- 芸術文化日録(AtoCジャーナル)
旭川ゆかりの安部公房生誕100年
2024年11月06日
旭川(東鷹栖町)をルーツのひとつとする生誕100年の安部公房の特別展「安部公房展―21世紀文学の基軸」が神奈川近代文学館で開かれている。展覧会の編集委員を務めた評論家の三浦雅士は「世の中が変わると、人間の意識の流れはどうなるかといったことに向き合い、常に時代を先取りするような、新しい発想と先見性を持っていた」と安部を評す。政治学者の苅部直は「彼が描く匿名性には、自由と危険性の両方が含まれていた。SNSの普及によって、私たちはそうした両面の可能性を、現実のものとして、いま目の当たりにしている」という。「日本の作家の多くは、故郷や原風景を持ちながら書く。すると、読者との共感が生まれやすい。だが、共感は時代の価値観とともに移ろいやすい。(満洲国での体験で故郷の)原風景を失った安部の作品は、同時代にのみ通用する共感には依存しないがゆえに、普遍性を持ち得たとも言える」とも述べている。朝日新聞文化面。