書の十戒をモチーフとする全10話で、1話目には標茶町出身の高橋惠子も出演する。演出は演劇芸術監督の小川絵梨子と上村聡史。道新カルチャー面。

  • 反田恭平&JNOが夏に札幌公演

    2024年04月12日

     2021年のショパン国際ピアノコンクールで第2位を受賞した反田恭平が率いる「ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)」が、8月27日にKitaraで初めて公演する。JNOには札響からも、ヴァイオリンの桐原宗生とオーボエの浅原由香が参加している。ベートーヴェンの交響曲第2番などを演奏予定。7月13、14日にいわみざわ公園音楽堂キタオンで開かれるジョインアライブの出演者第1弾25組が発表された。氣志團、SUPER BEAVER、10-FEET、AJICO、imase、小泉今日子、HYDEら。道新社会面。
     旭川出身の漫画家・藤田和日郎の『黒博物館 ゴーストアンドレディ』(講談社)を原作とするミュージカル『ゴースト&レディ』を、劇団四季が5月に東京で上演する。《金曜シネマ》は『陰陽師0』。道新カルチャー面。

  • 『北の国から』の中嶋朋子

    2024年04月11日

     朝日新聞北海道面。JR根室線の富良野―新得間の運行終了に合わせ、『北の国から』に出演した中嶋朋子がインタビューに応じた。撮影当時、列車が出てくるシーンがあると、運行本数が少ないため撮影が限られ、とても1日では終わらないと感じたそう。〈8歳から30代まで、一番濃密な、いろんな変化のある時間を(ドラマと)共に過ごした。だから一つの人生なんですよね。私の人生というより、『北の国から』という別の人生があるという感覚なんです〉
     道新カルチャー面。《音楽季評》は、ピアノ王国・北海道を支える日本ショパン協会北海道支部の創立50周年記念コンサート、LCアルモーニカの『アンドレア・シェニエ』ほか。キタラと札幌音楽家協議会の連携プロジェクトによる「札幌の音彩Ⅰ」では伊福部昭『アイヌの叙事詩による対話体牧歌』、ブラームス『四つの歌』が演奏された。評は三浦洋。《奏で人・札響》はクラリネット首席奏者の三瓶佳紀。第50回美工展の北海道美術工芸展協会賞は、札幌の志水文恵『イマジナルセル』に決まった。児童文学の新人賞「福島正実記念SF童話賞」に、小樽の会社員やませたかゆき『ぼくがぼくに返信する方法』が選ばれた。

  • 道近美整備3案の試算

    2024年04月10日

     道新社会面。老朽化した北海道立近代美術館の三つの整備案それぞれの費用試算・休館期間がまとまった。改修案は75〜95億円・工事による休館は2年、現地新築案は165〜200億円・休館は4年、移転新築案は150〜185億円・休館は1年。

  • 『七帝柔道記』続編

    2024年04月09日

     道新カルチャー面は、『七帝柔道記Ⅱ 立てる我が部ぞ力あり』(KADOKAWA)を書いた作家・増田俊也インタビュー。古谷経衡の《考えるピント》は、ギャンブル依存症を取り上げた。《あにけん!》は、リモート作業が可能なことを強みとして成長を続けた新型コロナ禍のアニメ業界。
     道新札幌圏版。《ディープに歩こう》第10部・琴似のプロローグ。

  • ダーチャ・マライーニ 6月来日

    2024年04月07日

     イタリアの作家ダーチャ・マライーニ(87)が6月に来日する。父フォスコ・マライーニがアイヌ文化を研究するため北大にいたころ、スパイ容疑で学生らが逮捕された「宮沢・レーン事件」の宮沢弘幸、レーン夫妻と交流があった。ダーチャは昨年、宮沢との交流など反省をまとめた『Vita Mia』を刊行している。「宮沢・レーン事件を考える会」が招いた。道新社会面。
     道新《読書ナビ》の「ほっかいどう」は、山内正明『さっぽろ歴史&地理さんぽ』(亜璃西社)。著者は高校で地理を教える教員らのグループ「札幌地理サークル」の前会長。地名にこめられた歴史を掘り起こしている。

  • 日本文化人類学会が正式謝罪

    2024年04月06日

     日本文化人類学会の真島一郎会長が5日、オンライン記者会見でアイヌ民族をめぐる過去の研究姿勢について正式に謝罪した。1日には声明を発表していた。
     道新カルチャー面は、札幌交響楽団の正指揮者3年目となる川瀬賢太郎インタビュー。名古屋フィルハーモニー交響楽団音楽監督、オーケストラ・アンサンブル金沢のパーマネント・コンダクター(常任指揮者)の立場にもある。〈札響は圧倒的にリハーサル初日のクオリティーが高い。楽団員のみなさんがきっちり準備してくれているということでしょう〉。吹奏楽部や合唱部などへのアウトリーチもアイディアとして持っているそう。《音楽会》は3月11日に行われた声楽グループ「ラ・フォンテヴェルデ」の演奏会。ドイツ三十年戦争のころに生まれたハインリッヒ・シュッツの『音楽による葬送』などを演奏し、東日本大震災への鎮魂を掲げた。評は中村隆夫。他に《穂村弘の迷子手帳》。

  • ライジングサンは8月16、17日

    2024年04月05日

     道新カルチャー面。クリエイティブオフィスキューの若手タレント、阿部凜が、舞台、ドラマ、グラビアなど全国区で活動している。《金曜シネマ》は『パスト ライブス/再会』。今年のライジングサン・ロックフェスティバル(RSR)は、8月16、17日。スピッツが21年ぶり、スカパラは20回目の出演となる。
     昨年7月にオープンした札幌・狸小路の水族館「AOAO SAPPORO」の一角に、1200冊の蔵書を読めるスペースがある。書籍ディレクターが選書を担当している。道新札幌圏版。
     札幌出身の芥川賞作家・加藤幸子が死去した。3月30日、87歳。

  • 『虹と雪のバラード』廃止残念7割

    2024年04月04日

     道新札幌圏版《みなぶん特報班》は、地下鉄駅の札幌五輪テーマ『虹と雪のバラード』廃止の是非。「廃止は残念」が全体の7割を超えた。市は希望が多ければ復活する可能性があるとしている。
     道新カルチャー面。全国の女子大で、理系学部の新設が増えている。これまで理系学部に女性が少なかったのは「高校の進路選択の段階で高額の魅力を伝えきれていないのではないか」と2020年に建築学部を開設した武庫川女子大の教授。アーサー・ビナード《言の葉工務店》、桑原憂太郎の《道内文学 短歌》。
     道新10区新聞には、札幌・西区発寒にオープンした音楽専用ホール「クリークホール」(30席)の記事。音楽専門の編集者・小川直と妻の英李が、築50年の古民家を改修した。小樽在住のシンガー・ソングライター雷神古俣のライブが20日に時計台ホールで開かれる。指が動かなる難病を患い、独自の奏法を編み出した。北海道銀行本店の壁面に飾られていた本郷新、山内壮夫、佐藤忠良が1964年に制作したレリーフ『大地』の制作記録映像『三人の手』が、11日にSCARTSで上映される。

  • AIと文章

    2024年04月03日

     河﨑秋子が母校北海学園大の入学式で祝辞を述べた。道新デジタルに全文掲載。主にAI文章について述べた。〈本を心から愛する読者の方や、日頃資料や論文に接している先生方など読むことに熟達している方ほど、文章の細かな癖や書いた人の人となりを、場合によっては書いた本人以上に嗅ぎ取ってしまいます。/そうなるとAI文章の上手さというのは、せいぜい文の表面を整えるぐらいの意味にしかなりません。むしろ文章作成のためではなく自分以外、人間以外の視点を獲得するために、AIを活用した方が有効であろうと個人的には思っています〉
     北海道教育大名誉教授の木村方一らが解説する『北海道絶滅動物館』(北海道新聞社)が刊行された。恐竜やナウマンゾウの復元図は、札幌のボールペン細密画家・浩而魅諭(ひろじみゆ)が担当した。

  • イサム・ノグチ生誕120年

    2024年04月02日

     道新《発信》は「モエレ沼公園 イサム・ノグチ生誕120年」。2022年度のモエレ沼公園の利用者が98万人の過去最高を記録した。
     札幌の絵本作家かとうまふみによる『よつばのおはなし』原画展が、札幌・中島公園の657美術館で開かれている。657は中嶋児童会館と人形劇場「こぐま座」をつなぐ通路にある美術館。7日まで。札幌圏版。
     道新カルチャー面は、伊藤氏貴の《文芸時評》、五十嵐英彦の《道内文学 俳句》ほか。

  • 日本文化人類学会がアイヌ民族に謝罪

    2024年04月01日

     日本文化人類学会は1日、アイヌ民族遺骨の不適切な取り扱いや当事者不在で行われてきた研究について反省し、謝罪する。前身の日本民族学会が1989年に「反省」の見解を出しているが、以後の活動に十分生かされなかったと総括している。同じ道新社会面には、アイヌ民族と和人の交流を描いた映画『シサム』の先行試写会の記事も。ロケ地の白糠町で31日に行われ、中尾浩之監督と出演者が記者会見した。松前藩士が主人公。秋に全国公開される。山海塾主宰の天児牛大が74歳で死去、3月25日。

  • アイヌ民族の戦後史

    2024年03月31日

     道新札幌圏版。米バークリー音大の講師がジャズを教える「北海道グルーブキャンプ2024」のライブが、札幌芸術の森で開かれた。5年ぶり。バークリー音大のタイガー大越が指導した。
     第71回写真道展は、森町の高村忠峰の『薫炭なるベール』が大賞となった。29日に彫刻家の舟越桂、死去。72歳。2010年に亡くなった母道子は釧路出身。道新社会面。
     朝日新聞北海道面は《ポンペ物語 アイヌ民族の戦後史》。1960年代以降、アイヌ民族の復権や文化復興を目指し、さまざまな運動が盛んになった。1977年12月には、北海道経済史の北大教授が「アイヌの歴史は切り捨てる」と差別発言をしたことに反発した北海道ウタリ協会の結城庄司理事が、北大で座り込みをした。1974年、結城はシャクシャイン像の台座から「知事 町村金五書」の刻字を削り取ったとして、過激派との関係を疑われて逮捕される。1982年には豊平川で、約100年ぶりのアシリチエプノミを実行委員長として復活させた。

  • 北区の子どもに木のおもちゃ

    2024年03月30日

     道新札幌版。札幌市北区が、区内で生まれた子すべてに木製のおもちゃを贈る事業「木々(きき)」を始めた。なぜ木か。北区は、市が管理する街路樹や公園の樹木が多く、伐採木が多く発生するのだと。円山動物園で販売している動物積み木を作っている「草の実工房もく」が製作する。道新札幌圏版。狸小路10丁目の「ひょうたん横丁」が、70年の歴史に幕を下ろす。
     サタデーどうしん文化・エンタメ。ハイメスコンクールの管弦打楽器部門は、江別出身の朝倉愛(クラリネット)が最優秀賞となり、海外研修費50万円が贈られた。優秀賞は、マリンバの稲葉百花(苫小牧出身)ヴァイオリンの中村洋太(札幌出身)テューバの藤田裕人(同)。《展覧会》は独立展北海道展。
     横路孝弘のオーラルヒストリーは道新社会面にも。道内マターについては、北方領土、核ごみの最終処分場文献調査、萱野茂のアイヌ語による国会質疑などに触れた。
     アサヒ北海道写真展で、札幌の吉田守登の『釣人』がアサヒ大賞を受賞した。

  • 三原順の世界

    2024年03月29日

     道新カルチャー面は、東京で開かれている三原順(札幌出身)の「三原順の空想と絵本展」の紹介。山下和美(小樽出身)や笹生那実が始めた世田谷区豪徳寺のギャラリー「旧尾崎テオドラ邸」に、代表作の『はみだしっ子』の原画や、関連する遺品を展示した。テオドラ邸は築136年の洋館。《金曜シネマ》は話題作『オッペンハイマー』。
     札幌10区新聞。札幌出身のグラフィックデザイナー渡辺隆雄(1943〜2023)の回顧展「ワタキン 渡辺隆雄展」がマリヤギャラリーで4日から開かれる。北大正門前にあった金門堂書店の三男で、北海道学芸大札幌分校特設美術科を卒業後、東京のデザイン事務所を経て博報堂に入社。ホンダのスポーツカーやF1などの広告を手がけた。渡辺が遺したポスターや水彩画を展示する。10区新聞編集部がすすめる《本のじかん》は、本郷新の次男で俳優の淳が書いた『おやじとせがれ』(求龍堂)。
     朝日新聞夕刊1面は、この日に公開された佐藤栄作の沖縄密約問題を国会で追及した横路孝弘(当時社会党)のオーラルヒストリーの速報。沖縄戦で接収された土地の現状回復補償費400万ドルを、沖縄返還の協定に反して日本政府が秘密裏に肩代わりしたと毎日新聞が報じ、横路が国会で取り上げた。

  • 神田一明、長逝

    2024年03月28日

     旭川の画家・神田一明が14日、89歳で死去した。彫刻家リチャード・セラは26日、85歳で死去。
     創成川の東地区で85年にわたって営業してきた銭湯「七福湯」が31日で廃業する。市内で3番目に古いという。札幌・北区の画家・多田伸司の水彩画展が、ギャラリー大通美術館で開かれている。道新札幌圏版。
     朝日新聞夕刊に、金沢での興味深い試み。「第1回金沢国際実験音楽祭」が3月6〜10日に開かれた。北陸にゆかりのベルリン、台湾、南米のアーティストを招いた。作曲家・足立智美の提唱。ボイスパフォーマンス、即興、電子音楽など。ローカリズムを突き詰めることが、世界へつながる事例であり、「わからないものや、わからない人に対する想像力の欠如」に気づかせ、「他者に対する想像力を鍛える」ことが究極の目標という。

  • 乗代雄介の流儀

    2024年03月27日

     昨年12月に『それは誠』で織田作之助賞を受賞した江別出身の作家・乗代雄介。贈呈式で「歩くのが好きで、それを小説に生かしているつもりです」。東京都日野市に2ヶ月近く泊まり込み、朝昼晩と街の風景を見続けた。「(このような書き方をする作家は)ほかに思い当たらないが、それでも認めていただけたのは心強く思う」
     第65回北海道書道展の入賞者が発表された。大賞は土井伸盈(しんえい)の詩文書に決まった。道新社会面。

  • 一房の葡萄ふたたび

    2024年03月26日

     道新カルチャー面。有島武郎の童話『一房の葡萄』の文庫本と絵本版『ひとふさのぶどう』を、中西出版が刊行した。昨年の有島没後100年を記念しての企画。ニセコ町の有島記念館によると、若い世代の有島の知名度が低下しているという。絵本は、なかいけいが絵を、けーたろうが文を担当した。北海道立文学館は、札幌出身の加清純子の油彩画『H子』を28日から公開する。苫小牧の苫美堂を経営する加藤和東(かずとも)が文学館に寄贈した。4月6日まで常設展示室に飾る。中島岳志の《論壇時評》は大相撲と「入日本化」の概念について。《漫画最前線》は榎本俊二『ザ・キンクス』。

  • いろりっこの会

    2024年03月25日

     芥川賞作家・高橋揆一郎が設立した童謡や唱歌を歌う札幌の市民団体「いろりっこの会」の例会が250回を迎えた。1990年設立。高橋が作詞した『いろりっこの子守歌』をオープニングに歌っている。道新札幌圏版。

  • 富良野―新得間の記憶

    2024年03月24日

     映画『鉄道員(ぽっぽや)』の撮影を担当した木村大作(84)の講演が、ロケ地の南富良野町で開かれた。映画に出てくる「幌舞駅」は幾寅駅がモデル。JR根室線富良野―新得間は3月で廃線になり、町が幾寅駅を保存活用する方針という。北海道立近代美術館では、第90回記念独立展北海道展が開かれている。道内巡回は2018年以来。道新社会面。
     同じ根室線の一部廃線をめぐる話題でも、朝日新聞北海道面は、ドラマ『北の国から』の舞台である布部駅をクローズアップ。駅前商店の店主坂口道郎に取材した。戦没した父の思い出、「汽車通」の様子、そしてドラマのロケシーンとの遭遇。田中邦衛、竹下景子、子役で出演していた吉岡秀隆、中嶋朋子の当時のサイン。撮り鉄たちの写真に、風景や景観を見直す新たな視点を与えられたとも言う。〈廃駅は残念だが、その後もこの風景は残る。最後にそのことに気づけただけでも救われた気がする〉
     ピアニストのマウリツィオ・ポリーニ死去、82歳。

  • PMF2024にグランディ客演

    2024年03月23日

     34回目となる今年のPMFの概要が発表された。7月10日から30日まで。首席指揮者はマンフレート・ホーネック。客演は次期札響首席となるエリアス・グランディ。日本ミステリー文学大賞の贈呈式が東京で開かれ、受賞した三笠出身の今野敏は「これからも書き続けることがミステリー界全体への恩返しになると覚悟を新たにしています」。井上靖文化賞は、写真家の石内都と遠軽出身の安彦良和に決まった。鹿追が舞台の映画『おしゃべりな写真館』は札幌の上映会が好評で、小樽、江別、旭川、釧路、北見でも上映することが決まった。道新社会面。
     九九が言えない子供たちを生む義務教育に警鐘を鳴らす『「九九」が言えないまま大人になる子どもたち』(寿郎社)が刊行された。著者の平山裕人は元小学校教員。九九を暗記したかどうかの点検は、教育課程で求められていないという。《展覧会》は南区のアーティストたちによる「ガパージュ 隙間のページ」。優れた写真家に贈られる周南市の林忠彦賞を、岩手の写真家奥山淳志の写真集が受賞し、来年1月に東川町文化ギャラリーでも受賞作写真展が開かれる。道新カルチャー面。

  • アイヌ文化PRコーナー移設へ

    2024年03月22日

     札幌市は、サッポロファクトリーにあった「アイヌ文化PRコーナー」を、10月に地下鉄大通駅コンコースの大通交流拠点地下広場に移設する。アイヌ文化体験や工芸品購入ができる。広場にあった大通情報ステーションは3月で廃止する。地域に根付く食文化を認定する文化庁の「100年フード」に、石狩鍋が選ばれた。すでに釧路のそば、余市のひる貝カレー、帯広の豚丼が認定されている。道新札幌版。
     道新カルチャー面。札幌出身のトライプレインがデビュー20周年を迎え、ベストアルバム2枚を同時発売し、47都道府県ツアーも行う。《金曜シネマ》は『COUNT ME IN 魂のリズム』。鹿追町を舞台にした映画『おしゃべりな写真館』が帯広に次いで札幌でも上映される。

  • 札幌同期二人展

    2024年03月21日

     9日から24日まで東1丁目劇場で開かれている「『あさきゆめみし』×『日出処の天子』展―大和和紀・山岸凉子 札幌同期二人展―」のトークイベント詳報。大和は札幌に生まれ20歳まで、山岸は上砂川に生まれ13〜22歳を札幌で過ごした。それぞれの代表作が古代日本をテーマとしたことに「私たちの共通点は乾燥系だから」(大和)と話した。設立を目指す北海道マンガミュージアム構想の関連で、北海道に漫画家が多い理由として「北海道には新天地を求めて来た、ある意味はみ出した人が多いから(新たなものを)描けるのでは」(山岸)と分析した。朝倉かすみ《わたしがちゃんこかったころ》も、大和・山岸展を話題にしている。《シロカニペ 銀の滴》は、知里幸恵の復刻された直筆ノートが12年ぶりに再刊されたという話題。《音楽会》は尾高忠明が降板した第659回札響定期(評・三浦洋)。札響コントラバス奏者・大沢敬の還暦コンサートの告知も。道新カルチャー面。

  • 地域の書店存続のために

    2024年03月20日

     道新の《水曜討論》は「マチの書店 存続の鍵は」。いわた書店店主の岩田徹は、1万円選書の効用をあらためて。ISBNコードが印刷されたことで、都市や郊外の大型書店やチェーン店が売れ筋の本だけを素早く並べることができるようになった〈毎日数百点も出る新刊本から本屋自身が面白い本を並べないと、客は店頭から離れます。何が売れているかではなく、面白い本を探したいのです〉。作家の今村翔吾は「シェア書店」の魅力を語る。
     札幌市は新しい認定制度「地域文化財」の候補4件を発表。無形民俗文化財は篠路歌舞伎、新琴似歌舞伎。有形文化財は苗穂小学校学校記念館と明治30年代に建築されたとみられる個人住宅。道新札幌版。
     11月に開かれる「北海道フードフィルムフェスティバル」のプレイベントが19日に開かれた。クリエイティブオフィスキューと道新による実行委主催。食に関するドキュメンタリー映画「(仮)北の食景」を制作している。
     朝日新聞北海道面。盗まれることが多い駅ノートは廃線、廃駅が決まると被害が増す傾向にあるそうだ。埼玉県本庄市の65歳の医師が、旅先の駅ノートを撮影したものを冊子にする「復元」を続けている。

  • アイヌの建築と工芸展

    2024年03月19日

     道新1面に、東京の国立近現代建築資料館で、ウポポイ主催の「アイヌの建築と工芸の世界」展の記事。映画『ゴールデンカムイ』の効果もあってか、開幕から17日間で3,500人が来場する異例の人気という。
     道新カルチャー面は、芥川賞を受賞した九段理江のエッセー。安田菜津紀の《社会時評》、三角みづ紀の《道内文学 詩》。《展覧会》は、北翔大学の「Work Progress」。2月に90歳で亡くなった旭川育ちのグラフィックデザイナー遠藤享(すすむ)の追悼展が、銀座で開かれている。

  • 旧ジャッカ・ドフニの資料展示

    2024年03月17日

     北海道立北方民族博物館が収蔵するサハリン少数民族ウイルタの企画展が、16日から東京・高島屋史料館TOKIOで始まった。ウイルタ民族のゲンダーヌ(北川源太郎)が制作した民族資料は、1978年にゲンダーヌらが網走に開設した「ジャッカ・ドフニ」で展示していたもの。2010年に公開を終了したため、北方民族資料館に引き継がれた。

  • ウエスギ専務の17年

    2024年03月16日

     道新カルチャー面は、3月で終了するSTV『ブギウギ専務』の上杉周大インタビュー。25歳から42歳まで17年間続いた。大空町に住む講談師・神田山陽が網走と札幌で朗読劇『キャンプ TO キャンプ〜想像力の届く果てまで』を上演する。山田航《札幌零景》は、南区川沿の元ボウリング場だった電器店。
     道新社会面には、台湾先住民族の博物館「台湾原住民族文化圏区」の専属舞踊団「ナルワン音楽舞踏団」の特別公演が16、17日にウポポイで上演されるという記事。

  • 『ふてほど』は不適切か?

