- 芸術文化日録(AtoCジャーナル)
『銀河鉄道の夜』の舞台は苫小牧?
2025年05月30日

宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』の舞台は、賢治の故郷である岩手県花巻市がモデルというのが大方の見方だった。しかし、実は舞台は現在の苫小牧市の景観から着想を得ているという説を、むかわ町の郷土史家・土井重男が提唱している。土井は宮沢賢治学会イーハトーブセンター(岩手県花巻市)の会員でもある。『銀河鉄道』は賢治が苫小牧を含む北海道を訪問した1924(大正13)年ごろに初稿が書かれ、4度にわたって推敲・補作が行われた。1931(昭和6)年の第4稿には、活版所や時計店、パン屋などが登場してくるが、これが1934年の苫小牧市街地地図と一致するという。とても興味深い。だが、記事のここだけを読めば、苫小牧を賢治が自ら歩いた1924年も34年と同じ街並みだったかどうかはわからない。31年の改稿のとき、24年の苫小牧を思い出して書いたのであれば、「修学旅行復命書」や当時の覚書に何かしらの痕跡を残していることも考えられる。また、作中の軽便鉄道の切符が「はがきぐらいの大きさの緑いろの紙」であったという証拠も、王子製紙の軽便鉄道の切符が同じような意匠であったという言及がないため、判断しづらい。論考があるとしたら、読んでみたい。朝日新聞北海道面。
道新カルチャー面は、東京と札幌を拠点とする歌手・綾織綾音、登別出身の津軽三味線の吉田兄弟の話題。