• 芸術文化日録(AtoCジャーナル)

〈現実とは違うまなざし、可能性が記述されている〉―大江健三郎追悼

2023年08月21日

 道新朝刊の《哀惜》に、共同通信の記事で大江健三郎の追悼。批評家・尾崎真理子の言葉で〈難解と言われるが、行けるところまで奥に行き、その風景や人物を明確に書く作品は、むしろ分かりやすいと感じる。そこには今、私たちが置かれている現実とは違うまなざし、可能性が記述されている〉
 同じく朝刊の道央圏版では、明治の伊達開拓を主導した亘理伊達家の家老田村顕允(あきまさ)の展覧会を紹介。だて歴史文化ミュージアムで9月24日まで。
 道新夕刊カルチャー面は、この日も盛りだくさん。
 33回目となる札幌芸術の森バレエセミナーは、昨年パリ・オペラ座に入団した山本小春(富良野出身)も姿を見せた。
 旭川の詩人・柴田望らが編集した『NO JAIL CAN CONFINE YOUR POEM 詩の檻はない』日本語版が15日に刊行された。アフガニスタンのタリバン政権による詩作禁止への抗議を訴えた詩人のソマイア・ラミシュに共感した詩人たちの意義ある行動である。
 《音楽会》は、鈴木優人が指揮した札響hitaru定期(8月3日)。武満徹の『夢の時』について〈札響は明晰に演奏〉〈ただ、まどろみの時間を思わせるような「タケミツ・トーン」とは異質の楽想が描かれたという印象が残る〉と評した(三浦洋)。《音楽会》の隣に置かれた南聡の《魚眼図》では、「アンフォルメルと音楽」と題して、今年が生誕100年となるジョルジ・リゲティの言葉(メロディもハーモニーもリズムもない音楽」を紹介しており、その対比が面白い。

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