    2024年03月15日

     朝日新聞文化面は、宮藤官九郎作のドラマ『不適切にもほどがある!』をしっかり論じている。過剰なコンプライアンス、ポリティカルコレクトネスへの風刺やレトロなカルチャーへの一方的な賛美だけでなく、世代間の「常識」の差異を描いて考えさせるのだが、フェミニズムをはじめ社会的弱者の問題に長年かかわってきた研究者は「肯定か炎上かの二極化の方に寄与している」との受け止め。こうした記事を通じて議論が深まることこそ、クドカンの想定どおりだろう。
     100歳の書家中野北溟がの作品を常設展示する「中野北溟記念室」を、札幌市が来年3月末までに教育文化会館2階に開設する。羽幌中央公民館の「書の北溟記念室」に続く施設。昨年5月に作品731点(評価額約13億6200万円)を寄贈していた。道新社会面。
     道新カルチャー面の《金曜シネマ》は『デューン 猿の惑星PART2』。
     札幌10区新聞には「北海道古文書解読サークル」が昨年、創立30周年を迎えたという話題。毎月第3土曜の午後に、かでる2・7に集まって解読を進めている。簾舞と近隣地区の歴史を綴った『簾舞・豊滝・砥山 百五十年史〜旧簾舞通行屋開設150年の歩み』が刊行された。簾舞地区まちづくり連合会がまとめた。

  • 偽ビートルズ

    2024年03月14日

     道新札幌圏版に、H-1甲子園(ハイスクールマンザイ)で優勝した漫才コンビ「偽ビートルズ」が取り上げられた。石狩高と新川高の2年生コンビ。栄町中の同級生だったが、それぞれ高校に進んでからコンビを結成した。コンビ名は「面白そうな名前」だからと付けただけで、ビートルズの曲は知らないそうだ。
     道新社会面。北海道戯曲賞大賞に神戸の七坂稲『迷惑な客』、優秀賞に鈴木アツト『犬と独裁者』が選ばれた。
     朝日新聞《明日へのLesson》は、株式会社COTEN代表の深井龍之介。メタ認知のきっかけを提供するとのミッションはわかりにくいが、世界史のデータベースを感覚的に理解しやすい形で提供して学びに結びつける活動のようだ。

  • 用済みの歌 復活する歌

    2024年03月13日

     札幌市営地下鉄の到着メロディーだった『虹と雪のバラード』が今月中に放送中止となることに、市民から継続を望む声があるという。市は五輪の招致活動断念に伴い、と説明している。著作権の使用料が年間50万円かかることも理由のひとつだろう。また招致活動が始まれば復活させるという。そもそも招致活動に利用しただけ、用済みだということか。同じ道新社会面には、千秋庵製菓の看板商品「山親爺」のテレビCMを26年ぶりに再開するとの記事も。こちらは商品パッケージの刷新に合わせ、新しいアレンジで放送する。歌は函館出身のYUKI。
     道内でもたびたび展覧会が開かれ、人気があったスウェーデンの陶芸家リサ・ラーソンが92歳で死去。朝日朝刊には、同じく動物をモチーフにした画家・谷川晃一の訃報も並んでいる。
     道新札幌版では、南区唯一の図書館である澄川図書館を、2032年に供用開始予定の地下鉄真駒内駅の複合庁舎へ移転する計画に、住民が反対しているとの記事。

  • 句読点問題を多角的に

    2024年03月12日

     中村和恵の《考えるピント》は、2月20日の同欄で武田砂鉄が書いた「「句読点怖がる」言説に思う」を受けての原稿。〈変化していく現在に自分の未来を見いだす人と、過去に安らぎを見いだす人は、求めるものが違う〉と述べ、自分なりのやり方を貫く宣言をしている。〈異なるものが異なるままに、同じ時代に隣人として存在する、そのやりかたを、お互いに学べるはずだと考えるから。多くの民が、また動物たちがそうしてきたように〉。複数の論者による多角的な現代社会論は興味深い。
     道新カルチャー面では、漫画『セクシー田中さん』の芦原妃名子が自殺した問題の背景を論じている。日本テレビのドラマが、原作の意図を正しく反映しなかった経緯があり、SNSが炎上したため作者が心を痛めた、ともみられている。原作改変が制作側と作者の間で問題になり、作者が終盤の脚本を担当せざるを得なかった。上智大の音好宏教授は「テレビドラマには、さまざまな意向を反映した妥協の産物、という側面がある」とし、番組関係者の調整能力の欠如を問題視する。対策として、契約の明文化や弁護士の代理人を立てることなどを識者が提言している。

  • 米アカデミー賞に日本映画2作

    2024年03月11日

     朝日新聞夕刊は、米アカデミー賞の授賞式で、山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞を受賞したと報じた。視覚効果賞は監督以外のスタッフが受賞することが多く、監督としては『2001年宇宙の旅』のキューブリック以来2人目という。宮崎監督の受賞は2003年の『千と千尋の神隠し』以来2回目となる。

  • 大和和紀と山岸凉子

    2024年03月10日

     朝日新聞北海道面には、東1丁目劇場で開催中の大和和紀・山岸凉子2人展の詳報。初日9日のトークイベントでは「札幌同期」の2人が、雪まつりを訪れた手塚治虫に原稿を見てもらったエピソードも。今後について、山岸は「安彦良和先生が(展覧会を)やってくれればすごいだろうと思う」と話した。
     道新読書ナビの《ほっかいどう》は、柳原滋雄『実録・白鳥事件』(論創社)。フリージャーナリストが1952年の白鳥事件について執筆した。

  • 障がい者アート展

    2024年03月09日

     道新札幌版。札幌市民ギャラリーで「北海道障がい者のアート展〜みんなのイマジネーション〜」が開かれている。道教育大のHUGでは、岩見沢校美術文化専攻の学生の展覧会「more over」も。
     サタデーどうしん文化・エンタメ面には、札幌在住の歌人芸人・岡本雄矢の2冊目の著書『センチメンタルに効くクスリ』(幻冬舎)を出したとの記事。

  • ジェンダー・ギャップとアート

    2024年03月08日

     3月8日の国際女性デーの道新一面は、北海道のジェンダー・ギャップ指数が都道府県で最下位である事実を報じた。札幌圏版には、子育て中の母親ら女性でつくる吹奏楽団「札幌mommy’sプラス」が結成17年との記事。
     道新カルチャー面には、札幌出身の宮嶋風花監督の商業デビュー作『愛のゆくえ』が、9日からシアターキノで上映されるとの記事。半自伝的な物語という。《金曜シネマ》は香港映画『燈火(ネオン)は消えず』。6月に閉館する道新ホールでは、5月17日にコッキーポップコンサートが開かれる。佐々木幸男、すずき一平、大石吾郎、因幡晃、高木麻早、庄野真代。懐かしすぎる。《ステージ》は、『鮭なら死んでるひよこたち』。岡山県の守安久仁子の作を、札幌の羊屋白玉が演出し、出演者は札幌、福岡、名古屋、東京から参加した。
     国際女性デーと同じ日の社会面に、こんな記事も。SIAFの関連で開かれたアート展「すすきの夜のトリエンナーレ」で、60代男性美術家による来場者へのコスプレ強要がハラスメントに当たるとして、被害者の会が声明文を発表した。ススキノで働く女性のドレスなどで扮装してもらい、SNSに写真を載せるなど、いわゆる「参加型」のアートとしても理解は得られないだろう。
     札幌10区新聞。北海道博物館では、スタッフ一押しの収蔵資料や活動を紹介する展覧会が開かれている。北海道銀行本店のビルで開かれてきた道銀文化財団のコンサートは、3月14、15日で最後となる。ビル移転に伴う取り壊しに伴う。
     朝日新聞北海道面には、星野道夫の道内では11年ぶりとなる写真展「悠久の時を旅する」が、4月20日から北海道立帯広美術館で開かれるとの記事。社会面。2019年のあいちトリエンナーレで、河村たかし市長が「表現の不自由展・その後」を問題視して補助金を一方的に打ち切ったことに対する実行委員会の訴えは、名古屋市の敗訴が確定した。

  • 池澤夏樹と水越武対談

    2024年03月07日

     作家の池澤夏樹が北海道新聞に連載したエッセイ「天はあおあお 野はひろびろ」を中心に編んだ同名の書籍が刊行され、池澤と写真家の水越武による対談が紀伊國屋書店札幌本店で開かれた。北海道は〈食料自給率が高く、北海道なりの暮らし方で経済を立てれば独立できるんじゃないか。その方が、これから幸せでは〉と述べた。温暖化や原発の問題については〈ごく一部が潤うから止めようがない。あまりにも経済が主体すぎる〉〈お金がなかったら生きていけないけれど、文化がなかったら生きている値打ちがない。そういうところを積極的に証明していくのが、文化に関わる人間の義務だと思う〉。
     図書館など読書環境の改善に取り組む任意団体「北のまちの図書館を創る会」が、情報誌『くすくす』を3号まで出した。道立図書館市町村支援課長や市立小樽図書館長などを務めた鈴木浩一(函館在住)が中心で、昨年夏に発足した。くすみ書房が出していたフリーペーパーの名前を引き継いだ。
    《音楽会》は広上淳一指揮の札響hitaru定期。ピアノ独奏は伊藤恵(評・八木幸三)。いずれも道新カルチャー面。
     100歳の中野北溟が、「イランカラプテ」の書2点を、白老のウポポイに寄贈した。常呂町(現北見市)出身の吉田裕史が、首席客演指揮者を務めるウクライナ国立オデッサ歌劇場の来日公演のため取り組んでいたCFは、1500万円以上を集めた。首都圏での40人規模の公演が実現することになった。建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」に、はこだて未来大などを代表作とする山本理顕が選ばれた。いずれも道新社会面。この日は盛りだくさん。

  • 川村湊の河﨑秋子評

    2024年03月05日

     文芸評論家・川村湊による河﨑秋子評。『ともぐい』は〈人間と熊との葛藤よりも、「熊爪」の人間社会における立場や地位に目を注いでいることが、この作品を原型の「熊爪譚」より一回り以上も作品世界を拡充させている〉。北海道の風土に根ざしながらも、〈北海道(風土)を超える文学を、河﨑秋子に期待することは、単なる望蜀の言ではない〉と述べる。〈北海道文学の正統的な後継者〉でもあるとは、最大級の賛辞と言える。道新カルチャー面。
     伊福部昭の評伝を刊行した片山杜秀のインタビュー。『大楽必易 わたくしの伊福部昭伝』(新潮社)。1980年代に伊福部への、通算100時間にも及ぶインタビューを行っている。伊福部は日本やロシアに限らず、作曲家の原体験にある《道内文学 創作・評論》(評・小田島本有)、中島岳志の《論壇時評》。
     札幌の音楽界の長老、梶原信幸(ミスジャメイカ経営)、小島紳次郎(ウエス社長)、高瀬清志(芸森スタジオプロデューサー)が、沖縄民謡とラテン音楽のバンド「KACHIMBA」をプロデュース。5月にCDをリリースする。道新札幌圏版。

  • 岩船修三の戦争画

    2024年03月03日

     函館出身の画家岩船修三(1908〜1989)の戦争画が新たに見つかったという記事が、道新一面トップ。1943年のアッツ島玉砕を題材にした『山崎部隊アッツ島玉砕決意』。全滅する直前の旧日本軍の兵士が暗く、荒いタッチで描写されている。函館護国神社に保管されているのを、道立函館美術館の田村允英学芸員が2022年に発見した。戦時中の新聞に、旭川の第七師団に献納されたことは知られていた。東京国立近代美術館にある藤田嗣治の『アッツ島玉砕』より大きい縦190cm、横280cmで、現存する戦争画で最大とのこと。アッツ島玉砕では、戦死者2638人のうち864人が道内出身者だったため、陸軍省か第七師団が岩船に制作を依頼したと見られている。岩船が第七師団報道部に配属されたのは、この絵の制作のためだったのか。十数人の兵士が並んでいるこの構図をどのようにして選んだのか、描いたのかに興味がわく。
     朝日新聞朝刊《日曜に想う》は、編集委員の吉田純子があらためての小澤征爾追悼。有名な「N響事件」にも言及している。結びはメゾソプラノのワルトラウト・マイヤーのこの言葉。〈己の心で決断し、道を選びとることが、人生においては最も大切です。終わることも、始まることと同じくらい素晴らしいことなのです〉

  • アイヌ文化PRコーナー移設へ

    2024年03月02日

    PRコーナー」を、10月に地下鉄大通駅コンコースの大通交流拠点地下広場に移設する。アイヌ文化体験や工芸品購入ができる。広場にあった大通情報ステーションは3月で廃止する。地域に根付く食文化を認定する文化庁の「100年フード」に、石狩鍋が選ばれた。すでに釧路のそば、余市のひる貝カレー、帯広の豚丼が認定されている。道新札幌版。
     道新カルチャー面。札幌出身のトライプレインがデビュー20周年を迎え、ベストアルバム2枚を同時発売し、47都道府県ツアーも行う。《金曜シネマ》は『COUNT ME IN 魂のリズム』。鹿追町を舞台にした映画『おしゃべりな写真館』が帯広に次いで札幌でも上映される。

  • 一房の葡萄ふたたび

    2024年03月02日

     道新カルチャー面。有島武郎の童話『一房の葡萄』の文庫本と絵本版『ひとふさのぶどう』を、中西出版が刊行した。昨年の有島没後100年を記念しての企画。ニセコ町の有島記念館によると、若い世代の有島の知名度が低下しているという。絵本は、なかいけいが絵を、けーたろうが文を担当した。北海道立文学館は、札幌出身の加清純子の油彩画『H子』を28日から公開する。苫小牧の苫美堂を経営する加藤和東(かずとも)が文学館に寄贈した。4月6日まで常設展示室に飾る。中島岳志の《論壇時評》は大相撲と「入日本化」の概念について。《漫画最前線》は榎本俊二『ザ・キンクス』。

  • 特撮への貢献で受賞

    2024年03月01日

     3月1日は大谷翔平結婚のニュースでもちきり。
     池田町出身で、特撮映画のセットや造形美術を長年手がけてきた村瀬継蔵(88)が日本アカデミー賞協会特別賞を受賞した。東宝で円谷英二監督の『大怪獣バラン』『モスラ』『大怪獣ガメラ』などの怪獣着ぐるみを手がけた。今夏は総監督を初めて務めた『カミノフデ〜怪獣たちのいる島〜』が公開される。主題歌『Kaiju』は吉田美和が作詞作曲した。《スクリーン》は韓国映画の『ソウルメイト』。道新カルチャー面。
     札幌映画サークルが創立60周年記念誌を作った。1963年に札幌勤労者映画協議会として発足。1974年に現在の名前になった。会員は210人。国内外の名画を年6回開いている。吉永小百合『キューポラのある街』『いつでも夢を』を4月に札幌エルプラザで上映する。道新札幌圏版。
     道庁が創設した「北のアニメ大賞」の大賞は、マレーシア在住で室蘭出身のKazune H Uranoの『きつねのしりとり』に決まった。QRコードから拝見した作品はとても楽しいが、観光振興のPR動画を思わせた。そういう趣旨の賞なのですね。道新社会面。

  • 演劇シーズン復調の兆し

    2024年02月29日

     札幌演劇シーズン2024―冬の来場者(速報値)は、3団体計33公演で1952人だった。新年度からは年1回に集約し、7月13日から8月31日まで。5月に開館する北八劇場も活用する。《音楽会》は札幌交響楽団第658回定期。バーメルトの常任指揮者として最後の演奏は「彼の指揮理念は楽員に主体性をゆだねる音楽表現ではと考えていたが、それが如実にうかがえる演奏だった」(評・中村隆夫)。直木賞の万城目学の寄稿、伊藤氏貴の《文芸時評》も。
     芸術選奨の文部科学大臣賞に、道内からはHBC報道部デスクでドキュメンタリー番組プロデューサーの山崎裕侍、江別出身の乗代雄介が選ばれた。道新社会面。

  • マンガミュージアム構想

    2024年02月27日

     北海道出身・ゆかりの漫画家29人が「北海道マンガミュージアム」を設立しようと活動している。大和和紀が代表。同期の山岸凉子に声をかけ、2021年に設立に向けて動き出した。18人の発起人、11人の賛同者がいる。地域の漫画家が中心になって設立を目指すのは初めてという。展示と原画のアーカイヴを2本柱とし、文化的な価値の発信と観光資源として活用してもらうべく、札幌市にも働きかけている。《まんが最前線》は、イ・ジョンチョルちょ、印イェニ訳『カデギ 物流倉庫でミックスコーヒーをがぶ飲みしながら働いた話』(評・阿部幸弘)。「『植民地挑戦の愛国婦人会』を刊行して」は北海道情報大名誉教授の広瀬玲子の寄稿。道新カルチャー面。

  • 鹿追舞台の映画『おしゃべりな写真館』

    2024年02月24日

     道新社会面。鹿追町を舞台にした映画『おしゃべりな写真館』の先行上映が、シネマ太陽帯広で23日に始まった。緑内障で視野が欠けてしまった写真かと、心に傷を持つ少女のふれあいを描くストーリー。白老のウポポイで活動する舞踊チームは、東京公演を開催。イヨマンテを題材としたオリジナル演目『イノミ』を上演した。アイヌ文学研究家の中川裕・千葉大名誉教授が講演した。〈アイヌ文化では動植物だけでなく、家や鍋にも魂があると考える。カムイは神とおいうよりも『環境』と考えると理解しやすい〉。24、25日の札響定期に出演予定だった尾高忠明が、肺炎のため降板すると23日に札響が発表した。代わりの指揮者は藤岡幸夫。

  • 山本竜也『地方史のつむぎ方』

    2024年02月23日

     札幌気象台職員の山本竜也が『地方史のつむぎ方』(尚学社)を刊行した。自らの調査の手法を詳しく説明するだけでなく、地方史の調査・研究に携わる24人にインタビューし、その動機や調査の課程を語ってもらっている。地方史と銘打ちながら、インタビューした相手の分野は多種多様で、通常なら「○○史」「○○文化史」と、その分野の関係者を中心に共有されていくはずの仕事だ。これを「地方史」でひとくくりにして提示し、歴史に向き合う人のアプローチに目を向けたことが、この本のポイントではないか。歴史を調べる、あるいは調べようとする人に必要な技術と心構えの両方を学べる一冊である。道新札幌圏版。
     同じ紙面。北海道地域文化選奨に、札幌のどさんこ青少年オーケストラ協会が選ばれた。元中学教師の助乗慎一代表が2013年に設立し、10人で運営している。江別、岩見沢、名寄、旭川、音更にジュニアオーケストラを設立して活動している。
    特別賞は千歳市民文芸の会。
     道新カルチャー面は、大正期の女性解放運動家伊藤野枝をモデルとする村山由佳の小説をもとにした映画『風よ あらしよ』の柳川強監督。
     社会面には、河﨑秋子が受賞した直木賞と芥川賞の贈呈式の話題。〈これからも生き物の命を書いていきたいという志だけは死ぬまで変わらないと思います〉。日本芸術院賞に、筒井康隆や、霧の彫刻で知られる中谷芙二子(札幌出身)が決まったとの記事も。

  • 93歳バリトン歌手

    2024年02月22日

     道新カルチャー面は、旭川生まれの93歳のバリトン歌手川村英司が12月に札幌で演奏会「音楽に寄せて」を開いた。日本の童謡、ドイツ歌曲などを披露。安田菜津紀の《社会時評》、藤田睦美の《居酒屋小太郎物語》、天辰保文の《音楽アラカルト》第1154回。《音楽会》はマリンバの工藤瑠璃、上野岳のリサイタル。
     道新札幌圏版。青森市在住の美術家恒永さくらが、北海道文化財団アートスペースで刺繍作品の個展を開いている。タイトルは「The Warp and woof of a whale of a tale ―経緯、その鯨ほどの余白」。

  • ていね山映画祭が原案募集

    2024年02月21日

     手稲区が「ていね山映画祭」で上映する短編映画の作品原案の募集を始めた。今回が2回目で、グランプリは10月の映画祭で上映する。テーマ自由で30分程度。5月27日締め切り。脚本や漫画、小説などの形式で応募できる。手稲区や手稲山が象徴的に東條することが条件。昨年製作した『7月の約束』(佐藤智也監督)が、今年2月にインド・チェンナイの映画祭で最優秀国際短編映画賞を受賞した。道新札幌版。
     同じく札幌圏版には、手稲区の絵本専門店「ちいさなえほんや ひだまり」が開店30周年を4月に迎えるとの記事も。月刊で5000部発行している絵本通信「ひだまり」は2月で400号に達したという。同じ紙面には、ベーシストの今沢カゲロウ(江別市出身)が、セミの幼虫を素揚げした昆虫食「セミゴンゴ」を開発したとの記事も。道銀芸術文化奨励賞を受けた日本画家水野剛志(ひさし)の個展が、道銀らいらっく・ぎゃらりぃで開催されている。

  • 『治安維持法の歴史』

    2024年02月20日

     道新カルチャー面。『治安維持法の歴史』全6巻(六花出版)を編纂した小樽商科大の荻野富士夫名誉教授の寄稿。〈植民地や「満州国」での運用を抜きに治安維持法の本質は語れない〉。《武田砂鉄の考えるピント》は「「句読点怖がる」言説に思う」。「若者の価値観」とひとくくりにする風潮を問う。北海道立文学館の特別展「100年の時を超える」紹介、《道内文学》短歌(評・桑原憂太郎)も。

  • サクラの行方

    2024年02月19日

     しばらく投稿がままならなかったが再開。
     道新社会面。七飯町のサクラ研究家・浅利政利が35年前にポーランドに送った「紅豊」やチシマザクラ、ミヤマザクラの行方を探し当てた英国のジャーナリスト阿部菜穂子が、アウシュビッツ強制収容所で亡くなった神父の話を交えて著書『The Martyr and Red Kimono(殉教者と赤い着物)』として刊行する。
     道新読書ナビに、佐川光晴『あけくれの少女』(集英社)の書評。広島県尾道市から、東京、高崎、太平洋上、浜松を転々としながら、諦めずに自分の道を探し続ける真記の生涯を追う。評は前野久美子。《訪問》は『アイヌもやもや』(303BOOKS)を書いた北原モッコトゥナシ北大教授。

  • 東大闘争のアーカイヴ

    2024年02月18日

     道外の話題。昨年、1960年代の東大闘争のビラなど資料約6 ,500点が東大文書館に納められた。当時の東大生らが集めたもの。国立国会図書館にも元東大全共闘代表が5,400点を28巻に製本したものを寄贈した。貴重なアーカイヴだが、独特の用語が使われるなどわかりにくいので、オーラルヒストリーや手記と併せると研究しやすくなると研究者。

  • 「人権」掲げる歌集

    2024年02月17日

     サタデーどうしん文化・エンタメは、新歌集『ヒューマン・ライツ』(左右社)を出した北山あさひのインタビュー。2021年道新短歌賞受賞者。タイトルの意味は「人権」。《ステージ》は倉本聰『ニングル』のオペラ版東京公演。山田航の《札幌零景》は、ニセ時計台の話題。

  • 映画『ゴールデンカムイ』

    2024年02月16日

     道新カルチャー面は、公開中の映画『ゴールデンカムイ』の久保茂昭監督インタビュー。「明治時代や北海道をリアルに描けるかどうかが肝になる」と考え、撮影準備には一般的な邦画の2、3倍の時間をかけたという。北海道二期会が11月23、24日に札幌市教育文化会館で開くオペレッタ『こうもり』の制作発表を1月に行った。1964年設立で、今年が創立60周年。ドイツ語歌唱、せりふは日本語。川瀬賢太郎指揮の札響。《金曜シネマ》は『カラーパープル』。
     道新社会面は、第14回ロケーションジャパン大賞の部門賞に、札幌でロケを行ったネットフリックスのドラマ『First Love 初恋』が選ばれた。池澤夏樹の新著『天はあおあお 野はひろびろ』(北海道新聞社)が17日に刊行される。札幌10区新聞では、道立三岸好太郎美術館の企画展『恋する画家の陶酔ざんまい』を紹介。ヴァイオリンのハーモニクス奏法の原理を数式で解明した、札幌開成中等教育学校の田中翔大の記事も。国際学生科学技術フェア(ISEF)で米音響学会賞1等賞などを受賞した。

  • 現実と空想を混ぜて物語と為す――河﨑秋子

    2024年02月15日

     道新カルチャー面は、河﨑秋子の寄稿「直木賞を受賞して」、桜木紫乃の連載《居酒屋さくらぎ》が並ぶ。受賞作を語る河﨑の言葉〈現実と空想を混ぜて物語と為す。それこそ最も人の心に届きやすい道だと私は思い定めて小説を書いてきた〉。道新の小澤征爾追悼は、長年その仕事を見つめてきた音楽評論家の東条碩夫。〈病に襲われた晩年も、音楽への情熱、闊達な精神は失われなかった。射るような眼でオーケストラを鼓舞した小澤さんの指揮姿はもう見られない。私たちはかけがえのない指揮者を失った〉。《音楽会》はLCアルモーニカがhitaruで上演したジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』(評・八木幸三)。鳥取市で開設準備が進む伊福部昭記念資料館(仮称)の話題も。


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  • 2024-02-14

    2024年02月14日

  • 手厚い朝日の小澤追悼

    2024年02月13日

     朝日新聞の小澤征爾追悼は、かくも手厚い。編集委員の吉田純子が「泣き虫マエストロ」を。夕刊には読売交響楽団の首席客演指揮者を務める山田和樹のエピソード。9日夜の山田のプログラム後半は、武満徹『ノヴェンバー・ステップス』とベートーヴェン第2交響曲だった。くしくも1967年に小澤の手でニューヨークで初演された演奏会と同じ組み合わせだ。山田は、午後7時に伝えられた訃報は演奏会に臨む音楽家に憂いがないようにとの配慮ではないかと考え、黙禱や拍手を慎むことを観客に求めなかった。
     道新はバレエ指導者久富淑子の《哀惜》。札幌生まれ、滝川育ち。熊川哲也をはじめ、各国のバレエ団でプリンシパルなどとして活躍する後進を育てた。

