- 芸術文化日録(AtoCジャーナル)
新・しんとく空想の森映画祭開幕
2023年09月18日
道新朝刊社会面。昨年閉幕した映画祭を引き継いだ第1回「新・しんとく空想の森映画祭」が17日に新得町で始まった。『タネは誰のもの』『荒野に希望の灯をともす』などを上映。江差町では第59回江差追分全国大会が開かれた。礼文町では、アイヌ民族が江戸時代にアワビを神の国に送り返す「貝送り」の儀式を行っていたとみられる遺構が見つかった。北大を中心とする調査団が「浜中2遺跡」で発見した。貝送りの儀式が行われていた記録や証拠の発見は初めてとのこと(「初めて」がアイヌ民族の、ということか、貝送りの痕跡そのものが、なのかわかりにくいが、道新以外の記事は見つからないので不明)。調査は8月上旬だった。
道央圏版には、昨年亡くなった書家小川東洲の回顧展が深川で開かれているとの話題。道内の小川作品所有者に声をかけて展覧会を実現に導いたアートホール東洲館の渡辺貞之館長は〈作品を決めるのは7割の技量と3割の偶然。一度限りでしか表現できない墨の飛沫具合などを、本人は納得するまで書き続けた〉。30日まで。
朝日新聞朝刊文化面の《片山杜秀の蛙鳴梟聴》があまりに見事な文章なので引く。冒頭は〈さみしい。しおれる。西村朗が逝った。坂本龍一も春に亡くなった〉。同時期に東京藝大で音楽を学んだ同志への追悼である。西村と坂本の音楽に共通するアジアへの志向が、民族音楽学者小泉文夫の世界観に育てられたものと見抜く。その上で、オーケストラの壮大な音響を追求した西村の音楽を〈アジア的へテロフォニー〉とし、映画監督で言えば黒澤明だと。対する坂本はピアノ一台で〈底にアジアの風の吹く旋律を淡々と連ねる〉小津安二郎の世界である。9月2日のサイトウ・キネン・オーケストラをジョン・ウィリアムズが振った演奏会に触れて、その〈確たる西洋的秩序〉に対して、〈東洋的かつ一元的な法悦のカオスを剛力で求めるか〉〈「方丈記」というか竹林の七賢というか非力や無力に希望を見いだすか。どちらかに逃れていくしかない〉。日本の作曲家の選び取るべき道を、そう喝破する。