• 芸術文化日録(AtoCジャーナル)

近美の新築見送り?!

2024年10月03日

 道新1面トップに「近代美術館 新築見送り」というショッキングな記事。鈴木直道知事が、道議会予算特別委員会で表明した。改修を前提に整備方法を検討するという。現美術館の建物の歴史的価値を重視した、という説明だが複雑だ。確かに現在の近美は、日本建築学会の北海道建築賞を受賞している(太田実設計)。しかし、50年近く経って老朽化が目立つ建物を直し直し使う堅実さと、北海道にこれまでなかった斬新な美術館を待望する気持ちを天秤にかけると、個人的には首をかしげてしまう。近美のリニューアル話が出てからこのかた、議論が低調だったのは確かだ。後者のような期待を抱く層が「待ってました」とばかりに、新美術館への夢を語り合う――そんな場面は、ほぼなかったのではないか。とはいえ前者のような、歴史的建築物としての近美の価値を強く訴え「取り壊しに反対する」美術関係者にも出会ったことはない。議論が低調なのを見越して、道が一番安上がりな整備案を誘導したようにも見えてしまうのは、うがちすぎだろうか。何年後かに改修されて再オープンする近美に向き合って、果たしてどれだけの人がワクワクするのか。いち個人としては、残念でならない。道新札幌版に、札幌市図書・情報館で「建築のお仕事」を紹介する催しが開かれているのが、ちょっと皮肉にも見える。建築のお仕事って何?
 北大アイヌ・先住民研究センターの石原真衣准教授と大阪大大学院人間科学研究科の村上靖彦教授が『アイヌがまなざす 痛みの声を聴くとき』(岩波書店)を刊行した。アイヌ民族にルーツを持つ人へのインタビューで、日本社会を分析した。石原准教授は「研究者やマスコミは(自分の意図することを語ってくれる)お気に入りのアイヌを選び、多数派の(和人)に都合のいい形で消費しており、多数派はアイヌの困難に気づけないままになっている」。道新社会面。

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