  • 2024-02-12

    2024年02月12日

  • 現代アートシーンを振り返る

    2024年02月11日

     この日はSCARTSで、SIAF2024連携プロジェクトのひとつ「Sapporo Parallel Museum 2024」関連のトーク「1990~2020年の札幌現代アートシーンをふりかえる 創造都市編」 が開かれた。SIAFディレクターの小川秀明をはじめ、酒井秀治、高橋喜代史、端聡、浜部公孝、細川麻沙美、吉崎元章、今村育子の面々。最初はそれぞれの立場でプレゼンテーション。浜部が札幌の「創造都市宣言」とは何なのかを解説したあと、吉崎が1990〜2020年の北海道美術を振り返る総論を、端が2014年の第1回開催に至る経緯を、小川が今回のSIAFについて、細川はこれまでと今回のSIAFの比較を交えて、今村はパラレルミュージアムについて。後半の座談で興味深かったのは、最後に高橋が芸術祭への地元作家の起用について尋ね、SIAF側が「地元作家を多数起用することが本当に必要だろうか。SIAFに触発された別の展覧会という形もあり得るのでは」と問いかけたこと。2014年のSIAFではこの点が焦点となり「永遠の課題」という受け止めになったが、今回はこの問いかけに異論はなく、一応の決着を見た格好。
     朝日新聞は引き続き小澤征爾追悼。村上春樹の追悼文に1頁を割いた。多くのエピソードで小澤の人となりを紹介。オーケストラへの向き合い方として〈征爾さんはあまり感情を面に出すことなく、ゆっくりと、ひとつひとつ丁寧に細部のネジを締めていく人だった。オーケストラの出す音に注意深く耳を傾け、問題があればそれを指摘し、どこがいけないかをユーモアを交えてフレンドリーに説明し、その部分を締める。それを何度も何度も繰り返して、彼の求める音を、音楽を、辛抱強くこしらえていく〉〈征爾さんの場合は、ネジをぎゅっと締めることによってその結果、驚くほどすんなりと演奏から肩の力が抜けていきのだ〉〈そこには過度なメッセージ性もないし、大げさな身振りもないし、芸術的耽溺もなく、感情的な強制もない。そこにあるのは、小澤征爾という個人の中に確率された純粋な音楽思念の、拒食を排した誠実な発露でしかない〉。貴重な観察であろう。
     同じ日の文化面では、桐朋学園の後輩である秋山和慶が、音楽面から小澤征爾を語った。〈小澤さんの音楽の特徴を一言でいえば、やはりあのリズム感、そして瞬発力です。どこをちょっと緩めようとか、ぐっと持ち上げようとか、そうしたペース配分がすごく上手だった〉も、村上の言葉と通じる。恩師斎藤秀雄が臨終の場面に言った「ごめんな」「君らをよく怒ったのは僕が未熟だったから」との言葉が、小澤の音楽や人間への愛の根源であったのではないかと結ぶ。
     ボストン交響楽団が9日、バッハの『G線上のアリア』で小澤征爾を追悼した。道新社会面。
     道新の読書ナビ《ほっかいどう》。藤尾均『歌が誘う北海道の旅』(新評論)は、ご当地ソング78曲を紹介する。著者は医学史、医学倫理などが専門の旭川医大名誉教授。《北海道の新刊》は朝倉かすみ『賑やかな落日』(光文社文庫)、高澤秀次『評伝 立花隆』(作品社)、横山北斗『洞爺丸追憶』(津軽書房)。
    「島をまるごと楽器化する」というコンセプトで、東大大学院准教授とSIAFラボが江差町鴎島の奇岩「瓶子岩」で試みた実験。50年前に実験音楽家デビッド・チュードアがスウェーデンの孤島クナーヴェルシェアで構想した未完の「コンサート」を模したという。超音波を使ったパラメトリックスピーカーで、鳥のさえずりを島や岩にぶつけるように流す。2月17、18日に北大工学研究院のVRシアターで上映する。朝日新聞北海道面。

  • 小澤征爾を悼む

    2024年02月10日

     小澤征爾の訃報を、各紙一斉に掲載。
     道新の一面トップは、イトーヨーカドーの道内撤退報道。2番手は「札幌駅再開発ビル2年延期も」。これに次いで「小澤征爾さん死去 88歳 世界的指揮者」。第1社会面トップに「巨匠オザワ 世界魅了」と評伝「温かい「音楽する心」」。札響と小澤の共演については「1974年9月の定期演奏会(札幌市民会館)を皮切りに、81年まで9回共演している」。関連で元札響首席チェリストの土田英順のコメントを掲載した。各界からの悼む声も。
     朝日新聞は一面の2番手。見出しは道新と同じ。社会面は「音楽の光で世界照らす/地方から発信 情熱注ぐ/飾らない人柄 引きつけた」。吉田純子編集委員の評伝「愛すべき無鉄砲 壁つくらぬ「目力」」はさすがに読ませる。〈対話の権化であるオペラの精神を、言葉や文化の壁のない楽器だけで実現する。そんな理想郷を小澤さんは生涯目指し、音楽の伝統を継ぐ「職人」のひとりとして国境を越え、お欧州の伝統の系譜に連なった〉。他に「卓上四季」でも小澤に触れた。
     読売新聞も一面2番手。毎日新聞は一面トップ。見出しはいずれも同じ。読売は社会面「オザワ 日本の誇り/最高峰の舞台で指揮」「人間味あふれる素顔(評伝)」のほか、エンタメ面に「小澤語録」も掲載した。毎日の社会面は「世界が愛した「オザワ」」/「音楽で心一つに」貫く」「「リズムの爆発」聴衆酔わす(評伝)」と梅津時比古執筆の記事を掲載。難病の子との交流や秋山和慶、松本市長のコメントもある。

     道新カルチャー面は、小樽出身の漫画家山下和美らが、明治期、東京・世田谷区豪徳寺に尾崎三良男爵が建てた洋館を活用した「旧尾崎テオドラ邸」を3月1日にオープンさせるとの記事。「一般社団法人旧尾崎邸保存プロジェクト」を2022年に設立し、私財を投じて土地・建物を買い取った。ギャラリーとして活用し、上砂川町出身の山岸凉子、札幌出身の大和和紀らのチャリティー作品展、札幌出身の三原順の回顧展などを予定している。同じ紙面には、ウクライナ国立オデッサ歌劇場の首席客演指揮者を務める北見市常呂町出身の吉田裕史が、日本公演のためのクラウドファンディングに取り組んでいるとの記事も。

  • 小澤征爾、死去

    2024年02月09日

     小澤征爾が2月6日に死去した。88歳。デジタル版の速報見出しは道新が「世界的指揮者の小澤征爾さん死去/88歳、文化勲章受章者」、朝日は「指揮者の小澤征爾さん死去、88歳/戦後日本のクラシック界を牽引」。読売は「小沢征爾さん死去、88歳/ボストン交響楽団などで日本人初の音楽監督」。毎日は「小澤征爾さん死去、88歳 世界的指揮者、日本クラシック界けん引」。日経が「小澤征爾さんが死去、88歳 指揮者「世界のオザワ」」。明日朝刊の紙面が気になる。
     小澤の才能の最たるものは「人たらし」だったのではないか。人間力と言ってもいい。とにかく人に好かれる。聴衆はもちろん、共演する演奏家、支援者、後半生をささげたとも言えるフェスティバルの地である松本の人々にも。38歳だった1973年からボストン交響楽団の音楽監督を29年間務めたことが、何よりの証左だ。同じ楽団のシェフをこれだけの期間、一人の指揮者が務めることは「空前」はいざ知らず「絶後」であることは間違いない。
     そしてあの目。人なつこいふだんとは違って、指揮台から演奏者を睥睨する目力。壮年期の指揮ぶりを映像で観て、楽団員ひとりひとりに向ける視線の強さは印象的だった。しかしカラヤンのように強大な力で威圧するのではなく、「一緒にいい音楽をやろうよ」と肩を組み、体を預けてくるような音楽仲間への向き合い方。どちらかと言えばバーンスタイン型か。2010年に判明した食道がんで闘病し、2017年に松本フェスティバルを取材した際は、内田光子との共演でベートーヴェンの第3協奏曲を椅子に腰掛けて指揮した。それでも要所要所で立ち上がり、音楽を駆動させようとする意志が伝わってきた。取材の一環で話を聞いた札響コンマスの田島高宏(サイトウキネンで何度も共演)は、体力的に衰えが感じられても、かえって「オーケストラ側が小澤さんを支えようという強い気持ちを持つように」なったと話していた。それもまた人間力あっての関係だ。
     渡米する前、N響とは不幸な事件があり、原因の一端を小澤自身の慢心と見る向きもあった。楽団員との軋轢は、個性派ぞろいの指揮者にはありがちのこと。かつて何度か小澤を札響に招いた(小澤=札響の《幻想》に名演あり。FM東京にいた東条碩夫が録音を担当した)事務局長の谷口静司は、自宅に小澤を泊めてさんざん酒を飲み交わしても、早朝にはスコアを眺めているような音楽への誠意があったとエピソードを語ってくれた。札響60年史執筆のため、定期会員から集めたアンケートでも、函館で小澤が指揮した札響演奏会があった日(1978年5月12日)、函館市民会館前の公園の芝生に寝転がってスコアを読む、白い服、ボサボサ頭の若い指揮者がいたという回答があった。常にポジティブで、より良い音楽を極めたいというパッションを絶やさない姿が、世界に愛される指揮者の偉大さだったのではないか。
     生の演奏を聴く機会はだいぶ前に失われていたが、私たちにはたくさんの音源をかみしめる機会が与えられている。あの笑顔と眼力を思い出しながら。
     道新カルチャー面。『夜明けのすべて』が公開中の三宅唱監督(札幌出身)インタビュー。他者から理解されにくい生きづらさを抱えた2人の物語。〈人生には理不尽なことがたくさんあって、その上でどう生きようとするか。自分も年齢を重ねて、そういったことを意識的に描けるようになってきた〉
     道新10区新聞では、北海道立近代美術館で開催中の特別展「AINU ART―モレウのうた」を大きく取り上げた。トークイベントの第1回で。木彫家・貝沢徹(平取町二風谷)、金工家・下倉洋之(阿寒湖温泉)に、五十嵐智美学芸部長が聞いた。同じ紙面では、3月末で閉館する道新ぎゃらりーで北海道イラストレーターズクラブアルファが開いている「道新ぎゃらりーサンキュー展」を紹介。ギャラリーは2003年に札幌時計台ビル地下にオープンし、2008年から本社へ移った。

  • カルーセル麻紀、森田たま、バーメルト

    2024年02月08日

     道新カルチャー面。三島由紀子監督の映画『一月の声に歓びを刻め』に出演したカルーセル麻紀のインタビュー。「死ぬ前最後の仕事と思って引き受けた」と話す。同じ紙面には、道産子初の女性作家とされる森田たま(1894〜1970)の自伝的小説『石狩少女(おとめ)』がちくま文庫で復刊された。《奏で人札響》はフルート副首席の川口晃。
     道内では3月いっぱいで休刊になる朝日夕刊で、札響の東京公演評(評者・白石美雪)。指揮は常任として最後の共演となったマティアス・バーメルト。メインのブルックナー第6交響曲は「金管を含めて大音量の威圧感ではなく、大きな懐を感じさせるフレージングに、ブルックナーらしい威厳を託した」。ブリテンの『セレナード』は、テノールのイアン・ポストリッジとホルンのアレッシオ・アレグリーニを讃え「彼らの妙技を生かすべく、そっと並走した札響の弦合奏もみごとの一語に尽きる」。最後は「本拠地を離れての東京公演は、かつてこの楽団を「聴く人を迎えにいく音楽大使にしたい」と望んだ彼ならではの、充実の大団円となった」と、札響60年史のインタビューを引用して結んだ。

  • 和辻哲郎文化賞に小坂洋右

    2024年02月07日

     姫路市が主宰する和辻哲郎文化賞に、札幌在住、元道新論説委員の小坂洋右の『アイヌの時空を旅する』(藤原書店)が選ばれた。国立科学博物館では、収蔵品などによる企画展で、昨年1月に新鉱物と認められた「北海道石」が展示されている。いずれも道新社会面。

  • カナダの脱植民地化教育

    2024年02月06日

     カナダに留学し、脱植民地化教育を進めてきたユーコン大で学んできたニセコ在住のフリーライター・研究者の葛西奈津子が北大で講演した。1996年まで120年も続いてきた政府の同化政策やジェノサイドなどの実情を報告し、先住民族と大学の連携を考えるファーストネーション・イニシアチブ(FNI)の取り組みも紹介した。大学教育の脱植民地化は「和解の行為を未来に続ける実践であり重要と思う」と述べた。道新カルチャー面。道内文学(俳句・五十嵐秀彦)。文芸時評(伊藤氏貴)。

  • 被災者の心を支える

    2024年02月05日

     能登半島地震被災地の石川県七尾市で、清水町のアイヌ文化発信拠点「ハポネタイ」のUtaE(ウタエ)代表が、アイヌ民族の音楽や踊りを伝えて被災者の心を癒やす活動を続けている。長期化する避難生活を精神的に支える活動も貴重だ。道新社会面におそらく共同通信の記事。
     朝日新聞文化面に池澤夏樹の寄稿。『ハワイイ紀行』を書くために長く滞在したハワイ・マウイ島のラハイナで昨年、大きな山火事があった。その被災地を訪ねた。住民が集まって歩くことで弔意と復興の意思を表明する催しに参加し、かつてハワイ王国の首都だったこの街の人々の気概に感銘を受けたという。〈ホノルルの喧噪からここへ来るとほっとする。人はみんなゆっくりと動くし、風と波が日々の指針となっている。サーファーの悠然たる生きかたが周辺にも浸透している。ここはぼくにとって理想の休息の地だ、たとえラハイナが燃えようと。〉
     この日2月5日は、SCARTSで現代音楽の演奏会「音楽と空間の新機軸〜ライブエレクトロニクスの現在」が開かれた。充実した内容だったので、どこかに詳報を残したいと考えている。

  • アート資材のリサイクル

    2024年02月03日

     SIAF2024では、展覧会などで使った資材をリサイクルするプロジェクト「リサイクルセンター『周活』」に取り組む。札幌のマルチメディアアーティスト岡碧幸(みゆき)が、ミュンヘンでリサイクルに取り組むグループ「トライブグット」のメンバーを招いて天神山アートスタジオで、3月末までの土曜に活動する。ウクライナの詩人オスタップ・スリヴィンスキーがロシアの侵攻から逃れた市民の証言を集めた『戦争語彙集』(昨年5月刊)を、ロバート・キャンベルが日本語に訳した(岩波書店)。「食べもの」「猫」「ゴミ」など77の単語を表題とする文章が掲載されている。《穂村弘の迷子手帳》は「云えない言葉」。道新カルチャー面。
     ピアニストの江戸京子が1月23日に死去、86歳。

  • 雪まつり会場の巨大オブジェ

    2024年02月02日

     道新カルチャー面は、SIAF2024の雪まつり期間中の催し中心に紹介。雪まつり会場は、オーストラリアのスタジオ・エネス制作のバルーン状のオブジェ『Airship Orchestra』が展示される。《金曜シネマ》はビクトル・エリセ監督の『瞳をとじて』。朝日新聞夕刊にも同じ映画の記事。半世紀前の『ミツバチのささやき』にも子役で出演したアナ・トレントにインタビューしている。第14回道展U21の大賞は、札幌大谷高3年、竹内優希の油彩『雪華』に決まった。道新社会面。
     浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」が国と道に対し、サケ漁の集団的権利を求めるよう求めた訴訟が1日に結審した。判決は4月18日。
     2月3日は札幌・南区の旧真駒内緑小(札幌市立大学まこまないキャンパス)で、南区アートダイアローグvoi.1が開かれた。ここで展覧会を開催している八子直子、北川陽稔と南区アートプロジェクトの国松明日香実行委員長の鼎談と、聴衆との車座集会のような形。地域のアートにフォーカスした意欲的な試みであることは評価したいが、テーマ設定があいまいで、発言者がそれぞれの思惑で議論を拡散させてしまった感があり、残念。多くのアーティストが区内に住んでいるため「アートによる活性化」を掲げる南区(役所)の思惑に沿って「まちづくり」を考えたい人、それよりも展示のあり方と作品について語りたい・聞きたい人、作家のステートメント(声明)と作品理解の相関関係を深掘りしたい人、「南区」をアイヌ語をもじった「ミナミナク」と読ませるセンスを疑う人…。どれも重要な視点だからこそ、テーマを絞り込んで、ひとつひとつ発言を吟味して進めてほしかった。

  • 奈良美智の弘前

    2024年02月01日

     道新カルチャー面。円城塔《西の国から》は「北の怪談」の話題。《音楽会》は、バリトン川村英司のリサイタル「音楽に寄せて」(2023年12月15日)。ピアノは札幌の山口玲子(評・中村隆夫)。
     朝日新聞文化面は、奈良美智の青森県立美術館での個展を取り上げ、故郷弘前との距離感を作家に問うた。原点としての弘前を「振り返るというより、ずっと後ろにあって、今もこの背中に確実にへばりついている。年をとるとともに重くなりながらも、歩いてきたんだなって感じがある」と語った。個展は2月25日まで。

  • 片岡球子『一休さま』

    2024年01月31日

     道新社会面。片岡球子(1905〜2008)の晩年の作品『面構(つらがまえ) 一休さま』が、道立近代美術館に寄贈された。寄贈者の堤さえ子は中央区の裏千家教授で、近美の資料整理ボランティアを長年務めた。縦1.5m、横3m。3月23日から6月16日まで『一休さま』を含む面構シリーズ4点を展示する。札幌市は「東1丁目劇場施設」(旧四季劇場)を来年3月で閉館すると発表した。

  • 生きている限り芝居を作る――斎藤歩

    2024年01月30日

     道新カルチャー面《会いたい聞きたい》で、俳優・脚本家・演出家の斎藤歩の大インタビュー。人形劇師・沢則行との2人芝居、2021年に発症した尿管のがんのこと、魴鮄舎など1980年代からの活躍、演劇財団でのコロナ禍との闘い、これからの北海道演劇に寄せる言葉など、充実した内容だ。デジタル版はさらに読み応えがある。▼道内文学 創作・評論(小田島本有)▼論壇時評(中島岳志)

  • 直木賞受賞エッセイ

    2024年01月29日

     朝日新聞文化面に、直木賞受賞の万城目学、河﨑秋子の受賞エッセイ。河﨑は、2匹の猫との暮らしを引き合いに〈このまま飼い主の事情など一切関係ない猫でいて欲しい。できるだけ健康で。感謝と共に猫に願う。〉。対して万城目は、これまで落選してきた十数回!の文学賞を挙げ、6回目の候補での受賞を〈過去の一方的な文学賞へのわだかまりに対し、いっせいに精神的徳政令を発した。〉と。

  • 荒巻義雄『海没都市TOKIYO』

    2024年01月28日

     荒巻義雄が新著『海没都市TOKIYO』(小鳥遊書房)を刊行した。地球温暖化で大半が水没した近未来の東京が舞台。〈「ありえるかもしれない」近未来と、現在の抱える問題とを兼ね合わせ〉た作品。評者は立原透耶。道新の読書ナビ《ほっかいどう》。
     浦幌のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」は、昨年当地で開かれた国際シンポジウム「先住権としての川でサケを獲る権利」の報告会を帯広で開催。台湾やカナダなどの先住民との連携で、先住権を求める闘いを続けており、賛同を求めた。道新社会面。
     札幌西区のコミュニティFM三角山放送局で、パーソナリティを務める吉田重子。盲学校の教師を務めながら2013年から、点字の進行台本を手に、月1回、1時間の生放送に臨む。番組名は「音を頼りに、音便り」。「せっかくだからまずやってみよう」という行動力を「せっかくだから病」と呼ぶ。朝日新聞道内面。

  • 南区アートシーズン

    2024年01月27日

     道新カルチャー面の《展覧会》。旧真駒内緑小(真駒内幸町2丁目2-2、札幌市立大まこまないキャンパスまちの教室)で開かれている「南区アートシーズン・冬」を取り上げた。南区アートプロジェクトの一環で、八子直子、北川陽稔(あきよし)が発表している。2月14日まで。2月3日にはトークセッションを予定。

  • バーメルト 最後の札響定期

    2024年01月26日

     道新カルチャー面。第658回定期演奏会(1/27、28)が首席指揮者として最後の定期となるマティアス・バーメルトのインタビュー。札響について「実力は海外に出ても十分なオケだと思っています」と述べ、海外公演は「成功すれば観客や地元に帰ったときにスポンサーにもいい印象を与えることができる」とした。
     道新社会面には、三浦綾子の元秘書山地多美枝が十年来続けてきた無期懲役囚との文通についての記事。趣旨は朝日新聞(2023-12-09)と同じ。九州の刑務所にいる受刑者は「真っ暗な海の上につかまるものも無く浮いていた私に流れてきた1本の丸太のようだったのが山路さんとの手紙」と取材に答えた。同じ面には、雪や氷に関連した作品が展示されているとのSIAFの紹介記事も。

  • 北海道の児童文学

    2024年01月25日

     道新の中高生まなぶん《北の事始め》101回目は「児童文学」。1952 年に創設された日本児童文学者協会で、加藤多一、後藤竜二といった作家が活躍した。道内では明治末に、旭川で『少年乃北海』、倶知安で『後志学の友』という児童向け雑誌が刊行された。児童文学研究家の柴村紀代は、北海道の児童文学は、支部沈黙や坪松一郎らの童謡に始まったという。代表的な作家として、開拓農家の暮らしをよく知り、作品に取り入れた加藤、後藤のほか、小笠原洽嘉、有島希音、富盛菊枝、升井純子の名前を挙げている。
     道新社会面には1984年にマッキンリー(デナリ)で行方不明になった植村直己が、1973年にグリーンランドで撮影したとされる未公開写真を、北大の北極研究者日下稜が発見したとの記事。100歳のの書家中野北溟は、札幌市に書731枚(評価総額13億6200万円)を寄贈した。

  • 炭都 芦別の社会史研究書

    2024年01月24日

     道新はこの日も1面から社会面へ続くロングインタビューで河﨑秋子特集。今後の活動について「生まれ育って一番肌になじむ北海道にこれからも住み続けてここで文章を書き続けます。北海道はその歴史や住み続けている人をクローズアップするだけでたくさんの物語が立ち動く場所。とても魅力があります」。
     道新社会面には、かつての炭都芦別の石炭産業史をまとめた『芦別 炭鉱<ヤマ>とマチの社会史』(寿郎社)刊行に記事。社会学者らの「産炭地研究会」のメンバーが執筆。早稲田大文学学術院の嶋崎尚子教授は「芦別が炭鉱とともに歩んだ年月は道内の石炭産業のライフサイクルにほかならない。膨大な人が芦別に移入、移出していった足跡に着目した」と話す。芦別五山と呼ばれる三井、三菱などの炭鉱の盛衰、構内での爆発事故や労働組合などを解説している。

  • 新 直木賞作家を特集

    2024年01月23日

     北海道新聞はカルチャー面の8割がたを使って、直木賞を受賞した河﨑秋子の大特集《作品と横顔に迫る》を展開。1面のインタビューは恒例の芥川賞・直木賞選考を振り返る記事では、受賞作『ともぐい』について「圧倒的な文章で計算が行き届いている」「自然と近代、雄と雌といったさまざまな対立が表現されている」との評価。作品についての自らのコメント、これまでの経歴、十勝での暮らしなどをまとめた。
     

  • 芸術祭やめちゃ駄目

    2024年01月22日

     SIAF2014のゲストディレクターを務めた坂本龍一を偲ぶトークイベントが、21日に札幌市資料館で開かれた。飯田志保子、大友良英、天野太郎らが出演。大友は「いろんな人が入り込める芸術祭になるまで10年かかった。絶対にやめちゃ駄目。やめたら税金の無駄遣い」と述べた。

  • アイヌ民族と研究者対話

    2024年01月21日

     北海道アイヌ協会、日本人類学会、日本考古学協会、日本文化人類学会の4学協会主催のシンポジウムが20日に札幌で開かれた。研究者とアイヌ民族の対話の場として企画された。日本考古学協会の矢島国雄・明治大名誉教授は「過去のアイヌ文化研究に問題にあったことは認識しなければならない。調査される側の価値観や権利への配慮がかけていたことは否定できない」と述べた。
     札幌国際芸術祭SIAF2024の開幕セレモニー。小川秀明ディレクターは「私たちは未来に向けて何ができるか。札幌を舞台にした未来志向の実験が始まることを、皆さんと楽しみにしていきたい」と話した。
     いずれも朝日新聞北海道面。

  • SIAF2024 20日開幕

    2024年01月20日

     通算4回目(前回は中止)となる札幌国際芸術祭(SIAF2024)が20日に開幕。初の冬季開催で、10ヶ国以上約80組のアーティストが参加する。ディレクターはリンツ市のアルスエレクトロニカで活動する小川秀明。テーマは「LAST SNOW」。主会場は北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館、SCARTS、モエレ沼公園、さっぽろ雪まつり大通2丁目会場、未来劇場。21日は「SIAF2014から2024へ―坂本龍一ゲストディレクターからのバトン」(札幌資料館)と「ACFアートサロン 追悼 坂本龍一」(カナモトホール)が開かれる。道新カルチャー面。
     貴重なマンガの原画を保存・活用するための調査を、文化庁が始める。調査は公募した民間事業者に委託し、独立行政法人国立美術館も協力する。『あしたのジョー』の作家ちばてつやの原画やネームなど48,000点を調査してインデックス化し、保存の手法を検討する。本年度中に3,400万円、新年度も他の漫画家の作品調査などで1億9,000万円を予算化した。朝日新聞社会面。

