• 芸術文化日録(AtoCジャーナル)

札響次期常任指揮者グランディ会見

2024年11月24日

 2025年4月に札幌交響楽団の次期常任指揮者に就任するエリアス・グランディの会見が、Kitaraで開かれた。専務理事、事務局長、2人のコンサートマスターが並び、放送メディアも複数参加して、期待度の高さがうかがえた。
 グランディのスピーチで印象的だったのは、音楽や演奏を人生の「旅」にたとえたくだり。「人生」や「旅」という言葉は先行するインタビューなどでも使われていて、象徴的である。演奏家と聴衆が「一緒に旅をする」「笑って楽しむ。泣くことも一緒に」という言葉から、オーケストラに君臨するのではなく、オーケストラとともに音楽を作り、育てていくという意思が伝わってきた。
 その意思に答えるかのようにコンサートマスターの田島高宏が、札響としてグランディとともに目指したい柱として「ワーグナーをやりたい」「海外ツアーに行きたい」のほか、北海道二期会との『こうもり』にフロッシュ役で出演した小橋亜樹や、クリエイティブオフィスキューとのタイアップを例に「みんなで札幌の文化を盛り上げたい」と宣言していたのが印象的だった。
 もうひとりのコンサートマスター会田莉凡の言葉「札響はリハ初日のクオリティが高いと言われるが、そこから一歩踏み出すことが足りない。それを(グランディは)引き出してくれる。そこまでやっていいんだ、と勝負をかけてくる」もまた、グランディとオーケストラの関係性を象徴していた。
 会見の翌日から始まったリハーサルを経て臨んだ第665回定期演奏会(11月30日、12月1日)のマーラー交響曲第1番は、会田の言葉を裏付けるように、ときに粗野だが圧倒的な熱量で「巨人」を体現した。まるでオーケストラ自体が若返ったような演奏だった。
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 朝日新聞文化面。詩人の吉増剛造が谷川俊太郎を語っている。〈「ひとりぼっち性」とも呼ぶべきものが谷川さんの詩には、いつもあった。それは「孤独」とも少し違う。原始的で、無邪気で、純粋な魂がそのまま表に出ているような。そんな幼心のようなものが、いつも詩の中心にあったと思います〉。吉増は谷川の「ひとりぼっち性」という点で影響を受けたとも言う。〈その詩からは、「骨の声」が聞こえます〉

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