  • 祝・第170回直木賞受賞

    2024年01月18日

     別海町出身の作家・河﨑秋子が『ともぐい』(新潮社)で第170回直木賞を受賞した。熊打ちの猟師「熊爪」を主人公に据えた〝熊文学〟である。2012年に『東陬遺事」で北海道新聞文学賞、2014年に『颶風の王』で三浦綾子文学賞を受賞している。北海道の歴史と人間に真っ向から向き合った、骨太の「北海道小説」が高く評価されたと言えるだろう。〈熊がいるところに居続けること、あらがうこと、戦うこと、このすべてを通じて熊文学ととらえていただいてかまいません)。道新一面、3面、社会面。もちろん朝日新聞にも。
     映画プロデューサー大林恭子が、2020年に亡くなった夫の大林宣彦との思い出を『笑顔と、生きることと、明日を 大林宣彦との六十年』(春陽堂書店)にまとめた。芦別など道内ロケの作品にも触れた。道新社会面。

  • ハドソンの歴史

    2024年01月17日

     50年前に札幌で設立されたゲームソフト会社「ハドソン」の思い出を語るイベントが、「北海道ゲームアーカイヴ協会」の主催で昨年12月に開かれた。元社員の高橋名人らが参加。協会を運営する山本耕平はゲームのコレクター、寺農織苑は学芸員資格を持つ北大の院生。〈研究するにせよ、展示するにせよ、オリジナルの資料や当事者のインタビューができる限り良い状態でアーカイブ(保存)されていけば後世の財産になる」。寺農の言葉は、ACA設立の理念と重なる。朝日新聞北海道面。

  • ヤキトリとCGアニメ

    2024年01月16日

     札幌のCGプロダクション「アレクト」が作成したSFアニメ『ヤキトリ』が、Netflixを通じて動画配信されているとの記事。戦闘シーンはモーションキャプチャーにより、登別伊達時代村の俳優の動きを取り込んでいるという。音楽は世界的DJケンイシイが手がけたテクノポップ。ちなみに「ヤキトリ」は地球外勢力の属国になった地球の若者による部隊?の名前で、使い捨て扱いをされているとの設定。
     ノンフィクション作家・澤宮優の新著『天守のない城をゆく』(青土社)では、函館の五稜郭、北斗市の松前藩戸切地陣屋跡、白老の仙台藩白老元陣屋、根室のヲンネモトチャシ跡など道内の〝城〟も紹介している。五稜郭を除けば、道内でもそれほど知られていないのではないか。まなざしやよし。
    ▼《音楽季評》10-12月 三浦洋
    ▼《道内文学》詩 若宮明彦
     いずれも道新カルチャー面。
     丸木位里・俊夫妻による絵本『ピカドン』の初版(1950年)が復刻された。原爆の図丸木美術館の岡村幸宣学芸員が企画し、研究者による解説冊子と併せて京都の琥珀書房が販売している。道新社会面。
     

  • 八代亜紀の『舟唄』

    2024年01月14日

     朝日新聞文化面は、阿久悠とともに『舟唄』『雨の慕情』を手がけた作曲家の浜圭介による八代亜紀の追悼文。『舟唄』は阿久が美空ひばりをイメージして書いた詞で、それを知らなかった浜もまたひばりをイメージして曲を書いたと明かしている。『舟唄』が八代亜紀の代表曲になったのは、運命としか言いようがない。
     道新読書ナビの《ほっかいどう》は、亀野仁『地面師たちの戦争』(宝島社文庫)を紹介。前作『密猟海域』に続いて、舞台は北海道。

  • AINU ART-モレウのうた

    2024年01月13日

     日本画家で東京藝大名誉教授の福井爽人(86)が、市立小樽美術館へ150号の大作6点を含め9点を寄贈した。旭川生まれ、小樽育ち。小樽美術館で特別展「追憶の歌 日本画家 福井爽人」(2023年4月〜7月)が開かれたのがきっかけ。寄贈した作品は『春影』『門』『木陰』『影映』『春陽』『沐浴のとき』『鴨』『干物』『梟』。
     13日から、特別展「AINU ART―モレウのうた」が北海道立近代美術館で始まる。19世紀から現代までの着物や木彫の文様「モレウ」を展示する。2013年の「AINU ART―風のかたりべ」の続編で、昨年秋に一宮市三岸節子美術館で先に開催された。

  • 《言の葉工務店》が面白い

    2024年01月11日

     道新カルチャー面のアーサー・ビナード連載《言の葉工務店》がめっぽう面白い。この日は冬の寒さ、切なさを、そのテーマで軽妙な詩を書いた山之口獏や草野心平を例に挙げつつ語った。題して〈人間が味わう「心の冬越し」〉。〈草野心平は蛙を鏡に、同じ生物であるぼくらの心身の仕組みを描く。冬眠中の「土のなかの靄のような幸福」まで味わわせてくれる。「心平診療内科」と呼んだら胡散臭く聞こえるが、心の冬越しには最適だ。〉と。
     道新社会面には、函館出身の女性能楽師柏崎真由子が3月2日に、国立能楽堂で『道明寺』のシテを初めて演じるとの記事。道内出身の女性能楽師として34年ぶり(1990年に、小樽出身で重要無形文化財総合認定保持者の足立禮子が演じた)。シテ以外にも、地謡、笛、小鼓、太鼓など可能な限り出演させるのは、能楽史上初の試みという。

  • ブラタヌキの効用

    2024年01月10日

     この3日ばかり、ビビビッと来る記事に出会えず、潜伏しておりました。道新札幌圏版のシリーズ《ディープに歩こう》の第8部狸小路編⑦は、タイトルが「ブラタヌキ」。言わずと知れた「ブラタモリ」のもじりだ。街歩き研究家の和田哲が案内人となり、西1丁目にある通称「狐小路」は意外にも南北を貫く中通り。酒屋「三国屋」の敷地内に作った小道で、その経営者は陸上で五輪金メダリストとなった南部忠平の父・源蔵だったとは初めて知った(男を化かす女がいたから狐?という解説はどうかと思うが)。2丁目にあった芝居小屋「東座(のちの立花座)」、3丁目の劇場「遊楽館(のちの松竹遊楽館)」、5丁目は開拓使官舎の跡地…などは、地元民や高齢者を除けば知らない人も多かろう。8丁目から10丁目にかけては「鈴蘭灯」があって、鈴蘭街と呼ぼうとしていた時期もあったとか。こういう情報の蓄積も大事。デジタル版には、駅前通の拡幅が、3丁目と4丁目を地下でつなぐ計画に結びつき、地下街建設のきっかけになったとある。地下街の建設は、札幌冬季五輪に合わせた地下鉄開業と表裏一体で進められたと認識していたが、実はそれ以前から構想があったということか。確認してみたい。
     植物学者・画家の鮫島惇一郎が死去。1月7日、97歳。八代亜紀が死去。12月30日、73歳。『舟唄』の「ダンチョネ節」は、漁師の悲哀を歌った俗謡で、もとは神奈川県の三浦半島が歌われているらしいが、どうしても北海道に重ねて聴いてしまうのです。

  • 河﨑秋子『ともぐい』

    2024年01月06日

     朝日新聞読書欄に、第170回直木賞候補に選ばれた河崎秋子『ともぐい』(新潮社)の評(稲泉連)。主人公の猟師「熊爪」が向き合う野生の熊たち、同業者や町の人間たち、そして自然そのもの。熊爪の姿に「色濃く浮かぶ魂の震えに、息をのむ迫力を感じた」。

  • 劇場の20年

    2024年01月05日

     今年最初の道新カルチャー面は映画『ゴールデン・カムイ』の紹介。原作の野田サトルが北広島出身。場面はほぼ冬なので、ロケは日高町、平取町、むかわ町などで行った。札幌の「開拓の村」でも。19日から全道で公開される。
     札幌舞台芸術制作協議会(SEEK)による「札幌のいまとこれから」シンポジウム「劇場の20年」が、BLOCHで開かれた。BLOCHマネージャーの鶴岡ゆりか、tatt Inc./北八劇場アーティスティックコーディネーターの小島達子が登壇し、d-SAP/弦巻楽団の佐久間泉真が進行を務めた。2000年に閉館した演劇専用劇場「ルネッサンス・マリア・テアトロ(旧札幌本多劇場)」を柱に、閉館後の札幌の演劇事情を振り返った。マリア・テアトロ閉館を受けてのBLOCHの快感、シアターZOOやコンカリーニョの動き、演劇シーンを盛り建てたTGRや演劇シーズンなど、この20年間の演劇界を俯瞰することができた。個人的には、マリア・テアトロで90年代半ばに開かれた「小劇場遊戯祭」が懐かしい。かつて劇団が100以上あった時代と現在の比較は、定量的な分析とまではいかないが、TEAM NACSのような超人気劇団の影響力が指摘されて興味深かった。

  • 「四日」は仕事始め

    2024年01月04日

    「四日」は新年の季語だと、この日の北海道新聞社会面《新・北のうた暦》が教えてくれる。仕事始めの謂いだ。とはいえニュースは羽田事故と能登半島地震の記事一色である。

  • アイヌ漆器にスタンプ文

    2024年01月01日

     元日に能登地方を襲った巨大地震。M7.6や震度7という規模を示す数字に、東日本大震災を想起した人も多いだろう。余震はなお続く。
     北海道新聞社会面には、厚真町オニキシベ2遺跡で2007〜2008年に発掘されたアイヌ文化期の漆器が、鎌倉時代に作られた「スタンプ文漆器」であることが最近の調査で分かってきたとの記事。実は1999年に余市町の大川遺跡からも同様の漆器が見つかっている。交易があったことは確実だろう。
     紙面に載った「スタンプ文」の意匠が優れている。上下に向かい合った2羽の鶴はタンチョウではないにせよ、近代的なデザインと言えるのではないか。

  • 2023 墓碑銘

    2023年12月31日

     道新の墓碑銘2023。道内ゆかりの芸術・文化関係者のみ記しておく。林田恒夫(1月11日、タンチョウ写真家)加藤多一(3月18日、児童文学作家)大橋純子(11月9日、歌手)川嶋康男(12月7日、ノンフィクション作家)。国内では、高橋幸宏、辻村寿三郎、松本零士、黒田杏子、大江健三郎、奈良岡朋子、坂本龍一、富岡多恵子、平岩弓枝、野見山暁治、森村誠一、飯守泰次郎、山本二三、市川猿翁、土田よしこ、遠山一、谷村新司、財津一郎、もんたよしのり、KAN、三木卓、伊集院静、山田太一。海外ではジェフ・ベック、バート・バカラック、カルロス・サウラ、ヒュー・ハドソン、ウェイン・ショーター、ハリー・ベラフォンテ、ティナ・ターナー、イリヤ・カバコフ、フランソワーズ・ジロー、アストラッド・ジルベルト、ミラン・クンデラ、ジェーン・バーキン、トニー・ベネット、フェルナンド・ボテロ、ルイーズ・グリュック。海外の文化人比率が高いのが興味深い。
     朝日新聞の「2023年亡くなった方々」では、これに加えて松平頼暁、加賀乙彦、デビッド・クロスビー、永井路子、鮎川誠、山根貞雄、菅野昭正、海野弘、大石悦子、原尞、メナヘム・プレスラー、中島貞夫、栗山昌良、PANTA、外山雄三、ウィリアム・フードキン、ロビー・ロバートソン、西村朗、寺沢武一、櫻井敦司、泉昭二、三浦徳子、チバユウスケ、豊田有恒、西木正明、ライアン・オニールの名前が挙がっていた。
     惜しみつつ、お別れを。

  • SHISHAMOの応援

    2023年12月29日

     道新カルチャー面の2003年回顧(下)は「藤井聡太 史上初の八冠」「日曜文芸と戦争」「映画界の性加害」「バーメルト わが半生語る」。大正期の映画文化を丹念に調べた前川公美夫『大正期北海道映画史』(亜璃西社)の記事。「大正期の映画を軸にした道内の日常や庶民の暮らしが伝わる」と話す。
     特産品シシャモの記録的な不漁にあえぐむかわ町に、「鵡川ししゃも応援団」にもなった女性3人組バンド「SHISHAMO」が応援メッセージを寄せたとの記事。道新社会面。
     高校吹奏楽の名門校、東海大札幌と熊本の玉名女子が25日にKitaraで共演した。札幌地区吹奏楽連盟が企画した。「コロナ禍を経て、生の演奏会から客足が遠のいている」という危機感が背景にある。

  • 乗代雄介『それは誠』

    2023年12月28日

     道新カルチャー面は2023年の年末回顧(上)。お題は「JKT問題(ジャニーズ、歌舞伎、宝塚)」「貧困研究」「TVHのバーチャルマスターオペレーター」「学芸員の仕事」で、振り返りというより担当記者の記憶に残る出来事をピックアップした。同じ紙面で、江別出身の乗代雄介の『それは誠』が織田作之助賞を受賞したとの報。『それは誠』は、書評家豊﨑由美による道新《トヨザキ社長の鮭児書店》で恒例の『鮭児文学賞』も今回受賞していた。

  • 国立の文化財修理センターの基本構想

    2023年12月26日

     文化庁が、国立の文化財修理センター(仮称)を2030年までをめどに京都につくる基本構想を発表した。現在は所有者の責務とされ、主に民間事業者が継承してきた文化財修理を、国が主導的に取り組む。修理推進、調査研究、人材育成、情報発信を柱とする。実際には国立博物館や文化財研究所の組織を活用するとのことで、センターの具体像はこれから。朝日新聞朝刊社会面。同じ朝日の夕刊で始まった《アートの伴走者》では、東京オペラシティアートギャラリーのチーフ・キュレーター天野太郎が、蔡國強の火薬を使った作品に触れつつ、米国のゲティ保存修復センターの保存修復室長ラッシェル・リヴェンクの仕事を紹介していて、同じ保存修復に関する話題で通じ合っている。

  • 『詩の檻はない』

    2023年12月25日

     朝日新聞夕刊の《with Planet》で、タリバンによる詩人への抑圧に抗議する詩集『詩の檻はない』の話題。運動の提唱者でアフガニスタンの詩人ソマイア・ラミシュが来日した。日本版は旭川の詩人柴田望が取りまとめたと触れている。「新しい時代へと進んでいくために、「あり得ない」「信じられない」と切って捨てるのではなく、同じ時代を生きている誰かが抱える大変な思いを理解しようとする「想像力」が必要だと柴田さんは考えている」

  • 『アイヌ神謡集』刊行100年

    2023年12月24日

     知里幸恵『アイヌ神謡集』刊行100年と、知里の生誕120年。道新の《記者の視点》は、社会学者中野敏男の言葉を引いて、人権、民族、ジェンダー、階級など複数のカテゴリーを組み合わせて「差別的な秩序を構成して支配しようとする統治方式」であると位置付けた。『アイヌ神謡集』は、そんな当時の社会構造に対してのアイヌ民族の尊厳を打ち立てる宣言であったと。中村康利記者。

  • 札幌座『カフカ経由 シスカ行き』

    2023年12月23日

     サタデーどうしんの文化・エンタメ《ステージ》で、札幌座Pit『カフカ経由 シスカ行き』の劇評。札幌座斎藤歩とチェコを拠点とする人形劇師沢則行の新作は見事だったようだ。ウクライナとロシアの戦争、少数民族への抑圧といったテーマ性に、人形を駆使したファンタジー性。「民族の文化への尊厳や想像力への信頼といった斎藤が込めた願いを、沢が見事に視覚化、見ていて胸が熱くなった。北海道が生んだ、現代を射る珠玉の舞台と感じた」。最大級の賛辞が、病と闘う斎藤の力になればと願う。

  • ジャニーズと紅白

    2023年12月22日

     朝日新聞が朝刊文化面で紅白歌合戦と旧ジャニーズの蜜月の歴史を振り返っている。出場回数の推移表が面白い。パッと見では1990年からSMAPが23回、1993年からTOKIOが24回といずれも長期にわたって出場しているのが際立つが、2000年代末までは多くて4組、平均1〜2組であった。むしろ2008年初出場の嵐以降に、4組から5組、そして最大7組とジャニーズならなんでもありの状況になっている。NHKの元職員は「嵐が司会に起用された10年ごろから、ジャニーズとNHKはズブズブの関係だった」と振り返る。断片的な証言を説得力をもって裏付けするから、データはかくも貴重なのである。

  • 厳しさにじむ出版界

    2023年12月21日

     道新カルチャー面では、2023年の出版界の動向を特集。このうち道内の動きで、編集者の中舘寛隆が「道内の出版各社は厳しさがにじむ1年だった」と総括した。発行上位10社の発行点数の合計は106冊と最盛期の150冊から減少したという。長らく消息が絶えていた響文社の高橋哲雄が6月に亡くなっていたことも伝えられた。筆者とも長く縁があった人だけに無念。

  • 現代的レイシズムとエコーチェンバー

    2023年12月20日

     道新《水曜討論》は「アイヌ民族への後絶たぬ中傷」がテーマ。北大アイヌ・先住民研究センター教授の北原モコットウナシは、アイヌ民族への直接的な差別に対して、アイヌ民族が過剰な優遇を求めているというような曲解を、新たな差別の形態であり「現代的レイシズム」と呼ばれているという。大阪公立大大学院経済学研究科准教授の明戸隆浩は、差別的な言動が著しくなる背景にSNSなどで自分と同じ意見だけを見聞きし続けることで、思考が極端になっていく現象「エコーチェンバー」があるとした。
     同じく社会面には、北海道アイヌ協会がアイヌ民族へのレイシズムの当事者である衆院議員杉田水脈のSNS投稿について「公に投稿する内容として不適切で、人権意識の欠如といえる」とする声明を発表した。

  • 『窓ぎわのトットちゃん』

    2023年12月19日

     アニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』監督の八鍬新之介のインタビューが道新カルチャー面に。自らの子どもができたことをきっかけに、先進的な教育に取り組む「トモエ学園」を舞台に、小学1年生のトットちゃんと友達のかかわりを描く。原作は黒柳徹子の同名小説。登場人物の唇を赤く描いた背景には、舟越桂の彫像の影響もあるという。黒柳は滝川にも縁がある。
     道新社会面に、国の文化審議会が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録の申請候補に「書道」を選んだとの記事。書道は2021年に国の登録無形文化財になっている。登録採否は2026年。

  • 土田英順チャリティー500回

    2023年12月18日

     元札響首席チェロ奏者の土田英順が、500回目となるチャリティコンサートを札幌で開いた。〈500回続けられたのが信じられない。74歳のチェリストが86歳になった。支えてくれた皆さまのおかげ〉〈音楽の力で震災の苦しみ、悲しみを少しでも和らげていきたい〉。道新社会面。

  • 明和電機の「ナンセンスマシーン展」

    2023年12月17日

     来年1月20日に開幕する札幌国際芸術祭の事業のひとつ、明和電機の「ナンセンスマシーン展」が16日に始まった。初日は明和電機社長の土佐信道がミニライブも。3月3日まで。鹿追町を舞台にした映画『おしゃべりな写真館』の完成披露上映会が、町民ホールで16日に開かれた。妻を亡くした写真家と、山村留学で町に来た中学2年の少女が主要なキャスト。来夏全国公開される。いずれも道新社会面。

  • 麻生直子の詩集『アイアイ・コンテーラ』

    2023年12月16日

     奥尻町出身の詩人麻生直子の新詩集『アイアイ・コンテーラ』(紫陽社)。表題はニヴフ民族の言葉で「それは困ったね」の意味という。道新カルチャー面。
     社会面には、道内テレビ局3社がドキュメンタリー番組の映画化を相次いで公開するとの記事。HBCは『ヤジと民主主義』、UHBは『新根室プロレス物語』、HTBは『奇跡の子 夢野に舞う』。
     朝日新聞北海道面。公益財団法人アイヌ民族文化財団主催のアイヌ語弁論大会「イタカンロー」に参加した、北原モッコトウナシ(北大アイヌ・先住民研究センター教授)は、生誕120年の知里幸恵を描いた和製作品が感動ストーリーとして消費されていると指摘する。差別の解消は「個人的な思いやり」ではなく「制度の改革として目指すべきだ」という趣旨。差別や人権の問題に向き合う入り口として、知里幸恵の物語があってもかまわないと思うが、「感動」だけにとどまる浅さを突いているのだろう。同じく道内面に、北海道デジタル出版推進協会(代表理事・林下英二中西出版社長)の活動が紹介されている。2013年に道内出版社10社でスタート。現在は14社で、電子化した書籍・雑誌は1050点に及ぶという。木村盛武『慟哭の谷』や、けーたろう著・なかいれい絵の『おばけのマール』シリーズなど。

  • ジャズの街根室

    2023年12月15日

     老舗音楽雑誌「ステレオサウンド」が「ジャズの街根室」を特集した。1960年代に遡り、愛好団体やジャズ喫茶も紹介している。雑誌は1966年創刊。映画『千と千尋の神隠し』の音楽プロデューサー大川正義(根室出身)の提案で実現したという。道新社会面。

  • 『ともぐい』直木賞候補に

    2023年12月14日

     河﨑秋子の『ともぐい』(新潮社)が第170回直木賞の候補作となった。候補は2度目。選考会は2024年1月17日。

  • 2023ラポロ宣言

    2023年12月13日

     浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」が、台湾やカナダなどの先住民ら8人と共同で2023ラポロ宣言を取りまとめた。先住権は法律による権利ではなく、伝統や慣習に基づく各集団固有の権利であることなど、宣言は9項目。今年5月に開かれた国際シンポジウムを機に、半年に宣言文を日本語、英語、中国語でまとめた。道新社会面。

  • 狸小路の900m

    2023年12月12日

     道新札幌圏版はシリーズ《ディープに歩こう》の狸小路商店街の前触れとして、商店街のすべての店構えを撮影した写真を、1丁目から7丁目まで900m分を並べて見開きで見せた。小さいけど貴重なアーカイヴ。
     カルチャー面には十勝管内在住の河﨑秋子のインタビュー。明治の道東で、熊と戦う漁師「熊爪」の姿をモチーフにした『ともぐい』(新潮社)を刊行した。14年前、道新文学賞に初応募して候補に残った『熊爪譚』を「物語の根っこは一緒だが膨らませ育て上げた」という。古谷経衡の《考えるピント》は、杉田水脈衆院議員の差別発言をテーマに、「北海道は日本人が開拓したフロンティア」という根強い「開拓神話」にも言及し、アイヌ否定論者の主張の背景にあると指摘した。〈自国の誇りとは、過去に一度も自らの手が汚れていないことを喧伝することではない。過去の暗部を見つめ、真摯に反省し、繰り返さないように努力を続けることこそが真の愛国心ではないのか。

  • 余市舞台 映画『美晴に傘を』

    2023年12月10日

     道新の《支局長だより》は余市から。町内でほぼ全編を撮影した映画『美晴に傘を』が来秋全国公開。余市出身の映画プロデューサー大川祥吾(『サムライオペラ』)と、映画監督渋谷悠(『自転車』)が制作する。地元の余市紅志高校の演劇部や卒業生、町民が出演した。渋谷は「今回の映画を機に、(フィルムコミッション)設立に向けた動きが出てくることを期待したい」。

  • 五十嵐威暢アーカイブが金沢に

    2023年12月09日

     滝川出身の彫刻家五十嵐威暢の作品や資料を集めた「五十嵐威暢アーカイブ」が、金沢工業大学のライブラリーセンターに開設された。開館記念展示は「見ているか?」。《展覧会》は、本郷新記念札幌彫刻美術館で開かれている「生命体の存在」を紹介。道内の美術館が活躍中の地元作家を取り上げる機会が少ないことを指摘している。道新カルチャー面。
     朝日新聞北海道面。HBCが制作したドキュメンタリー映画『ヤジと民主主義 劇場拡大版』が、9日から公開される。映画の監督も務めた報道部の山崎裕侍のインタビューを掲載した。
     朝日新聞夕刊一面では、三浦綾子の元秘書山路多美枝が、強盗殺人事件の無期懲役囚と10年間、文通を続けているとの記事。綾子が読者の手紙に丁寧に対応してきたことにならった。記事に言及はないが、綾子自身も夫の三浦光世も死刑囚と文通していた。

  • 『悲別2023』上演へ

    2023年12月07日

     1990年に『今日、悲別で』として初演され、脚本家倉本聰の代表作ともなった舞台を、富良野GROUPが『悲別2023』として富良野演劇工場で上演する(8〜17日)。10年ぶりとなる。演出は久保隆徳。炭鉱閉山がモチーフだが、2012、13年には原発事故を盛り込み『明日、悲別で』も上演されている。札響のコンサートマスター会田莉凡を中心とするリッカ弦楽四重奏団が、13日にふきのとうホールで旗揚げ公演を開く。道銀芸術文化奨励賞に、声楽家の三輪主恭(かずやす)、日本画家の水野剛志が選ばれた。いずれも道新カルチャー面。
     むかわ町の穂別博物館は、カムイサウルス・ジャポニクス(むかわ竜)が発掘された当時の土壌から白亜紀後期の約7,200万年前の被子植物の花粉が見つかったと発表した。道新社会面。
     朝日新聞夕刊《現場へ!》は賢治の旅の4回目。賢治の樺太旅行などを取材して『サガレン』を刊行している梯久美子は、賢治が樺太鉄道での旅で何も書いていないことについて「悲しみの中にあっても、未知の土地の風物に魅了され、車窓の景色を見るのに夢中だったのでしょう」と話す。「賢治は鉄道や船で、二つの海峡を越えながら、生と死の境界をまたちだ。地理的な移動だけでなく、時間的な移動もそこにある。心の中で過去と未来を往還しつつ、体はここから別のどこかへ運ばれていく。そんな移動する文学の魅力が最大限に発揮されたのが、樺太旅行をもとに執筆された『銀河鉄道の夜』なのだと思います」

  • 『アイヌもやもや』

    2023年12月06日

     アイヌ民族への差別について文章と漫画で伝えた『アイヌもやもや』(303BOOKS)から刊行された。道新社会面。北大アイヌ・先住民研究センターの北原モコットウナシ教授と漫画家の田房永子による。東京に住むアイヌ民族の男子高校生が主人公。アイヌ民族に対する差別や偏見を取り上げ、解説している。「もやもや」の意味は「声を上げなくても、相手の言動に違和感がある状況」と北原教授。
     朝日新聞夕刊の《現場へ!》は賢治の旅の3回目。青函連絡船で函館へ渡り、旭川を経由。旭川宮沢賢治研究会の呼びかけ人、元旭川市中央図書館長の松田嗣敏は「北国の気持ちの良い朝の空気や旭川の風景が、長旅に疲れ、妹の死に沈んでいた賢治の心を、一時的に軽やかなものへと変えたのかもしれません」と話す。

  • 映画『蘭島行』

    2023年12月05日

     名寄出身の鎌田義孝監督による映画『蘭島行』が道内先行上映。東京でやさぐれた暮らしをする主人公は、小樽で暮らす母が自殺を図ったと連絡を受ける。自殺に失敗して倒れていた女を妻として連れて帰郷する。全国公開は来夏の予定。道新カルチャー面。
     朝日新聞《オリパラ札幌招致の行方》下では、2014年に札幌冬季五輪招致を表明した上田文雄元市長の談話を掲載。〈五輪を開いて得られるものは「市民力」です。それは今後も変わりません。市民が自らの状況を判断して、協力してやっていくことです〉〈信頼できる市役所であるために、市が日々、適切な情報を提供して市民と共有していくのが、大事な仕事です〉。理念はそのとおりだが……。

  • 写真集『Sakhalin』

    2023年12月04日

     東京の写真家新田樹が、昨年出版した写真集『Sakhalin』を手にサハリンを訪問している。9年がかりで、戦後にサハリンに残留した朝鮮半島出身者や日本人配偶者らを撮影した。〈残された人々の境遇や歴史を、遠い地の出来事ではなく自分の両親や祖父母にも起こりえたことだと感じてほしい〉。道新社会面に掲載。
     朝日新聞夕刊《現場へ!》では、『銀河鉄道の夜』執筆のきっかけとなった、ちょうど100年前の宮沢賢治の樺太への旅を取り上げた。連載の1回目。賢治は花巻農学校教員時代、教え子の就職を頼みに樺太に渡ったのだが、前年に結核で亡くなった最愛の妹トシの追悼の旅とも言われている。

  • 『左川ちか モダニズム詩の明星』

    2023年12月03日

     道新読書ナビの《ほっかいどう》は川村湊・島田龍責任編集『左川ちか モダニズム詩の明星』(河出書房新社)を、加藤重男(みんみん舎代表)が評した。昭和初めに24歳で没した余市生まれのモダニズム詩人。道立文学館で開催中の特別展「左川ちか 黒衣の明星」にも呼応し、島田編『左川ちか全集』(2022年、書肆侃侃房)を皮切りとする近年の左川ちか再評価の集大成とも言える一冊である。
    「北海道ゲームアーカイブ協会」が札幌で発足。ゲーム収集家の山本耕平らが、ファミコンソフトなど昭和期からのゲームソフト3,600本、関連書籍3,500冊などを集めた。2026年ごろにはNPO法人化も目指すとのこと。道新社会面。
     朝日新聞北海道面。函館アイヌ協会が、アイヌ民族文化財団のアドバイザーを招いてイチャルパ(先祖供養の儀式)を開催している。わずか9人の協会員だけでは成り立たない。アドバイザーは「アイヌだけで集まれないから伝統儀式をやめます、ということでよいのか。私のような和人も含めて集まって継承していくあり方があってもよいと思う」と話す。

  • 岩佐ビルの歴史

    2023年12月02日

     道新札幌圏販の《ディープに歩こう》のファクトリー編で、岩佐ビルが取り上げられた。1950年に岩佐通産のラムネ製造工場として建てられ、最盛期には250人以上が働いていた。1階の天井が高いことが特徴で、洋菓子店や演劇専用小劇場「BLOCH」が入居している。BLOCHを開業したのは、かつてルネッサンス・マリアテアトロのマネジャーだった和田研一。この20年で100以上あった劇団は、70団体ぐらいになったと振り返っている。
     サタデーどうしんの文化・エンタメでは、道立文学館で開催している特別展「左川ちか 黒衣の明星」について、主任学芸員の吉成香織が書いている。〈ちかは、故郷に向き合い、自分の内面に向き合い、真摯に自己の詩の表現を追求することで、自分にしか作ることのできない、しかし、近代を生きる多くの人々に共感を与える、生きた「モダニズム」詩を作り上げた〉。同じ紙面には、美術評論家の酒井忠康が蔵書1,200冊を札幌彫刻美術館に寄贈したとの記事も。
     脚本家の山田太一が死去。11月29日、89歳。詩人・小説家の三木卓死去。11月28日死去、88歳。小熊秀雄賞の選考委員を務め、伊藤整文学賞を受賞した。
     朝日新聞の北海道面は、《オリパラ札幌招致の行方》の中で、阿部雅司・札幌五輪ミュージアム名誉館長の談話。〈積極的な賛成でも反対でもない。招致への明確な賛否を決めかねている中間層、浮動層の方々たちに、何もアプローチできなかったことがミスなんです〉。重要な視点だろう。

  • 札幌冬季五輪 招致断念を受けて

    2023年12月01日

     札幌市が冬季五輪招致を断念した背景を、朝日新聞が社会面、道内面とスポーツ面で総括している。汚職五輪への逆風からの脱出をリードできなかったJOCの不甲斐なさにも触れ(社会面)、札幌の招致理由の「五輪は都市再開発の起爆剤で、海外観光客の増加につながる」を昭和の価値観を引きずったままと断罪した(スポーツ面)。だがそれは札幌に限ったことではなく、汚職五輪が記憶に新しい東京大会もJOCの存在も、古い価値観の祝祭資本主義そのものであった。道内面には、常見陽平千葉商科大准教授が寄稿(《オリパラ札幌招致の行方》上)。福岡市の成長ぶりを引き合いに、札幌は「世界を相手にできておらず、ビジョンを持っていないから」と指摘している。
     道新も1、2、3面、社会面で大展開している割には、断念の理由は汚職五輪との指摘に終始し、なるほどと思わせる「論」は少ない。北海学園大教授の山本健太郎が、「市長がまずやるべきことは、札幌のまちづくりの将来像を描き直すことだ」と述べ、「人口が減少し、縮小していく都市の判例を作り上げてほしい」と結んでいる。
     道は本年度の北海道功労賞に、アイヌ服飾文様研究家の津田命子(のぶこ)ほかを選んだ。

  • hitaruが開館5周年

    2023年10月31日

     道新カルチャー面では、開館5周年を迎えた札幌市民交流プラザを総括した。市民交流プラザは2018年10月7日に開館。当年度は半年間で図書・情報館を含めた来館者112万9千人、hitaru稼働率91.8%、翌年度は169万3千人を超えた。コロナ禍を経て、22年度は100万人に回復した。自主事業のうち、創造事業では地元ゆかりの人々が中心となってオペラとバレエを隔年で開催する仕組みとした。課題は集客力。『アイーダ』『白鳥の湖』などポピュラーな演目と比べ、『サロメ』や『ドン・カルロ』が苦戦するのは見えていたこと。三浦洋(北海道情報大教授)が指摘するとおり、今後の工夫が問われる。同じ紙面の《ステージ》では、札幌座の『群来、春告魚と蜃気楼』を評した。
     第38回北海道新聞短歌賞は帯広の石畑由紀子『エゾシカ/ジビエ』、佳作は旭川の塚田千束『アスパラと潮騒』。俳句賞は苫小牧の名取光恵『羽のかろさ』、佳作は函館の對馬埜臬(やげつ)『青丹斎日乗抄』に決まった。

  • 北海道新聞文学賞に原雪絵『さちこの行方』

    2023年10月30日

     第57回北海道新聞文学賞の創作・評論部門は、原雪絵『さちこの行方』が満場一致で本賞を受賞。詩部門は故永(ゆえなが)しほる『壁、窓、鏡』が本賞、若宮明彦『瑪瑙屋』が佳作となった。
     合唱コン中学混声の部は北斗市立上磯が銀賞、中学同声では札幌市立札苗が銀、市立上篠路が銅。吹奏楽コンの職場・一般の部は、上磯吹奏楽団が銀、札幌ブラスバンドが銅。

  • 北海道文化賞に手島圭三郎ら

    2023年10月29日

     第77回北海道新聞文化賞が発表された。社会部門は版画家・絵本作家の手島圭三郎(江別)、学術部門は北大大学院医理工学グローバルセンター長で放射線治療医の白土博樹、経済部門は水稲3品種の食味「特A」評価を受けた道立総合研究機構農業研究本部。
     第77回全日本合唱コンクール全国大会高校生部門で帯広三条が香川県知事賞と金賞(Aグループ)、札幌旭ヶ丘が銅賞(Bグループ)を受賞した。全日本吹奏楽コンクール全国大会の大学の部では、道教大函館校が銅賞。

  • 網走で川瀬巴水展

    2023年10月28日

     市立網走美術館で、木版画家川瀬巴水(1883〜1957)の企画展が開かれており、展覧会に計100点を提供したコレクターの荒井寿一(神奈川県)のギャラリートークが26日に開かれた。道新電子版より。川瀬は浮世絵の伝統を継承し、絵師、彫師、摺師が分業する「新版画」を代表する作家。新版画は同時期に市立弘前美術館でも展覧会が開かれ、川瀬や渡邊庄三郎の作品が展示されているという(東奥日報)。川瀬はいずれもスティーヴ・ジョブズが作品を収蔵していたことで知られるとの説明。まあ、そうなりますね。
     彫刻家の二部黎が80歳で死去。2017年に斜里から矢臼別に移住して、美術館「平和の家」を開設していた。

  • 10回目の新千歳国際アニメ映画祭

    2023年10月27日

     本郷新彫刻賞授賞式が26日に開かれ、第4回受賞者である中札内村の藤原千也が喜びを語った。〈受賞の連絡を聞いた時は飛び上がった。実際に作ることができてうれしい〉。道新札幌版。
     カルチャー面には、10回目の節目を迎えた新千歳空港国際アニメ映画祭が11月2日開幕の記事。事務局の小野朋子チーフディレクターは「ジェンダー問題など、社会の閉塞感を反映したものが目につきます」。
     朝日新聞夕刊社会面。埼玉県川越市の尚美学園大に、J-POPのルーツをたどれる資料を集めた「富澤一誠 Jポップ・ライブラリー」が開設された。ポピュラー音楽評論家の富澤は同大副学長。吉田拓郎、ユーミン、竹内まりや、松原みき、BOØWYなど、70〜90年代を中心とする5,159組の計8万点! 寄贈なのか寄託なのかは書かれていないが、個人が長年苦労して集めた資料群が、公共的なアーカイヴとして公開(現在は在学生のみ)される意義は大きい。

  • NPOがモエレ沼公園に植樹

    2023年10月26日

     NPO法人モエレ沼公園の活用を考える会が、モエレ沼公園の森づくりにチャレンジするという話題。道新札幌版。ごみ処理場を埋め立てした関係で、森林の生育環境はあまり良くない。そこで、生態学的混播・混植法により、サクラの森にキタコブシやハウチワカエデなどから種を採った苗木8種8株の植樹を試みた。サクラの森の針葉樹の間伐材は、馬搬により運び出す。考える会ならではの植樹イベントは29日。
     朝日新聞文化面。建築家伊東豊雄の初期の建築資料(図面や模型2,600点)が、モントリオールのカナダ建築センター(CCA)に寄贈される予定という。2013年、資料の海外流出を防ぐため東京・湯島に国立近現代建築資料館が設立されたが、予算やスペース、人員の問題で、資料を一括収蔵できない日本と違い、CCAは一括して引き取ってくれる。もとは民間の施設だが、現在は国も州もバックアップしている。

  • エスコンがキングムー解体へ、ホテルに

    2023年10月25日

     24日のUHBニュース。既報のキングムー解体後の再開発は、エスコンフィールドで知られる日本エスコンが担い、2024年に14階建てのホテルに生まれ変わるという。

  • 篠路農村歌舞伎で落語を上演

    2023年10月24日

     札幌の篠路農村歌舞伎保存会が29日に、篠路コミュニティセンターで落語「唐茄子屋政談」を朗読劇として上演する。篠路歌舞伎は1902(明治35)年から1934(昭和9)年まで上演されたという。篠路では中央保育園が「篠路子ども歌舞伎」を1986年から続け、保存会が支援してきているが、保存会も自ら歌舞伎上演に挑戦するのが目標という。心意気。道新札幌版。
     社会面には、国産最古のオルガン(1905年、明治38年製)を所蔵する岩内町郷土館で、29日にオルガンの弾き方を学んだり、実際に弾くこともできるイベントが開かれる。岩内の網元が購入し、地元の寺院「帰厚院」に寄贈された後、町の所有になったという。

  • ツキガタアートヴィレッジで文化芸術祭

    2023年10月23日

     新聞は休刊日。道新電子版には、月形町の芸術活動拠点「ツキガタアートヴィレッジ」で開かれている「ツキヴィ文化芸術祭」の記事。ヴィレッジは旧知来乙(ちらいおつ)小の校舎を活用した施設。高橋喜代史、川上りえらが出品している。11月12日までの土日祝日に開館する。

  • アイヌ文化を体験してもらう努力

    2023年10月22日

     本日も道新社会面はアイヌ文化の話題。秋サケの不漁で、白老町のアイヌ文化体験に影響が出ているとの記事。例年はウヨロ川上流でサケを捕まえてその場で解体し、命の大切さを伝えてきたが、18、20日の体験事業は、本物のサケの代わりに発泡スチロールを使った。東京では21日に、アイヌ文化伝承の意義や課題を考えるシンポジウムが、日本女子大で行われた。平取町の木村梨乃が、カムイユカラなど口承文芸を披露した。
    《記者の視点》は、旧石器時代の黒曜石石器類が国宝指定を受けて4ヶ月。「国宝のある町」を育てていくための課題として、ガイド不足や白滝ジオパークの運営で露呈している問題などを挙げた。元井麻里子遠軽支局長。

  • アイヌ民族差別SNS投稿許さず!

    2023年10月21日

     道新社会面。札幌在住のアイヌ民族多原良子は、自民党議員の杉田水脈によるSNSへのアイヌ民族差別投稿を受けて法務局に人権救済を申し立てた。差別的投稿の削除要請も続けている。人権侵犯認定を受けてもなお大量に投稿される投稿から、杉田に同調している勢力が一定数あることを裏付けている。
 文化・エンタメ欄。北大大学院文学研究院共同研究員の及川琢英が『関東軍―満洲支配への独走と崩壊』を刊行した。関東軍の歴史や政府との関係を、中国側の資料も踏まえて明らかにした。

  • 長倉洋海がガザ自治区の住民避難訴え

    2023年10月20日

     道新社会面。写真家の長倉洋海が、イスラエル軍の侵攻が秒読みになっているパレスチナのガザ自治区の住民避難を訴えている。ガザには216万人が住み、侵攻作戦に民間人も巻き込まれる可能性が高いという。〈国際社会として、攻撃をやめてくれと声を届けることも大事だ。日本の私たちも現地で何が起きているか心に刻み、教育、医療などさまざまな分野で支援していく必要がある〉。シアターキノでは27日、ドキュメンタリー映画『ガザ 素顔の日常』が上映される。福岡の配給会社「ユナイテッドピープル」が昨年から上映してきた。

     カルチャー面。映画『キリエのうた』を帯広近郊で撮影した岩井俊二監督インタビュー。北海道ロケでは偶然が重なって奇跡的にいいシーンが撮れることが多いという。〈北海道は来るとミラクルが必ず起きる聖地のような場所。拝みたくなる感じです〉。主演はアイナ・ジ・エンド。札幌座は26〜30日に、シアターZOOで『群来、春告魚と蜃気楼』を上演する。作・演出は北海道演劇財団の芸術監督清水友陽。余市町を舞台とする物語という。文芸誌「札幌文学」が93号で、今年2月に亡くなった代表の田中和夫を追悼した。

     札幌の美術家西村一夫が、喜茂別のギャラリー杣人で展覧会を開いている。ギャラリー開設者で昨年亡くなった白鳥信之との生前の約束だったという。札幌版の《みにきて》。

     朝日新聞北海道面に、吹奏楽名門の遠軽高校の記事。全日本吹奏楽コンクールに2年連続出場。昨年完成した606席の音楽ホールを無料で練習に使え、大型楽器も用意されているという。いわばフランチャイズである。建設業の渡辺組が吹奏楽部向けの下宿「ミライロッジ」を6,000万円をかけて建てた。スポーツにも町の支援は及ぶ。佐々木修一町長は〈地域の人々が定着し、生活を続けるには医療・教育が不可欠。人口減少で高校が削減されていけば子どもを教育できない。町にある唯一の高校・遠軽の5クラスを維持することは日本の食料、環境を守ことにつながる〉。究極の目標は町の振興にあるが、全国クラスの活躍を続ける部活動を目当てに、入学者は急増している。めざましい成果だ。

     同じ紙面に、アイヌ先住権訴訟の記事。故萱野茂の次男萱野志朗が証人となり、鮭とアイヌのかかわりについて語った。萱野茂の著書から、曽祖母が「わたしの息子がサケを捕って神々に食べさせ、それと合わせて子供たちに食べさせたのに、罰を与えられるとは何事だ」と嘆いた話を紹介。訴えは浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」が国と道を相手取って起こした。

  • イマヌエルオーケストラが音更来演

    2023年10月19日

     道新帯広・十勝版の記事。タイ・バンコクのクロントイ地区スラム街出身の若者でつくる「イマヌエルオーケストラ」が音更町を訪れ、音更町伊福部昭ジュニアオーケストラと交流した。奈良県のNPO法人の企画で、札幌のどさんこ青少年オーケストラ協会も協力した。

  • キングムー解体始まる

    2023年10月18日

     道新札幌圏版に、クラブ「キングムー」解体工事が始まったとの記事。1991年開業。建設費65億円。ディスコブームが去り、2008年に閉店。東京の不動産業者が2016年に再オープンした後は、外国人観光客も急増したということなのになぜ閉店なのかは、解体計画が判明した13日の記事でも不明だが。店が賑わっていた当時の写真が貴重だ。

  • 文学の妖精「アナタニサマ」

    2023年10月17日

    2023-10-17
     朝日新聞北海道版に、文学の妖精「アナタニサマ」の話題。文芸誌「逍遥通信」に掲載された札幌の小磯卓也の短編のストーリーをもとに、筆者が自ら作った人形の展覧会が、小説の舞台でる小樽で開かれているという。「都市伝説」として書かれた物語が面白い。冬の夜道を歩いていると文学の妖精が「あなたに」と本を差し出してくる。本を受け取ると、読むのをやめられなくなり、凍死してしまう。助かる方法は「もう読みました」と断ること。実に魅力的なお話。

     谷村新司死去。74歳。『冬の稲妻』『遠くで汽笛を聞きながら』『いい日旅立ち』『チャンピオン』。どれもわれわれの青春。『今はもうだれも』が「アリス」のオリジナルではないことを知らなかったのは不覚だった。道新社会面には、谷村の別荘があった弟子屈町の徳永哲雄町長がコメント。

  • 中山久蔵の子孫が講演

    2023年10月16日

     道新札幌圏版に、寒冷地米栽培の祖とされる中山久蔵の子孫中山徹の講演会が15日、北広島の旧島松駅逓で開かれた。久蔵は1873(明治6)年に、北海道産米のルーツとされる「赤毛米」の栽培に成功し、稲作の礎を築いた。

  • 鷲之木遺跡めぐる住民運動

    2023年10月15日

     道新の《支局長だより》は、今年で発見20年となった森町の鷲之木遺跡について。発見当時、移設が検討されていた遺跡を現地保存に転換させた住民運動に触れている。高速道路が遺跡下を通っていることにより、縄文世界遺産の「構成資産」とはならず、「関連資産」にとどまった。来年度からは、展望デッキや見学ルートなどの整備が始まるという。

  • 恐竜研究の小林快次インタビュー

    2023年10月14日

     道新サタデーどうしんのフロント面は、恐竜研究の国内第一人者である北大総合博物館の小林快次教授。むかわ町穂別で発見されたカムイサウルス・ジャポニクス(むかわ竜)の研究だけでなく、淡路島で見つかったヤマトサウルス・イザナギイ、中川町のパラリテリジノサウルス・ジャポニクスなどの研究成果を発表してきた。世界的な調査の過程で、気候変動に伴う環境の変化から史上6回目となる生物の大量絶滅が進みつつあるという。計画中のむかわ町穂別博物館(2026年4月開館予定)にも言及している。
     道新社会面の《朝の食卓》は、旭川の郷土史ライター那須敦志の「漫画になった小熊秀雄」。小熊の生涯を紹介する『漫画 詩人小熊秀雄物語』が刊行された由。作者は旭川在住の漫画家日野あかね。小樽では、13日から全国町並みゼミ小樽大会が開かれた。「小樽運河100年の歴史から考える」がテーマ。小樽運河論争を長年研究する法政大の細川三郎教授(環境社会学)が講演した。

     札幌版は、hitaruがニトリホールディングスから5年間で1億円の支援を受けると発表。これまでにも延べ1億円を拠出している。札幌の中学2年生を無料で毎年招待する「青少年バレエ鑑賞事業」や、オペラやバレエの「hitaruプロジェクト」に活用される。

  • 北海道・北東北の縄文遺跡群スタンプラリー

    2023年10月13日

     道新社会面。道は13日から、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」に含まれる道内遺跡をPRするため、NFT付きのアート作品を活用したデジタルスタンプラリーを始めるとの記事。

  • 苫工高がアイヌ文様入り日本刀を制作

    2023年10月12日

     苫小牧工業高校の教諭と生徒が「たたら製鉄」で精製した鉄を原料とし、刀身にアイヌ文様を彫刻した日本刀が作られた。道新社会面の記事。全長40センチ、刀身30センチ。刀は苫工の実習担任教諭の柴野希生(まれお)、アイヌ文様の彫刻は平取町二風谷の関根真紀。刀を製作したのは岡山県の刀匠だったというのが惜しいが、取り組みの趣旨がいい。

     同じくカルチャー面。本郷新記念札幌彫刻賞は中札内村の藤原千也(かずや)の『太陽のふね』に決まった。樹木、樹皮、鉄を使い、地中に大部分が埋まった巨木を表現している。来年5月から札幌芸術の森美術館中庭に展示される。

  • 札幌冬季五輪を断念

    2023年10月11日

     札幌市が2030年開催の冬季五輪招致の断念を正式に発表した。断念が伝えられて、すかさず北海道新幹線の30年開業も難しいというニュースが駆け巡ったのは、根比べのようなものだったのかしら。日本ハムや日本医療大学の北広島移転もそうだが、行政や大企業の根幹をなすような将来設計が、実はあてにならなくなってきたのではないか。
     札幌駅北口に建設中の「北八劇場」と北海道文化財団による「ワレワレのモロモロ」なるワークショップが、11月にかでる2・7で開かれるとX(ツイッター)で告知あり。参加者が「自分の身に起こった話を書き、演劇化する」という試み。ハイバイの劇作家・演出家岩井秀人と俳優の川面千晶が講師を務め、中学生以上を対象とする。開館前から動きが見えてこそ地域に根付く「劇場」への可能性が広がる。
     UHBニュースで不思議な報道。韓国籍の「世界的画家」が所有する札幌・中央区のマンションから、現金2,300万円などが入った耐火金庫が盗まれた。盗んだ男は画家からマンションの管理を任されていたそう。これだけならおかしな記事ではないが、ニュースサイトには「男は2019年7月15日ごろから2023年3月18日午後2時45分ごろまでの間…金庫を盗んだ疑い」とある。要するに、男が管理を任されてから捕まるまでのいつか、ということか。しかも世界的画家なら有名人のはずで、名前が明かされてもおかしくない。どんな配慮が働いたものやら。他媒体の報じ方が気になる。

  • ギリヤーク尼ヶ崎が新宿公演

    2023年10月10日

     新聞は休刊日。道新電子版では、大道芸人ギリヤーク尼ヶ崎の東京・新宿公演の様子を紹介している。青空舞踊55周年で、京都、札幌、旭川、札幌で公演予定とのこと。

  • 北海道でなぜ竹か?

    2023年10月08日

     道新朝刊《読書ナビ》の「ほっかいどう」は佐藤太裕『竹取工学物語』(岩波書店)。著者は北大教授。確かに「なぜ北海道で竹の研究なのか」との問いが浮かぶ。本質ではないけれど。
     朝日新聞朝刊の《声》欄。夫が都心で偶然見つけたタマムシのことを枕に、オーボエ奏者として坂本龍一の室内楽曲の初演に携わった経験に触れた。神宮外苑の再開発への反対表明について〈美しい音楽と共に改めてその叫びが突き刺さる。失ったものは簡単には取り戻せない。樹木も鳥も虫も。破壊への歩みを止めるなら今しかない。〉

  • 映画『カムイのうた』公開へ

    2023年10月07日

     道新朝刊のサタデーどうしん。知里幸恵の生涯を描いた映画『カムイのうた』が完成し、11月23日から道内で、来年1月から全国でも上映される。監督は札幌出身の菅原浩志。主演は吉田美月喜(みづき)。アイヌ民族が不当に受けた迫害の歴史も克明に描いたという。
     文化・エンタメの《展覧会》は札幌のギャラリーCAI03で開かれた鈴木涼子展「Body Letter」を取り上げた。祖父が残した「軍隊手諜」をモチーフのひとつとして、戦争が引き裂いた家族の問題を鋭く突く。「道内美術の大きな収穫」という見解に賛同。hitaruは2025年に上演予定のオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の出演者を募集している。演出は粟国淳、演奏は園田隆一郎指揮の札響。
     社会面は札幌国際芸術祭(SIAF2024)の概要発表の記事。50組以上が参加し、道立近代美術館、SCARTS、東1丁目劇場施設、札幌芸術の森美術館、モエレ沼公園、さっぽろ雪まつり会場など。北海道文化賞など決まるの記事も。文化賞はアイヌ詩人の宇梶静江、彫刻家の国松明日香、江刺のいにしえ文化語り部会の松村隆。文化奨励賞は、ピアニスト野瀬栄進、縄文太鼓の茂呂剛伸、書家の山田起雲。

  • 音更の任梟盧で池原昭治の手作り漫画

    2023年10月06日

    「まんが日本昔ばなし」の演出・作画・美術を手掛けた池原昭治が中学生時代に手作りした漫画本が、音更の任梟盧(にんきょうろ)で見つかったという記事が道新社会面に。任梟盧は評論家の草森紳一が残した1万5000冊の蔵書を保管する書庫。官ではなく民、それも一人の力でこしらえた図書館であろう。

  • アーサー・ビナード《言の葉工務店》

    2023年10月05日

     道新朝刊の新・カルチャー面は1頁全段。次回札響定期、道近美で開催中の「近代日本画と北大路魯山人展」、《音楽会》は9月19日の「弦楽五重奏の夕べ」(評・三浦洋)、そして新連載のアーサー・ビナード《言の葉工務店》。「台風」と「野分」、「処理水」と「汚染水」といった言葉の点検を文学者らしい立場で。興味深い(が連載のスパンはわからない)。
     この紙面には新連載があるのでさほど気にならないが、夕刊廃止後のスクラップアンドビルドが十分に行われていないことは気になる。最たるものは第4社会面。確か第3社会面にあったはずの寄稿《朝の食卓》が移ってきて、おまけに夕刊社会面の《まど》が並んでいる。《まど》は記者の長寿コラムだったし、看板を維持したい気持ちはわからないでもない。しかし、デザインもそのままで「とりあえず」押し込んだようにしか見えない。そんなに大事な欄だったら、もうちょっと工夫してあげては。
     朝日新聞朝刊道内面に《ラピダス元年》のワッペン記事。内容はほぼ道新の後追いであるが、課題は水・電力供給と人材育成と整理した。気になるのは、原発再稼働が遅れれば支障が出かねない、一方で再生エネはラピダスも望んでいるものの不足するかもしれないとの論調。「だから再稼働を急ぐべし」と言いたいのだろうか、疑問だ。

  • 駅の時計と時刻表

    2023年10月04日

     鉄道駅のホームから時刻表や時計が消えつつある。そういえば札幌駅のみどりの窓口にも、携帯用のミニ時刻表の配布はやめたと掲示があった。朝日新聞朝刊社会面。コロナ禍や少子化による経営環境の厳しさ、コスト削減、スマホなどで代用できることが背景にあるというけれど、時刻表を見て次の移動はどの便にしようか、と考えることはビジネスだけじゃなくて鉄道旅の楽しさのひとつでもあったはず。乗ってくれないと厳しいんですと言いながら、不便でしょうけれど乗る人が自分で調べてね、では新たな鉄道ファンも増えないのでは。

  • 山口真由インタビュー

    2023年10月03日

     道新朝刊の新紙面。まずはカルチャー面「論じる」。大型インタビューの《会いたい 聞きたい》は、信州大特任教授・ニューヨーク州弁護士の山口真由。新著『挫折からのキャリア論』(日経BP)は、社会人一年生のころからプライドの高さが災いして失敗を繰り返してきたという経験を綴った。女性はもっと連帯を強めるべしとの提言も。他に《文芸時評》《道内文学 短歌》《魚眼図》《10月の札響》。

  • リトルマーメイド4000回

    2023年10月02日

     道新朝刊社会面。劇団四季の『リトルマーメイド』が、札幌の東1丁目劇場施設で日本公演通算4,000回を迎えた。それはさておき「東1丁目劇場施設」と「施設」をつけているのは、独立した劇場としての人的・予算的な体裁を整えていないからなのだろうか。

  • 北海道新聞新紙面

    2023年10月01日

     消費税のインボイス(適格請求書)制度が始まったのを実感したのは、街なかの駐車場の領収書に【10%対象・税込】のゴム印を押してくれたとき。「今日から変わったんですよ」と言われて気がついた。道新朝刊は、夕刊廃止を受けて様変わり。日曜の読書ナビは3面から2面に減り、大型書評は4本から3本に。《鳥の目 虫の目》《訪問》《コラム》は維持。ということは《ほっかいどう》の書評がなくなり、《北海道の新刊》(8行×2冊)に大幅縮小。記者ものの《読んでみた》がそれに代わるのかしら。やむを得ないことだけれど(後日注:ほっかいどうとコラムは入れ替え掲載のよう)。
     朝日新聞朝刊1面、2面に、芸能事務所との契約解除によってバンド名を名乗れなくなったビジュアル系ロックバンドが事務所側と裁判で闘い、権利を勝ち取るまでの詳細を報じている。クリエイティヴな仕事に誇りを持つ「アーティスト」なのか、事務所の言いなりに活動して名声を勝ち取った「所属タレント」なのかにもよるだろうが、そもそも「興行」は一般常識とは無縁な世界でもあった。ジャニーズ問題を挙げるまでもなく、旧態依然とした芸能界の商慣習がガラガラと音を立てて崩れつつある。

  • ラピダス報道に違和感

    2023年09月30日

     連日紙面を賑わしている「ラピダス」記事に微妙な違和感を覚えている。30日朝刊の1面は「ラピダス電力60万キロワット」の大見出し、「道内需要の1〜2割」「安定調達 北電と協議」の見出しが踊った。要するに千歳に建設中の工場が稼働すると電気を食う。北電はそれに間に合わせるべく投資する、との趣旨だ。量産を開始すると、ラピダスは道内電力需要の大きな一画を担うことになる。これは北電の特上のお得意様が出現することに他ならない。
     北電にとっては、泊原発3号機の再稼働に追い風となる。60万キロワットといえば、1号機、2号機の定格出力に匹敵する。1〜3号機ともに東日本大震災を受けて停止・点検中で、現時点では再稼働の見通しが立っていない。ラピダス工場の稼働で電力が逼迫する可能性が出てきて、大義名分が立つと考えるのは、企業体としては当然のことかもしれない。しかし、である。
     違和感の正体は、半導体の「産めよ増やせよ」が「国策」であることだ。経済産業省が2021年6月に公表した資料「半導体戦略」には「日の丸半導体」なる言葉まで明記されている。米・中・欧州・台湾・韓国が、いかに半導体製造に投資してきたかをこと挙げし、国内で半導体を生産する必要性を力説している(83ページ!もある饒舌な資料)。
     読者からは、国家政策に「従順」な北海道(や北電)が、経済産業省の敷いたレールに乗っかってウハウハしている記事に見えるのではないか。北海道の開拓の歴史、炭鉱の歴史と同じことが繰り返されないと、誰が証明してくれるのだろう。ちなみにラピダス側は再生エネルギーによる電力利用を優先したい意向とも書いてある。もちろんこれまでも、北大公共政策大学院教授の山崎幹根が7月29日の《教授陣のマンスリー講座》で、〈ある時代の国際環境や産業構造、政治的な背景の下で打ち出された国策は、いつか失効もしくは変容し、立地自治体は「自立」を迫られるかもしれない。降って湧いたような大型投資案件を持続的な発展につなげられるか。北海道のしたたかさが試される〉と釘を刺した。
     いわゆる記者ものの記事や識者の声でも、国策による工場誘致への警戒は表明されているが、1面記事のインパクトに比べ、いかにも弱い。「国策会社が電気くれと言ったから今日はうれしい再稼働記念日」紙面では、短歌にも悪ふざけにもなりゃしない。「国策ありがたり文化」ってのもあるんじゃないのかい。いつ言おうか、迷っていたが、ちょうど今日は道新夕刊の最終日。こうした文化の是非を「感じ」て、「論じ」ることを「楽し」むことも、立派な「カルチャー」じゃないのかと。
     その夕刊最終のカルチャー面は、「文化、芸能 夕刊で時代映す」の総括紙面。桜木紫乃が「夕刊マダムより愛を込めて」と、いつもながらの愛ある寄稿。《道内文学 創作・評論》の執筆を担当していた澤田展人が「深い考察 これからも必要」と、もっとなエールを送る。65年間続いたコラム《魚眼図》、猫の目のように一貫性を欠いた過去の紙面の移り変わり、映画評や90年代の見開き紙面などにも言及している。私自身が記者人生のうち20年ほどを費やしてきた紙面であることを思うと感慨はあるけれど、感傷はない。朝刊だけになる明日からも、文化は続くよいつまでも。
     朝日新聞朝刊社会面に、池澤夏樹が早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞の記事。

  • 道新文化面は朝刊に週4面

    2023年09月28日

     道新朝刊に、夕刊廃止後は文化面を朝刊に週4面掲載するとの告知。火曜「論じる」木曜「感じる」金曜「楽しむ」土曜「文化・エンタメ」。火曜土曜は従来通りとすれば、木曜と金曜は新設となるようだ。アーサー・ビナード、西條奈加のエッセイ、大型インタビュー、クリエイティブオフィスキューのコーナーも設けるという。面名はカルチャーを維持する模様。

  • 釧路の「炉ばた」再開

    2023年09月27日

     道新朝刊《読者の声》に、釧路の「炉ばた」再開を喜ぶ投稿があった。職場が弟子屈だったころ、会社の先輩に連れていってもらった記憶があるなあ。昨年、市内の炉端焼き店が「釧路炉ばた学会」を組織した由。学問かどうかは別として、炉端文化として語ることには意義がある、と言いたい。
     社会面にはカルチャー誌『BRUTUS』と札幌の国内観光プロモーション実行委が連携し、期間限定のウェブマガジン「旅の目的は詰まっている 何度でも通いたい街、札幌』を発刊した。企画は悪くないのだろうけれど、タイトルはどうだろう。北大に「ワイン教育センター」なるものが開所したとの記事も。野生酵母による醸造技術や、ブドウ栽培に適した土壌などを研究していくそう。ワインに関する学位も設ける構想があるというから、本格的。ところで建物は1901年建設の国登録有形文化財「旧札幌農学校昆虫及養蚕学教室」をセンター棟に改装し、石造りの昆虫標本室はワインの貯蔵・展示施設にするというのだが、標本の行き場は? すでに総合博物館に移したのかしら。
     夕刊カルチャー面には、7〜9月の《季評・音楽》。ムジカ・アンティカ・サッポロの『コーヒー・カンタータ』や札幌・リトアニア文化交流コンサートが取り上げられている(評・三浦洋)。《展覧会》の画家大地康雄が85歳とは驚き。道立文学館では「アイヌ神謡集」刊行100年、知里幸恵の生誕120年を記念するイベントが開かれた(23日)。生誕120年といえば岩橋英遠と同い年だ。
     夕刊社会面では、札幌在住のそにしけんじによる4コマ漫画『ねこねこ日本史』を紹介。共同通信の長い記事。

  • 「北海道石」を鹿追町教委が町天然記念物に指定

    2023年09月27日

     道新朝刊社会面に「鹿追町 北海道石を守る」の記事。蛍光色を発する鹿追産「北海道石」を町教委が町指定文化財(町天然記念物)に指定した。文化財の名称は「然別火山群のオパール産地」。南ペトウトル山の南斜面にある。違法採取者が相次ぎ、罰則を伴う条例による保全の試み。
     朝日新聞朝刊教育面の「ボーン・クリエイティブ」の試みが面白い。作曲家藤倉大による作曲教室。現代音楽の奏法を子どもに紹介しつつ、自由に書いてもらう。「生まれながらの天才」に光を当てる取り組み。親の口出し厳禁というのもいい。
     道新夕刊は秒読み。カルチャー面には、テレビ局の秋改編の話題、《音楽会》はイ・ムジチ合奏団。

  • 岩橋英遠資料室で画伯の資料整理スタート

    2023年09月26日

     滝川出身の日本画家岩橋英遠の記事は、道新朝刊文化面にも。NPO法人岩橋ふるさと北辰振興会(早弓弘行会長)が、閉校した江部乙中学校の元教員住宅を買い取り「岩橋英遠資料室」として、資料整理の活動をスタートさせた。昨年10月に、相模原市の岩橋アトリエから多数の資料を搬入。机、絵の具、描きかけの絵、戦前の美術雑誌など約5,000冊の書籍!、約1万点!と見られる写真・フィルム、その他。今後は資料の目録をデータベース化し、インターネットでの公開を目指す。北海道芸術文化アーカイヴセンターは、企画段階から岩橋英遠アーカイヴの活動と何らかの連携をしたいと申し出て、理解を得ていた。一歩先んじた着実な歩みに敬意と拍手を。
     道新夕刊カルチャー面は、道内の話題が豊富だ。映画監督の河瀬直美は「この夏、新十津川を訪ねて」の題で寄稿。大阪・関西万博(2025年開催)プロデューサーを務め、会場に建設するパビリオン「河瀬館」を、奈良県十津川村の旧折立中学校の資材を活用して建設するという。十津川と言えば、120年前の「山津波」で壊滅した村の人々が移住した先が新十津川町であることが知られている。河瀬監督が「ふたつの十津川」の関わりを取材するため新十津川を訪れたのは8月で、空知版にその記事を見つけたけれど、今回の寄稿だけでは趣旨がわかりにくい。ともあれ、この経験が「河瀬館」にどう反映されるか注目していきたい。
     陸別を舞台とするラジオドラマ『山神家の森』を、NHK札幌放送局が制作した。30日にFMシアターで全国放送する。北のシナリオ大賞の本年度受賞作。苫小牧出身の奥野瑛太が主役。脚本の宇部道路は千葉県出身。
     《音楽会》は札響第655回定期演奏会(9月9、10日)を中村隆夫が評した。首席指揮者バーメルトが取り上げたのはラヴェル、ファリャ、フランクとパリゆかりの作曲家たち。精緻な表現と趣味の良さを讃えつつ、フランクの交響曲では〈楽譜に込められた楽想を演奏者がどのようにくみ上げているかが見える演奏である。それが十分でなかったことを残念に思う〉と結んだ。
     北大出身の穂村弘によるエッセイ《やわらか眼鏡》は終了し、朝刊で《穂村弘の迷子手帳》として復活すると。長く続いた村田真の《ウエーブ美術》はこの日で終了。夕刊廃止に伴う朝刊シフト続々。

  • 名取弘文『わが名はシャクシャイン』

    2023年09月25日

     道新朝刊社会面には、藤沢市の元小学校教師ナトセンこと名取弘文が書いた演劇「わが名はシャクシャイン」が、東京・目黒の千本桜ホールで上演されたとの記事。30年ほどアイヌ民族と交流し、チカップ美恵子、山本栄子らを授業に招いてきた成果の集大成として舞台化を考えた。〈和人が書いていいのか〉と葛藤もしたが、劇団仲間の協力で書き上げた。11月には原作本が刊行される。
     朝刊道央ワイド面。苫小牧市美術博物館で23日から、出光美術館の所蔵品を紹介する特別展「出光美術館近代美術名品展―四季が彩る美の世界」が開幕。出光興産北海道製油所の創業50周年と美術館会館10周年の記念事業で、陶芸や日本画、油彩など季節感のある作品を中心に展示している。展示替えをはさんで11月19日まで。小樽発祥の民謡「北海浜節」の歌唱を競う「第19回北海浜節全国大会」が小樽市民センター・マリンホールで24日に開催された。4年ぶり。
     夕刊カルチャー面では、札幌生まれのヴァイオリニスト山根一仁の紹介。10月26日、Kitaraでバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ3曲を一夜で演奏する。1995年生まれ。6歳まで札幌在住。
     朝日新聞朝刊社会面には、漫画のコマ割りと縦スクロールをめぐる法廷闘争の話題。『小悪魔教師サイコ』は原作者と漫画家が別人。当初コマ割り漫画として発表されたが、のちに原作管理会社が縦スクロールによるウェブトゥーンでも作品を発表した(別の漫画家が手がけたようだが言及なし)。最初に描いた漫画家は制作中止を望んだが「原作者を止める権利はない」と言われ、訴えたという。「コンテンツ」の扱いをめぐっての新たな権利問題であり、今後ますます増えていくだろう。

  • 影山あさ子が「先住権」で北米取材

    2023年09月24日

     朝日新聞朝刊北海道版。札幌在住のドキュメンタリー映画監督影山あさ子が、アイヌ民族の「先住権」の取材の一環で、北米の先住民族のサケ漁を取材している。昨年10月から3回、米国やカナダを訪ねた。〈世界の先住権を見ることは、私たちの居場所を映す鏡になる。これから何をすべきか考える材料にしてほしい〉。全国で開く中間報告会の一環で、10月に音更、新ひだか、網走でも開催する。旭川でカムイコタンフェスティバル開催の記事も。
     同じ紙面で、北海道合唱コンクールでのエピソードが紹介されている。中学部門で審査結果を待つ間に、課題曲でもあるOfficial髭男dismの『Chessboard』を参加者一同で歌った。コロナ禍以前は自然発生的に歌われていたそうだが、今回は札幌市立あいの里東中の生徒が、そばにいた市立北陽中の生徒とともに声を上げた。合唱コンならではの風景。
     道新朝刊《記者の視点》で工藤雄高記者が、空き家状態で活用策が定まらない知事公邸の問題を論じている。知事公館と道立近代美術館の建物の扱いも課題だが、まずは公邸について知事自身の考えが整理されなければ論議が進まないとの論調。道議会内の温度差が背景にあるようだ。記事の最後は、秋田県と秋田市による複合文化施設「あきた芸術劇場ミルハス」を例に、近美と札幌市が検討する「マンガミュージアム」を併設するなど〈大胆な発想があってもいいのでは〉と提言している。その是非はともかく〈北海道の新たな顔と言われるような場所を目指して知恵を絞ってほしい〉との主張には同意したい。
    《読書ナビ》に、アリストテレス『政治学』の新訳(光文社古典新訳文庫)を刊行した三浦洋・北海道情報大教授のインタビュー。『政治学』について、近代哲学の二つのスタイルである経験論と合理論のどちらにも偏らず〈自分が気づいた事実と論理を照らし合わせ確証していく過程に魅了される〉。

  • 放射性廃棄物処分問題をテーマに演劇

    2023年09月23日

     原発由来の高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題をテーマにした演劇『同郷同年2023』が、10月4〜9日に東京・杉並のザムザ阿佐谷で上演される。2016年に「日本の劇」戯曲賞を受けた作品のリメーク。処分場誘致を画策していた同学年の男性3人のうち1人が疑問を持ったことで、対立していく姿を描いた。道内でも最終処分地選定に向けた文献調査が進められており、脚本の劇作家くるみざわしんは「北海道の人にも見てほしい」。道新社会面。

  • 『道産子追憶之巻』を高精細複製画に

    2023年09月22日

     道新夕刊カルチャー面では、滝川市江部乙出身で北海道を代表する日本画家・岩橋英遠の名作『道産子追憶之巻』(道立近代美術館所蔵、60.7×2908.8㎝)を大きく取り上げた(夏から冬にかけての部分)。長男岩橋敏文の「故郷でいつでも鑑賞」してほしいとの希望を受け、NPO法人岩橋ふるさと北辰振興会が大日本印刷に依頼し、高精細複製画として制作した。1億100万画素で「技法や色彩が忠実に再現されている」(河野敏昭学芸員)。滝川市美術自然史館で開催中の「生誕120年 岩橋英遠展」で観ることができる(10月15日まで)。夕刊の9月末休刊に向けたひと花。
     道内の貨物列車の歴史を紹介する『北海道の貨物列車』が北海道新聞者から刊行される。著者は道新のOB原田伸一、写真映像部の伊丹恒。朝刊社会面の記事。

  • 沖縄出身の木版版画家・眞栄田義次遺作展

    2023年09月20日

     沖縄出身で札幌で活躍した木版画家眞栄田義次(1952〜2017)の遺作展が、ギャラリーエッセ(札幌北区)で始まった。記事には抽象表現とあるが原発をテーマとした作品もあるそう。道新朝刊札幌版。
     道新夕刊カルチャー面には、この秋に離農して下川町から道外へ転出する俳人鈴木牛後が寄稿。俳句と出会った経緯などを綴っている。どこへ移り、何を始めようとしているのか興味が湧くが……。同じ紙面の《ステージ》は、東京芸術劇場プレイハウスでの「Dance for Life 2023」公演を取り上げた。札幌出身の振付家・ダンサーの篠原聖一によるリサイタル。〈ドラマチックだったり、緻密で抽象的だったり。篠原の引き出しの多さに感服する。こうした貴重な試みを彼の故郷で見る機会がないのは、正直残念ではあるのだが〉と結ぶ。

  • UHBが新根室プロレスのドキュメンタリー映画

    2023年09月19日

     UHBが初めて映画を制作する。「新根室プロレス」代表のサムソン宮本を主役とするドキュメンタリー番組を再構成・追加取材した『無理しない ケガしない 明日も仕事!新根室プロレス物語』。宮本を長く追いかけてきた地元のカメラマン芦崎秀樹が密着取材した。ナレーションは安田顕。UHBの吉岡史幸プロデューサー(取締役)は「地方局がドキュメンタリーを制作しても、全国放送される機会は少ない。映画化は一地方の問題を全国に知ってもらう機会になる」と話す。年明けから東京、札幌で公開予定。道新朝刊文化面の記事。

  • 新・しんとく空想の森映画祭開幕

    2023年09月18日

     道新朝刊社会面。昨年閉幕した映画祭を引き継いだ第1回「新・しんとく空想の森映画祭」が17日に新得町で始まった。『タネは誰のもの』『荒野に希望の灯をともす』などを上映。江差町では第59回江差追分全国大会が開かれた。礼文町では、アイヌ民族が江戸時代にアワビを神の国に送り返す「貝送り」の儀式を行っていたとみられる遺構が見つかった。北大を中心とする調査団が「浜中2遺跡」で発見した。貝送りの儀式が行われていた記録や証拠の発見は初めてとのこと(「初めて」がアイヌ民族の、ということか、貝送りの痕跡そのものが、なのかわかりにくいが、道新以外の記事は見つからないので不明)。調査は8月上旬だった。
     道央圏版には、昨年亡くなった書家小川東洲の回顧展が深川で開かれているとの話題。道内の小川作品所有者に声をかけて展覧会を実現に導いたアートホール東洲館の渡辺貞之館長は〈作品を決めるのは7割の技量と3割の偶然。一度限りでしか表現できない墨の飛沫具合などを、本人は納得するまで書き続けた〉。30日まで。
     朝日新聞朝刊文化面の《片山杜秀の蛙鳴梟聴》があまりに見事な文章なので引く。冒頭は〈さみしい。しおれる。西村朗が逝った。坂本龍一も春に亡くなった〉。同時期に東京藝大で音楽を学んだ同志への追悼である。西村と坂本の音楽に共通するアジアへの志向が、民族音楽学者小泉文夫の世界観に育てられたものと見抜く。その上で、オーケストラの壮大な音響を追求した西村の音楽を〈アジア的へテロフォニー〉とし、映画監督で言えば黒澤明だと。対する坂本はピアノ一台で〈底にアジアの風の吹く旋律を淡々と連ねる〉小津安二郎の世界である。9月2日のサイトウ・キネン・オーケストラをジョン・ウィリアムズが振った演奏会に触れて、その〈確たる西洋的秩序〉に対して、〈東洋的かつ一元的な法悦のカオスを剛力で求めるか〉〈「方丈記」というか竹林の七賢というか非力や無力に希望を見いだすか。どちらかに逃れていくしかない〉。日本の作曲家の選び取るべき道を、そう喝破する。

  • 札幌市英地下鉄のチュンチュン音

    2023年09月17日

     朝日新聞朝刊道内面で、札幌市営地下鉄の謎の「チュンチュン」音の理由を調べて紹介している。面白い。札幌の地下鉄が国内で唯一、ゴム製のタイヤを使っていることは知られている。ゴム製ゆえに、架線から車体へ電気を取り込んでモーターを回し、さらに車輪、レールへ電気を送る過程で、金属製の車輪がない代わりに「負集電器」なるものが車両に取り付けられている。レールを挟んでいるため、レールのつなぎ目を通過したり、カーブのところで音がするとのこと。
     南北線が、札幌冬季五輪に間に合わせるため突貫工事で建設されたことは、以前調べた。中でも建設の責任者だった交通局長の大刀豊という名物男のエピソードは、ことごとく面白い。この記事でも、地下鉄がゴムタイヤになった理由を、交通局職員の言葉として「かつての交通局長が視察先であるパリのゴムタイヤ式地下鉄を見学して感動したというのも、理由として挙げられます」と記した。謎の「チュンチュン」音を導入に、成長期の札幌の歴史に目を向けさせる記事でもあった。

  • 道庁赤れんが庁舎の改修工事

    2023年09月16日

     道新朝刊のサタデーどうしんで、道庁赤れんが庁舎の改修工事を取り上げている。1888(明治21)年に建てられた。屋根構造の不備や火災などで、1911(明治44)年に復旧、1968年に創建当時の姿に復元された。改修の眼目である耐震補強は、積まれたレンガの最上部から基礎まで直径5㎜の穴を開け、長さ約17mの鋼材を差し込む。これを引っ張った状態で固定すれば、レンガが動かなくなる。瓦は宮城県石巻市雄勝地区のスレート(石材)を創建以来、使ってきた。「見せる工事」の試みも。
     道新夕刊カルチャー面の《展覧会》。札幌の画家北山貫一が三笠・幌内炭鉱の往時の街並みを捉えた「ホロナイ鳥瞰」を大丸藤井セントラル・スカイホールで開いている(17日まで)。幌内地区の家々は消えてゆき「石炭が見つかる前の、森にかえりつつある」という作家の言葉は、春に札幌芸術の森美術館の「昨日の名残 明日の気配」展で中島洋が水道管や土とともに展示した、幌内地区の新旧の姿がオーバーラップする映像を想起した。これもまた森が帰ってくる姿だ。
     朝日新聞朝刊北海道面には、写真絵本『はるにれ』の作者で、自然写真家の柿崎一馬が豊頃町で講演する。1979年1月号の「こどものとも」で「はるにれ」のタイトルで出版した写真集が、累計21万部を超えるロングセラーになった。講演会は帯広の写真愛好家・浦島久が企画した。

  • 札幌市図書・情報館リニューアルへ

    2023年09月15日

     道新朝刊の札幌市内版に、札幌市図書・情報館のリニューアルの概要が載った。本の入れ替えは最小限だが、分類を手直しする。ミーティング席はオンライン会議にも対応できるようにする。
     社会面には、先住民族ツーリズムの国際シンポジウム「先住民観光の挑戦」が北大で開かれたとの記事。カナダの先住民族ハイダとアイヌ民族が交流した。ハイダは訪れる観光客に、事前に文化や歴史について講習し、敬意を払う誓約を求めている。
     道新夕刊カルチャー面では、俳人の堀本裕樹をクローズアップ。和歌山出身ながら、歌人の山田航、月岡道晴とともに普及イベントを続けてきた。滝川、札幌でイベントを計画中。

  • ススキノにTOHOシネマズすすきの

    2023年09月14日

     道新に、ススキノのラフィラ跡地の商業ビル内にTOHOシネマズのシネコン「TOHOシネマズすすきの」が11月30日開業の記事。ススキノの映画館はいつ以来だろう。
     道新札幌市内版に、札幌市の絵本基金「子ども未来文庫」が活動15周年を迎えた記事。市民からの絵本の寄付を、保育所の読み聞かせなどに使ってもらう取り組み。年間400〜1200冊が寄贈され、累計1万冊異常が集まっている。

  • 吉田裕史がウクライナ国立オデッサ歌劇場で『ラ・ボエーム』

    2023年09月13日

     テレビニュースにもなっていたが、イタリアを拠点に活動しているオペラ指揮者の吉田裕史(北見市常呂町出身)が、ウクライナ国立オデッサ歌劇場の首席客演指揮者として歌劇『ラ・ボエーム』を指揮した。現地時間の10日午後6時。ロシアの侵攻後に日本人が指揮するのは初めて。釧路出身・在住の写真家・長倉洋海の軌跡を振り返るドキュメンタリー映画『鉛筆と銃 長倉洋海の眸(め)』が、12日に東京都写真美術館で公開された。長倉自身が代表を務める「アフガニスタン山の学校支援の会」などが制作。監督は河邑厚徳。約200点の写真を自身が語る。11月にはシアターキノでも上映予定。いずれも道新朝刊社会面の記事から。
     同じく札幌版には、目新しい記事。タイの映画『ワンデイ』のインド版のロケが、来年1〜3月に道内で行われる。インド版の主演・プロデューサーのジュネイド・カーンが、秋元克弘市長を表敬訪問した。タイ版は2016年に公開。インド版は札幌、小樽、旭川などで撮影予定という。体験型観光の国際イベント「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)」の開会式が11日に白石区の札幌コンベンションセンターで行われ、札幌書道展会員で札幌南高書道部顧問の水間臥猪(がちょ)が、書道パフォーマンスを披露した。釧路出身の箏奏者・橋本みぎわが共演。橋本は漫画『この音とまれ!』の作者アミューの姉だそう。
     道新夕刊カルチャー面には、hitaruで10月7、8日に開かれる歌劇『ドン・カルロ』にエリザベッタ役で出演する木村美穂子のインタビュー。グランドオペラジャパン、東京二期会との共催、ドイツ・シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演で、札幌、よこすか芸術劇場、東京文化会館でも上演する。木村はhitaru柿落としの『アイーダ』にタイトルロール(ダブルキャスト)で出演している。
     朝日新聞文化面の文化財修復の記事が興味深い。文化庁が、文化財修理のための原材料のリスト化を進めているという話。2022年度から5年計画の「文化財の匠プロジェクト」の一環。国宝の掛け軸の修理に不可欠な「宇陀紙(うだがみ)」は、奈良県の宇陀紙選定技術保持者によると、戦後に先代が道北のノリウツギを使い始めたが、エゾシカの食害や作業者の高齢化で生産が危ぶまれていた。危機を聞いて道立林業試験場の職員の協力で、標津町に自生地が見つかった。文化庁の補助で、町が森林組合を巻き込んで生産を開始した。文化庁は、お墨付きを与える(リストから漏れた産地へのマイナス要員にも)ことを懸念しているというが。

  • 屈斜路地域のパリモモ祭り

    2023年09月12日

     地域固有のアイヌ文化を残すため、道内各地のアイヌ協会がさまざまな取り組みをしている。道新朝刊社会面の記事。弟子屈で開かれた「パリモモ(ウグイ)祭り」も屈斜路地域の固有の儀礼だという。道教大札幌校の百瀬響教授は、サハリン州に伝わる儀礼に使うイクニシ(捧酒箸)などを3Dプリンタで制作した。無形文化の将来を案じ、取り組みを進めているということ。
     漫画『コブラ』で知られる旭川出身の寺沢武一が死去。集英社の発表で年齢も不明。北海道とは縁がないが、作曲家の西村朗も死去。69歳。
     朝日新聞朝刊道内面。詩人三角みづ紀の《晴れても雨でもサニー》。夫と釧路を訪れて、湿原列車でつかの間の休息。特に事件があるわけでもなく、車内でのよしなしごとを語っているだけだが、そこはかとなく温かい。ゆったりと走る列車と、意外にせわしない「観光」の時間。
     道新夕刊のカルチャー面では、札幌在住の堀きよ美が主催する「五月の会」による演劇「江戸吉原遊廓 扇屋〜花魁 白扇」の告知記事。23、24日にコンカリーニョ。脚本家の渋谷健一が堀のために書き下ろした時代もの。

  • 知里幸恵の映画『カムイのうた』

    2023年09月11日

     道新夕刊社会面には、知里幸恵(1903〜22)の生涯を描いた映画『カムイのうた』完成記念試写会が、東川と旭川で10日に開かれたとの記事。11月23日から旭川などで上映される。

  • 広尾海洋博物館が登録抹消危機

    2023年09月10日

     道新朝刊3面の《アングル》。広尾町海洋博物館が、4月の改正博物館施行で登録抹消の危機との報。学芸員が配置されておらず、冬期閉館のため開館日数が100日強と規定の150日に足りないことが、博物館法の運用厳格化に伴い問題視されるという。登録が抹消される可能性も示唆しているものの、猶予期間は5年ある。全国に910館ある登録施設のうち、3割が学芸員不在という調査もあって、それらが一斉に登録抹消になることは考えにくい。ここは「危機」というより「困惑」の状況だろう。
     朝刊「読書ナビ」の「ほっかいどう」は、国立アイヌ民族博物館編『ウアイヌコロ コタン アカラ ウポポイのことばと歴史』。2020年に開館した博物館の展示コンセプトを概観しながら、開館前後に奮闘してきたスタッフが自らの考えをつづった記録集のようだ。この施設を評価すべき未来に必要な書。 

  • 「さっぽろ芸術文化の館」跡地問題

    2023年09月09日

     さっぽろ芸術文化の館(芸文館、旧北海道厚生年金会館、旧ニトリ文化ホール)の跡地について、札幌市が、再開発を担当する民間事業者をしているという記事が、道新朝刊札幌版に。敷地は11,600㎡。市が行った市場調査では、5つの団体から▷多目的ホール▷アリーナ▷商業施設▷医療施設▷シェアオフィス▷スタジオ▷広場の整備などのアイディアが寄せられた。市は条件をつけて事業者を募る(公募プロポーザル)という。建物は民間が整備し、土地は市が年間1億9,900万円で貸す。
     たくさんの疑問符が浮かぶ。札幌市のHPのから抜粋して紹介する。

    土地利用に係る基本的な考え方

    ・事業対象地周辺に立地する機能を活かした集客交流機能の向上
    ・都心西側の回遊拠点を形成し、美しいみどりや歴史・文化芸術を活かした多様な交流をはぐくむ
    ・地域特性を活かした新たな交流と活動の創出

    提案を求める事項

    1.様々な市民等の利用と交流に寄与する施設(集客交流機能)
    例:多目的ホール、劇場、イベントスペース、ギャラリーなど
    2.主に地域住民の利用を想定した施設(地域活動促進機能)
    例:地域住民や子育て世代等の集まり、会議、発表会等で活用できる施設など
    3.屋内外の公開空地
    4.質の高い都市景観の形成
    5.ゼロカーボンシティの実現に向けた取組
    例:CGS、下水熱利用、BEMS、オンサイトでの再エネ導入、ZEB化、EVの充電設備の設置など
    北1条西12丁目の土地利用について

     提案を求める事項のうち、1と2がポイントだろう。市は1の例に挙げた施設例について、市民のニーズを把握しているのだろうか。必要とされるものの優先順位は検討したのだろうか。1と2の両方を満たすとなれば、いわゆる複合的な施設にならざるを得ない。2は公民館の機能ということだろうか。あの一等地に? 記事では札幌市資料館についてしか触れていないが、近くには札幌市教育文化会館もあり、それらとの整合性をどう考えているのだろう。都心まちづくり推進室のコメントとして「多くの市民らを集客して多様な交流を促すとともに、都心西側の回遊性を高めたい」とあるのだが、要するに「民間事業者さん、よく考えて提案してね」ということ? そして、この話題、地域版でいいのかしら。
     同じ札幌版で、札幌国際芸術祭実行委が、私立藻岩南小学校でプログラミングの体験プログラムを行ったという話題。冬の芸術祭との関連で、雪の結晶について学習した上で結晶の形をパソコン上に作ってみたとのこと。芸術祭への関心を高めるひとつのアイディア。中谷宇吉郎については説明があったのだろうか。
     朝刊社会面には、アイヌ文化の認証制度と監修事業に取り組む「阿寒アイヌコンサルン」が、雑貨の国際見本市「第96回東京インターナショナルギフト・ショー」に初出展したという話題。
     夕刊1面の《土曜ズーム》は、ヤフーの支援を受けてドキュメンタリー映像を撮る恵庭の作家を紹介している。プロデューサーと意見交換しながら作品を作り、資金援助も受けられる。作品はYahoo!で公開される。ヤフー側は「その後の映画化やテレビ番組化など作家のステップアップにつながれば」。
     夕刊カルチャー面は話題豊富。旭川の村田和子が寄稿。網走生まれの児童文学者の作品集『岩田道夫の世界』(ぷねうま舎、未知谷発売)刊行に携わった。『雲の教室』シリーズ、消しゴムアート版『古事記』、銀河鉄道を彷彿させる絵画など。ウクライナの「キーウ・クラシック・バレエ」公演の予告が詳しい。出演するキーウ・バレエのプリンシパル長澤美絵とソリストの北口雅人によれば、首都キーウでは空襲におびえながらも限られた演目で公演が復活しているという。演目は『白鳥の湖』など。ロシア生まれながら、ウクライナにルーツを持つ作曲家の最も著名な作品を取り上げるのは意義深い。
     SCARTSで開かれているアニメーション作家横須賀令子の個展「波と風のもののけたち」も取り上げた。和紙を使い、墨で手描きした作品もあるそう。11日まで。《音楽会》は、札響の名曲プログラムを取り上げた。元首席指揮者のポンマーがブランデンブルグ協奏曲第3番、ベートーヴェンの交響曲第8番、ブラームスの交響曲第4番という「ドイツ三大B」のプログラム。ブラームスの冒頭の主題について〈このパッセージをポンマーは理性と感情の絶妙なバランスをもって描いてみせた。まるで秋の空にわたる清涼な風のようだ〉(評・中村隆夫)

  • 胆振東部地震の断水情報とラジオ

    2023年09月08日

     朝日新聞朝刊文化面の関東大震災100年の記事は、災害時のラジオの役割について。冒頭にHBCラジオのパーソナリティ山根あゆみの胆振東部地震のエピソードを伝えている。リスナーから大量の情報が届き、根拠の乏しい不確かな情報、具体的には「札幌が断水する」の扱いに困ったこと。即時に伝えられるのはネットやラジオの強みでもあり、リスクでもある。
     朝日新聞夕刊1面の「筑摩書房ほぼすべてある図書館」の話題が面白い。長野県の塩尻市立図書館。創業者の古田晁(あきら、1906〜73)が塩尻市の出身で、その旧名は「筑摩地村」であったのが社名の由来だったと。生前に、すべての刊行物を寄贈していただけでなく、親族にもすべて献本していたそう。1994年度以降は、筑摩書房が全刊行物を献本している。ヒトが結ぶ縁に心が温まる。

  • ジョン・ウィリアムズと小澤征爾

    2023年09月07日

     松本の「セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)」で指揮したジョン・ウィリアムズについて、朝日新聞夕刊で吉田純子編集委員が書いている。〈疑心暗鬼に覆われた時代において、生涯の友情を音楽によって確かめる、真に人間的な現場に立ち会えたことを忘れまい〉

  • 「㐂久一本店」創業100周年展

    2023年09月06日

     道新夕刊カルチャー面の《展覧会》は、SCARTSで開かれている「㐂久一本店」の創業100年展を取り上げた。〈一族に共通する芸術への活力〉のヒントが家族内同人誌『しんるい』の存在であるという指摘は然り。発表する作品をもってつながることの楽しさは、芸術へのモチベーションとなる。それを体現した展覧会であった。

  • 中谷宇吉郎資料が未来技術遺産に

    2023年09月05日

     道新夕刊1面に、中谷宇吉郎(1900〜1962)が北大で雪の結晶製作に成功した研究室の資料が、重要科学技術史資料(未来技術遺産)に選ばれたとの記事。雪氷工学の原点との位置づけ。国立科学博物館が選定した。遅すぎる顕彰とはいえ。
     道新夕刊カルチャー面の《ウエーブ音楽》(山田治生)は、ヴィオラ奏者の今井信子の傘寿記念演奏会を紹介している。「世界のイマイ」ではあるが、2004年から16年まで小樽を訪れて毎年開催したマスタークラスの修了生によるアンサンブル「小樽ヴィオラマスタークラスAlimni」が、演奏会の柱になっている。〈〝卒業生〟の中には日本のオーケストラで首席を務める者や海外の楽団で活躍する者も多数いる〉。ヴィオラマスタークラスを継続したことの意義が、しっかりとした成果として表れていることに、喜びを禁じ得ない。

  • 「白老文化芸術共創」始まる

    2023年09月04日

     道新朝刊の道央圏版に「ROOTS AND ARTS 白老文化芸術共創」始まるの記事。町内12ヶ所で、アーティスト5組と6つの企画展を開催中(10月6日まで)。梅田哲也などが参加。赤平市エルム高原リゾートでは23、24日に野外音楽ライブ「AKABIRA CAMP BREAK2020」を開催予定。真心ブラザーズ、フジファブリック、チャラン・ポ・ランタン、sumikaなど出演。
     道新朝刊社会面。北大COIネクストが、多様性などをテーマとする中高生・高専生向けの短編小説を募集している。100〜5,000字と幅広い。

  • 辻村直四郎日記に関東大震災の被災地記録

    2023年09月02日

     道新朝刊の社会面には、岩見沢の「開拓の祖」と言われる辻村直四郎(1869〜1941)の日記に、関東大震災の被災地見聞が見つかったとの記事。親戚が住む神奈川県を訪ねて記述したという。記述そのものは詳報されていないが、記憶にとどめておくべきだろう。

  • 北海道新聞が今月末で夕刊廃止

    2023年09月01日

     北海道新聞が9月末で夕刊の発行を終える。一部メディアで報じられていたが、この日の朝夕刊で読者に初めて伝えた。〈新聞用紙をはじめとする原材料費の高騰や輸送コストの上昇などから、これまで通り夕刊を発行し続けることが難しくなりました。読者の皆さまのライフスタイルの変化、デジタル社会の進展などを踏まえ、紙面のお届けは朝刊のみにさせていただきます〉。時が来た、ということ。
     道新朝刊の《各自各論》。北大公共政策大学院の山崎幹根教授が「北海道は『希望の国』か」の題でに寄稿し、村上龍の『希望の国のエクソダス』(2000)を引用している。『希望の国―』は、集団不登校を起こした数十万人の中学生が13市町村が合併してできた道央圏の野幌(ノホロ)市に脱出(エクソダス)するお話。〈北海道からのエクソダスではなく、北海道へのエクソダスを現実のものとするためには、北海道に「希望」があるかどうか、そして、その実現を誰が担うのかが問われている〉と結ぶ。考えてみれば、明治の開拓もまた、本州以南のそれぞれの「地元」からの脱出であったのかもしれない。現実を直視してなお「希望」であったのかどうかは、その人によるのかもしれないが。
     道新夕刊のカルチャー面では、北海道博物館で開催中の「北の縄文世界と国宝展」の関連で、任期ユーチューバー「週末縄文人」による展覧会取材の様子を紹介している。マニアックな縄文ファンとのコラボレーションで展覧会を盛り上げようという苦心賛嘆。
     同じ紙面の《まんが最前線》では、松本いっか『日本三國』を紹介した(雑賀喜由)。北日本は【聖夷】、東日本は【武凰】、西日本は【大和】と、三つにわかれて覇権を競っているとの設定。日本という国は、北と南で気候も住む人たちの気性も大きく異なる。『希望の国―』と同様に、いくつかの異なる勢力が割拠していてもおかしくない島であることを思い起こさせる。信長、秀吉以来の「天下統一」という常識を、疑ってみるのもいいかもしれない。
     朝日新聞朝刊の文化面《災後のことば 100年前の文学・言語から(上)》。菊池寛は関東大震災当時に〈「震災に依って文芸などは贅沢品だという事を痛切に感じました」〉と新聞に寄稿した。この「芸術無力論」に対し、芥川龍之介は〈芸術は生活の過剰だそうである。(略)しかし人間を人間たらしめるものは常に生活の過剰である。僕等は人間たる尊厳の為に生活の過剰を作らねばならぬ〉と批判する。かみ合わない議論ではあるが、阪神・神戸や東北の大震災にあっても、歌舞音曲を「不謹慎」とするか「生を潤すもの」とするかは論じられた。おそらくはこれから

  • 公共劇場の芸術監督

    2023年08月31日

     朝日新聞文化面。公共劇場の芸術監督のあり方を深く考えさせる良い記事。東京都杉並区立の「座・高円寺」芸術監督にシライケイタが就任した。公募・審査を経て74人の候補者から選ばれた。同館の初代監督で、世田谷パブリックシアターの初代劇場監督を務めた劇作家・演出家の佐藤信は、〈アーティストにとって芸術監督は、選ばれ方だけでなく仕事や評価方法もブラックボックスになっている〉と話す。90年代以降、世田谷やBunkamuraシアターコクーンなど「創造型劇場」が主流となった。しかし、芸術監督の権限や役割はあいまいなまま。〈税金で運営される効率劇場で、説得力のある制度作りに取り組んでこなかった〉と佐藤は演劇界の責任にも触れる。
     一方、串田和美が初代の芸術監督を20年間務めたまつもと市民芸術館。退任に当たって、実績を検証する専門家会議を開き、国内外への発信や地域コミュニティを巻き込んだ串田の活動を評価した。これを踏まえて、今後は「芸術監督団」として運営に関わる人材を選んだ。館を運営する財団理事長の〈芸術監督を『制度』化することで、より多様な人を受け入れられるはず〉と言う。うなずける。記事は学習院女子大教授が語る「公共劇場のビジョンの必要性」という言葉で結んでいる。 
     ひるがえって、芸術監督と呼ばれるポジションをあえて置かずに運営してきた札幌のKitaraとhitaru。札幌市は芸術監督という「制度」の功罪をどう検証し、結果として「置かない」判断を下したのか。聞いてみたい。
     芸術監督や劇場監督の問題と通底する話題。道立近代美術館の館長も務めた水上武夫が死去。民間から館長を迎えたのは、後にも先にも一人だけのはず。賛否両論があったかもしれないが、記憶に残る人物であった。民間館長がいた歴史は、館長選びの基準に官民の壁はないことを証明した。であれば今こそ、その功罪を含めて「館長」という制度の意味を考える意義はあるように思う。
     朝日新聞の北海道面では、留萌市が街ぐるみで誘致している吹奏楽部の「音楽合宿」の取り組みを紹介。合宿に使う場合は、練習場の会場費を無料にする代わり、楽器運搬などは市内の業者を使うと。生徒たちの面倒は「留萌吹奏楽部後援会」が担うため、教員の負担も軽減できる。地元の僧侶で、音楽指導経験もある谷龍嗣が発案者という。三方よしの取り組みではないか。

  • 泉谷しげるの南西沖地震募金活動

    2023年08月30日

     朝日新聞朝刊の北海道面は、シンガー・ソングライター泉谷しげるの北海道南西沖地震(1993)に際しての募金活動を紹介した。言葉が面白い。〈日本地図に「奥尻」という島があることを初めて知ったぐらいで、縁もゆかりもなかった。でもあの悲惨な映像を見たら、あの小さな島にも俺のファンが1人や2人はいて、ひどい目に遭っているかもしれないって。関係ないやって気にならないんだよ〉。フォークゲリラは1年間に100ヶ所以上にも及んだそう。被災地の女子中高生に「何が欲しい?」と聞いたらギターと答えたので、学校に楽器を贈ったものの〈彼女たちの何ともいえない反抗感、可哀想な被災者扱いされたくないという拒否感。それがよかったねー。あの様子を見て、こいつら大丈夫だなって思ったね〉〈俺としても、力になりたいっていう心からの願いだったけど、『欲しいものある?』なんていう聞き方自体が問題だったなあ。救ってあげようというおごりがあったのかもな。反省しなきゃいけないよね。彼女たちから教わった、一番大きなものだったよ〉

  • 関東大震災100年の日韓関係

    2023年08月29日

     道新朝刊文化面のシリーズ《歴史を問う 関東大震災100年》は4回目で、政治学者姜尚中にインタビュー。姜は、一環して「日韓の関係は友好的にあるべし」という視点で発言してきた。両国は〈残念ながら150年間、一緒に同じ課題を成し遂げることができなかった〉と位置付け、〈日本の歴史は、日本に住んでいる日本人だけの歴史ではなく、隣国から来た人たちと重なり合ってできてきた〉ことを強調する。最後に中途半端な一段落が。幕末の思想家・横井小楠(しょうなん)が説いた「天地公共」を紹介。普遍的な公共性は人種や民族を問わない、としたところまではいいけれど、〈親子の関係と、上司とそれに仕える関係は違うと。ところがそれを一緒にすることによって、日本ではある種の美学が成立した。中国では、愚かな上司の元を去り徳のある人に仕える。この方が極めて近代的な概念だと思います〉。この指摘が興味深いように見えて、ちょっと言葉足らずでわかりにくい。
     道新夕刊カルチャー面。《奏で人 札響》でホルン首席の山田圭祐を紹介している。

  • ローカルブックスの出版社

    2023年08月27日

     岩見沢市栗沢町美流渡で「森の出版社ミチクル」を運営する來嶋路子のインタビューが、道新朝刊読書ナビに。美術雑誌『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長という経歴。みると・とーぶプロジェクトの実行委員長も務める。自作の絵本を直販で出しているうち、「ローカルブックス」と銘打って自費出版にも対応している。〈野菜を売るのと同じような感覚で本を売る活動が成り立てば、私だけでなく本を出版したい人たちの可能性が大きく広がる〉
     道新朝刊社会面。「長沼ナイキ訴訟」の裁判記録の写しや録音テープが道立図書館に保管されているという話題。保管の事実は新しい発見ではないが、自衛隊を違憲と判断した一審判決から半世紀の節目で書かれたのだろう。知られざるアーカイヴを掘り起こす意義を伝えた記事だ。
     朝日新聞朝刊1面には、100年前の関東大震災直後に被災地を撮った35ミリフィルムが見つかったとの記事。静岡県の伊東町(現伊東市)を襲った津波の被害も記録されているそう。大阪朝日新聞社が撮影したもので、同社が保有する写真や取材記録とも一致している。すでに国立映画アーカイブが所有している16ミリフィルムと重複しない部分が6分間あった。板橋区立教育科学館の研究員が骨董品として入手したものらしい。津波被害を記録した国内で最も古い映像のひとつとされる。ひるがえって道内災害の映像記録はどこまで遡れるのだろう。

  • 北八劇場が中高生向けワークショップ

    2023年08月26日

     道新朝刊サタデーどうしん。東京の劇団「範宙遊泳」が話題作『バナナの花は食べられる』を、札幌のhitaruで9月に上演する(22、23日)。劇団代表・演出は山本卓卓(すぐる)。コロナ禍で上演自粛が続いたのを機に、連作短編の映像を配信して、これを劇場作品に翻案した。2021年に第66回岸田国士戯曲賞を受賞。関連記事で、2024年に札幌駅北口にオープンする「北八劇場」が中高生向けワークショップ開催を伝えている。劇場開設前の入念な準備は、札幌座での蓄積が生かされているとみた。
     道新夕刊カルチャー面は「演劇シーズン2023―夏」の総括。約5,400人という集客は、コロナで落ち込んだ数年間から回復に向かいつつあると受け止めてよいのだろう。

  • 合唱曲『芦別の雪の中を』

    2023年08月25日

     道新朝刊社会面。道内在住の映画監督、影山あさ子と藤本幸久が、海外の先住民族と先住権をテーマにしたドキュメンタリー映画を製作中。2025年ごろの完成を目指す。短編「気候変動とたたかう先住民」を道内4ヶ所で先行上映するそう。米国とカナダの先住民とサケ漁獲権の問題に迫る。
     道新夕刊1面には、十勝・芽室町の「巨大じゃがいもアート館」でウクライナの子どもたちの絵の貸し出し希望が相次いでいる、という記事。NPO十勝めむろ赤レンガ倉庫(浅野修代表)は、世界の子どもたちの絵を集めて展覧会を開いてきたそう。所蔵作品は150カ国、10万点!とのこと。驚異的だ。
     朝日新聞夕刊に指揮者・飯守泰次郎の追悼記事(吉田純子)。コロナ禍のさなかでの活動への言及。〈制約が逆に、よりよい文化芸術の礎となることがある。今、私たちは大きな時代の転換期を生きている。苦しい時期ではありますが、こういうときにこそ真に偉大な作品が生まれてくる。芸術がある限り、私たちから希望が奪われることは決してないのです。〉

  • 倉本聰『ニングル』オペラ化

    2023年08月23日

     道新朝刊社会面に、倉本聰の『ニングル』を日本オペラ協会がオペラ化するという記事。
     道新夕刊カルチャー面に、札幌の劇団OrgofA(オルオブエー)が英国シャーロット・ジョーンズの戯曲『エアスイミング』を、札幌のターミナルプラザことにパトス(西区)で上演するという。演出が大阪の劇団代表、役者は札幌と福岡からというハイブリッドなプロジェクトなのがいい。
    《ステージ》は英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルらがそろった「ロイヤル・スターズ・ガラ」を評した。こちらも芸術監督の友人でもある秋田在住のダンサー(韓国籍?)が率いるバレエプロダクションが主催して、札幌と秋田のみでの上演。東京抜きのプロジェクトの存在感がうれしい。
     朝日新聞夕刊1面の「TORA SAN」の記事が面白かった。フランスで「男はつらいよ」人気が高まっているとのこと。もともと日本映画はフランスでも人気。溝口健二、小津安二郎など作家性が強い監督の作品が好まれ、「寅さん」はそれほどでもなかったが、MANGAやハイテク文化だけでない「知られざる日本」への関心が高まっているそう(仏ジャーナリスト)。「家族」や「ユーモア」「ウィット」という寅さんのキーワードを挙げて説明した。現代ではベタと思われそうな表現も、何周か回って再発見されることはある、ということ。

  • 「京都ぎらい」の真意

    2023年08月22日

     朝日新聞朝刊の《オピニオン&フォーラム》は、国際日本文化研究センターの井上章一所長(風俗史・建築論)のインタビュー。文化庁移転を前にして『京都ぎらい』の真意を聞く。京都から性的な要素を排除し、JR東海の「そうだ京都、行こう」キャンペーンに代表される観光地イメージに仕立てたステレオタイプ化と、洛中の京都人たちの「地方」を見下す根強い意識と。内在する問題は、方向性は別としても北海道の地方論、地域論に移し替えることができる。
     道新夕刊カルチャー面では、今年のセイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)を紹介。小澤征爾とも親交があったジョン・ウィリアムズが指揮する由。記事は、2人とそれぞれ縁があったフランスの指揮者ステファン・ドゥネーブが、OMFでの再会をお膳立てしたとの内容だ。ドゥネーブは小澤のアシスタントだった。小澤がボストン響音楽監督時代にボストン・ポップスの指揮者としてウィリアムズを見出したという話は初耳学。
     藤田睦美の《居酒屋「小太郎」物語》は、コオロギの鳴き声の話。お客さんの虫取り名人と虫博士からのアドバイスで、艶っぽい声が聴けたという話はいいな。「男っていうのは…」はともかく。
     ジブリアニメの背景原画を担当した山本二三が死去。70歳は早い。

  • 〈現実とは違うまなざし、可能性が記述されている〉―大江健三郎追悼

    2023年08月21日

     道新朝刊の《哀惜》に、共同通信の記事で大江健三郎の追悼。批評家・尾崎真理子の言葉で〈難解と言われるが、行けるところまで奥に行き、その風景や人物を明確に書く作品は、むしろ分かりやすいと感じる。そこには今、私たちが置かれている現実とは違うまなざし、可能性が記述されている〉
     同じく朝刊の道央圏版では、明治の伊達開拓を主導した亘理伊達家の家老田村顕允(あきまさ)の展覧会を紹介。だて歴史文化ミュージアムで9月24日まで。
     道新夕刊カルチャー面は、この日も盛りだくさん。
     33回目となる札幌芸術の森バレエセミナーは、昨年パリ・オペラ座に入団した山本小春(富良野出身)も姿を見せた。
     旭川の詩人・柴田望らが編集した『NO JAIL CAN CONFINE YOUR POEM 詩の檻はない』日本語版が15日に刊行された。アフガニスタンのタリバン政権による詩作禁止への抗議を訴えた詩人のソマイア・ラミシュに共感した詩人たちの意義ある行動である。
     《音楽会》は、鈴木優人が指揮した札響hitaru定期(8月3日)。武満徹の『夢の時』について〈札響は明晰に演奏〉〈ただ、まどろみの時間を思わせるような「タケミツ・トーン」とは異質の楽想が描かれたという印象が残る〉と評した(三浦洋)。《音楽会》の隣に置かれた南聡の《魚眼図》では、「アンフォルメルと音楽」と題して、今年が生誕100年となるジョルジ・リゲティの言葉(メロディもハーモニーもリズムもない音楽」を紹介しており、その対比が面白い。

  • 佐々木譲『時を追う者』

    2023年08月20日

     道新朝刊・読書ナビの《ほっかいどう》は、佐々木譲の新刊『時を追う者』(光文社)。

  • 新道展のインスタレーション

    2023年08月19日

     道新社会面で第67回新道展の受賞者発表。札幌の永桶宏樹・麻理佳夫妻の美術ユニット「故郷2nd」によるインスタレーション作品『集合と解散 明日は別の電車に乗る』が協会賞を受賞した由。美術ユニットの受賞も、インスタレーションの最高賞も珍しいのではないか。既存の道展、全道展に負けない新機軸を、という創立当初の気概を思い出してみる。
     作家の桜木紫乃の道新朝刊連載エッセー《北海道発、女たちの覚悟》。飼い犬ナナの死を語っている。ペットへの愛情と追憶。〈時間は驚くほど早く過ぎてゆく。どんな悲しみも日常に紛れてゆく〉〈「お前は次、どんな姿でどこに生まれてくるんだ?」。また、我が家においでよ〉
     お待ちかね。「ライジングサン・ロックフェスティバル(RSR)」は、道新夕刊カルチャー面のリポートがさすがに詳しい。MISIA&矢野顕子の共演(写真や良し)や、電気グルーヴ、スクーヴィードゥー、くるり、サンボマスターらベテラン勢、そしてサンステージのトリに抜擢されたマカロニえんぴつと、今年のRSRの傾向と魅力を要領よくまとめている。熱中症対策への配慮も求めている。
     この紙面には、興味深い記事が多数。村田真の《ウエーブ美術》は、公立美術館の「後発県」であった青森が、県美に次いで十和田市現代美術館、弘前レンガ倉庫美術館、八戸市美術館、国際芸術センター青森と拠点施設をめぐるアートツーリズムの地として注目されていることを紹介している。
     7月に100歳を迎えた書家・中野北溟が最高顧問を務める創玄会の「創玄作家100名による小品展」が20日まで札幌市民ギャラリーで。中野は、多くの仲間や弟子たちの祝意に応えるかのように〈ありがたくって うれしくって 涙あふれる〉という心温まる書を出品した。
     さらにさらに。《展覧会》は、道立旭川美術館で開かれているグラフィックデザイナー遠藤享(すすむ)の個展を取り上げた。90歳となる作家の挑戦と変遷をうかがうことができる。天辰保文の《音楽アラカルト》は、ロビー・ロバートソンの追悼。こうしてみると、偶然にも80歳、90歳、100歳のアーティストたちの足跡をたどる紙面になっている。

  • 一石投じた国立科学博物館がクラファン

    2023年08月18日

     道新朝刊《読者の声》に、国立科学博物館がクラウドファンディングで運営資金を確保した一件に関する投稿。〈「国立」と名のつく施設が、人の善意に頼らなければならない現状はいかがなものか〉〈大阪・関西万博の整備費は、いつの間にか総額1250億円から1850億円に増額された。日本の知の宝を守る博物館の予算を1億円増やすこともできないのか〉。至極真っ当。
     道新朝刊十勝・帯広版。浦幌町十勝太の海沿いの土地に屋外イベントスペースが誕生した。オーナーは帯広でアイヌ料理店を経営する豊川純子。妹の豊川容子がボーカルを務めるバンド「nincup(ニンチュプ)」が出演するライブを26日に開催する。土地を「集楽」と呼び、イベントスペースを「十勝太187」、ライブを「月を海」とするネーミングセンスが気になる。
     同じくオホーツク版に、網走市立郷土博物館の特別展「夜のいきもの展」の記事。エゾシカやコウモリ、エゾセンニュウ、トラツグミなど動物たちの夜の生態を展示室に再現している。発想やよし。函館・道南版の《縄文遺産 道南から世界へ》では、函館市縄文文化交流センターでの「戸井貝塚展」(10月1日まで)を紹介。市指定文化財の「角偶」はシュールな外見。これは一度見てみたい。
     朝日新聞夕刊に演出家・鈴木忠志(84)が、若き日のプーチン・ロシア大統領と2度面会したときのことを語っている。鈴木が関わり演劇を通じて反戦や反差別を訴える「シアター・オリンピックス」のモスクワ開催(2001)や日ロ共催(2017)のとき。いまロシア芸術は世界で排除されたままになっている。〈「その原因を作り出したのはプーチン氏自身なのだ」〉
     イタリアの名ソプラノ歌手レナータ・スコット死去。89歳。

  • ツキガタアートヴィレッジ

    2023年08月17日

     道新朝刊の札幌圏版で「ライジングサン・ロックフェスティバル(RSR)」の写真特集。フェスを楽しんでいる来場者への取材のみで、アーティストの名前はひとりもなし。会場で取材しても、演奏中の写真は許可されていないので紹介しづらいとはいえ、文字では書ける。演奏の方はカルチャー面にお任せなのかしらん。
     道新朝刊のおそらく道央圏共通の連載《廃校転身》で、小樽・後志版は「ツキガタアートヴィレッジ」を紹介した。月形町の書家・久保奈月らが、2006年に閉校した知来乙小の建物を活用して昨年開設した。多目的ホールやギャラリー、貸しアトリエなどがある。
     東京はサントリーホールでの話題ではあるが、これ、道内でもやってくれないかなぁ、と感じた記事が朝日新聞夕刊に。作曲家の三輪眞弘がプロデュースする現代音楽祭「サマーフェスティバル」で、ガムランの演奏と屋台を組み合わせた空間を作る、という企画だ。イメージはこちらのサイトの紹介記事がわかりやすい。https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/34600
     これってKitaraでもできるじゃん、と妄想が膨らむ。ビアガーデンといえば大通公園だけれど、Kitaraの中庭やホワイエを解放して飲食ができるようにしつつ、大ホールと小ホールではしっかりと組み立てられたプログラムで、終日演奏会が開かれる。飲食・歓談を楽しみながら「あ、次の小ホール聴いてくるわ」と出かけていく。もちろん一日中、ホールにいてもかまわない。Kitaraの新しい名物になるような気がするんだけど。サントリーに負けず、こんな音楽祭を企画してほしいな、サッポロビールさん。
     指揮者の飯守泰次郎が死去(82歳)。国内では数少ない「ワーグナー指揮者」であった。○○指揮者と呼ぶことについてはさまざまな考え方があるだろうけれど、第一人者という尊称であることは間違いない。札響とも何度も共演しているが、なぜかいつも機会を逃してきた。しっかりと、聴いておきたかった。音源を探してみようか。

  • 知事公邸の活用策

    2023年08月16日

     道新朝刊の《読者の声》に、知事公邸の活用策について、道立図書館と道立文書館を再移転して、一帯を文化ゾーンにしてはどうかとの提案。道立近代美術館のリニューアル検討がごにょごにょしているのは、隣接している知事公邸と併せたエリアをどんなコンセプトで整備していくか、大方針が示されていないから。提案への賛否はともかく、視野を広げて考えていくことは大事。
     道新夕刊カルチャー面に、ドイツ在住のアーティスト菊池史子の寄稿。夕張にかつてあった28もの小学校の校歌と市民の記憶をモチーフに作品制作をしている。〈私の興味は小学校の歴史ではなく、あくまでも個人の記憶。それは個人の記憶が土地の記憶であり、次の世代に残すべき文化財産だと信じているからだ〉
     同じ紙面の《音楽会》で取り上げたのはPMF GALAコンサート(評・八木幸三)。公開リハーサルと比較して、指揮者ダウスゴーのバランス感覚と指導力に着目した。ブルックナー9番の補筆完全版80分を暗譜で振り切ったことにも触れている。

  • 加藤直樹『九月、東京の路上で』

    2023年08月15日

     道新朝刊は地元の芸術・文化記事なし。文化面は《歴史を問う 関東大震災100年》のシリーズ2回目で、ノンフィクション『九月、東京の路上で』(ころから)を書いた加藤直樹にあらためて話を聞いた。その隣の記事、安田菜津紀の〈社会時評〉はジャニーズ事務所の性被害問題がテーマ。前者は、震災後の不安を背景とする流言から起きた虐殺の歴史に、後者は当事者もメディアも長く口をつぐんできた不都合な事実にきちんと向き合うべきだ、という論調が共通している。
     道新夕刊カルチャー面では、シリーズ《シロカニペ 銀の滴 知里幸恵「アイヌ神謡集」刊行100年》に、アイヌ文化伝承者の原田公久枝が寄稿。登別で「銀のしずく記念館」を長く運営した横山夫妻の思い出に触れながら、知里幸恵の言葉〈私がもしかシサムであったら、もっと湿ひの無い人間であったかも知れない〉に共感する、と述べている。
     朝日新聞は甲子園の記事でいっぱいだ。ことに13、14日は道内勢の惜敗とサヨナラ勝ちが続いたので、北海道面も野球新聞みたい。

  • PMF2023 トーマス・ダウスゴーインタビュー

    2023年08月14日

     新聞は本日朝刊が休刊。道新夕刊のカルチャー面は、PMFに出演したデンマーク出身の指揮者トーマス・ダウスゴーのインタビュー。師匠バーンスタインについて〈とても深く考える人でした。物事を正面から見るだけでなく、ひっくり返してまた考える。とにかくよく考える人でした〉。PMFOと演奏したブルックナーの交響曲第9番の〝補筆完成版〟第4楽章については〈(未完だった)第4楽章まで演奏すると、ブルックナーも悩みがある人間であったことが分かります〉と語っているけれど、この作曲家は自作にとことん手を入れ、いくつもの改訂版を作った、そもそも「悩み多き人」なのだ。ベートーヴェンの第10、チャイコフスキーの第7、マーラーの第10、エルガーの第3など、未完成の交響曲を本人のスケッチなどから「こうだったのでは」と補完する例は少なくないが「これぞ!」と思った記憶はない。この日もブルックナーらしさと、その未来形を無理やり引っ張り出してきて混ぜご飯にした印象があった。ご本家をはるかに超える名曲に仕上げ、冥土の人を悔しがらせるぐらいの才のある人だけに許される仕事ではないのかな。

  • 岡田敦『エピタフ 幻の島、ユルリの光跡』

    2023年08月13日

     道新朝刊の読書ナビ。河﨑秋子の《羊飼いの書棚から》では、岡田敦著『エピタフ 幻の島、ユルリの光跡』(インプレス)を紹介している。ユルリ島は根室半島の沖合にある無人島で、明治期に人が渡り、大正期から馬の放牧が行われていたという。岡田は写真と文で島の歴史と「今」を捉えた。筆者の河﨑もまた小説『颶風の王』でこの島の歴史を題材にしている。ところでユルリ島自体が道の天然記念物になっていることを初めて知った。魅力的な島だ。

  • ライジングサン・ロック・フェスは声出し解禁

    2023年08月12日

    道新朝刊社会面。石狩湾新港で野外音楽イベント「ライジングサン・ロックフェスティバル2023イン・エゾ」が開かれた(11、12日)。コロナで2年続けて中止。昨年は歓声自粛・マスク着用励行だったので、出演者と観客の掛け合いは4年ぶりとなる。

    「サタデーどうしん」では今年のPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)を総括。ウルバンスキ、ダウスゴーの指導力、アカデミー生の質の高さもさることながら、 LGBTQについても考えた北大公開講座が大きな成果だったと振り返っている。吉原真里ハワイ大教授がPMFに対して提言した「教育機関や文化団体との連携」「先住民族について考える場に」は、古くから課題となってきたこと。「巨匠を呼んでいっちょ上がり」からの脱却のヒントは、すでにある。
     道新夕刊カルチャー面では、ACF札幌芸術・文化フォーラム主催の彫刻家・安田侃講演会(7月26日)を紹介。〈代表作となった「意心帰」などをいかに超えるか苦心している〉
     余談ながら、朝日新聞朝刊の読書面にドッキリ。美術家・横尾忠則による志村真幸著『未完の天才 南方熊楠』(講談社現代新書)の書評が天地逆さまに組まれており、評文の上に大きなゴシックで「未完」の文字が。横尾は以前から、この欄で鬼面人を驚かす的な試みを繰り返してきた。面白いと思う人と、ハッタリにすぎないと考える人がいるだろうけれど、紙面を作る側の立場では、筆者のアイディアをよく通したなあ、と驚く。〈未完こそ完成の進行形〉という言葉は、横尾が熊楠に重ねて自分自身にも言い聞かせているように読める。

  • 中原悌二郎賞に『デコボコの舟』

    2023年08月10日

     道新朝刊第4社会面に、旭川市・旭川市教委主催の彫刻賞「第43回中原悌二郎賞」の記事。今年は、多摩美大准教授の中谷ミチコさん(42)による石膏像『デコボコの舟』が選ばれた。彫刻界のベテランが受賞者に名を連ねてきた賞だから、42歳で受賞が最年少というのはうなずけるし歓迎したい。しかし「女性で2人目」には頭を抱えざるを得ない。彫刻界にもジェンダー問題が。
     いずれも道内の話題ではないが、道新も朝日も夕刊1面で戦争にまつわる話題をフューチャーした。
     道新は、漫画家・故水木しげるが『総員玉砕せよ!』をはじめとする戦記物を手がけた背景を、家族の言葉で紹介。過酷な出征体験、玉砕した戦友との別れなど惨禍の記憶を後世に伝える使命感からだったと。いまなお続く戦争に、水木なら「ばかだなっ」と吐き捨てるだろう、という妻の言葉が響く。
     朝日は、例のバーベンハイマー(BARBENHEIMER)問題を、デーブ・スペクターが実に軽いトーンで語っている。いわく、話題性のある映画『バービー』と『オッペンハイマー』の同時公開に盛り上がった映画ファンが「うれしくて盛り上がっちゃったんですね」。後者の公式アカウントが、原爆をジョークにした画像に好意的に返信した問題も「つい、乗っかっちゃったんでしょうね」。さすがに別記事では核兵器廃絶を訴える市民らのコメント、映画評論家の分析も紹介しているが……。うーむ。

  • 長崎原爆の日の笹本恒子写真展

    2023年08月09日

     長崎原爆の日の道新朝刊札幌市内版。富士フイルムフォトサロン札幌(大通西6)で開かれていた、写真家・故笹本恒子の写真展「報道写真家としてひとコマ求め続け108歳」を紹介。会場には広島の原爆ドームや福岡の三井三池争議など、時代を切り取った貴重な写真が並んだ。3年前にコロナ禍で断念した札幌展を、遺族や札幌の仲間が実現させたという。女性報道写真家の草分けと呼ばれた笹本は、108歳を目の前にした昨年8月15日に亡くなった。
     夕刊カルチャー面は、道内テレビ各局の「戦後78年」特番を特集。NHK札幌は11日の北海道スペシャル「北海道兵、10805人の死」で沖縄戦の戦死者や遺族を追う。HTB (14日)とHBC(15日)は、いずれも米兵が戦場から持ち帰った日章旗を持ち主の日本兵の遺族に戻す活動をしている米国のNPO法人の活動を紹介する。《音楽会》は7月23日のPMFホストシティ・オーケストラ演奏会(指揮:川瀬賢太郎)を取り上げた(評者:三浦洋)。筆者はバーンスタインの「スラヴァ!」、プッツのフルート協奏曲のようなユニークな曲をプログラムに入れたのがPMFらしい挑戦だと、筆者は思った。
     道新朝刊根室版では、4年ぶりに開催された現代アートプロジェクト「落石計画」の開幕を告げている。8日には池田良二・武蔵野美大名誉教授(根室出身)、井出創太郎、高浜利也という3人版画家と、地元の版画家・榎本裕一が「根室―私たちはなぜ、この場所に来てつくるのか」の題でギャラリートークも行った。「落石計画」のサイトでは、第1期(2008年)から8期(2015年)までの活動がアーカイヴされている。

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